久遠の神話
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第六十一話 図書館でその十一
「もう何の問題もなくね」
「漫画もゲームも好きなだけ買えるわね」
「それ以前に戦ってまで欲しいかっていうと」
その漫画やゲームをだというのだ。
「そこまでいかないから」
「それでよね」
「うん、頭がよくなりたいとも思うけれど」
具体的には学校の成績がよくなりたいというのだ。
「今以上にね」
「上城君そんなに成績悪くないんじゃ?」
大体クラスで八番位だ、四十人のクラスで。
「八条大学行けるわよね」
「うん、文学部とかにね」
「じゃあそちらも」
「充分だしね」
それにだった。
「もっと成績をよくしないって思ったら勉強すればいいから」
「今以上にね」
「うん、だからね」
この願いもだった。
「特に強くは望まないから」
「戦ってまで欲しくないのね」
「剣道もね。こう言ったら格好つけてるみたいだけれど」
今度はこの前置きから言う。
「努力して手に入れないとね」
「やっぱり駄目よね」
「逆に言えば僕の欲しいものは全部努力すれば手に入るんだね」
自分で分析してこう語る。
「そういうものなんだね」
「だからなのね」
「うん、特にね」
これといってだというのだ。
「欲しいものはないっていうのは幸せなのかもね」
「そういえば中田さんも凄くこだわってるわね」
彼の欲しいもの、それにだというのだ。
「必死にね」
「うん、そうだね」
「どんなものかはわからないけれど」
「相当思い詰めているものよね」
「絶対にね」
それは間違いないというのだ。
「あの人にとって」
「中田さんもそういうものがあるのね」
「僕と違ってね」
上城は考える目で言った。
「そうなんだね」
「そうね、絶対にね」
「だから戦うんだね、その願いを適える為に」
「それだけの強い願いがあるから」
「僕にはそこまで思い詰める願いがないから戦いを止めるって言えるのかな」
今度は遠い目での言葉だった。
「そうなのかな」
「そうかも。けれどね」
「けれど?」
「本当にね、中田さんが戦う理由はわからないわ」
それはだとだ、樹里も考える顔で上城に話す。
「けれど戦うのなら凄い切羽詰った理由があるのよ」
「あの人本当は戦いたくないみたいだしね」
「いい人よね」
「うん、気さくで気配りがあってね」
しかも心は優しい、善人と言うべき者だ。その彼が他人を倒してまで戦い手に入れたいというからにはというのだ。
「あの人はね」
「そんな人が戦うからにはね」
「どうしてもって理由があって」
「けれどね」
それでもだというのだ。
ページ上へ戻る