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銀河転生伝説 ~新たなる星々~

作者:使徒
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第22話 会戦の足音


――宇宙暦812年/帝国暦503年 10月19日――

ティオジアへの侵攻が目前に迫ったこの時期、銀河帝国では新たな戦力が誕生していた。

「新型戦闘艇ヴァルキリーの性能は良好なようだな」

「はっ、なにぶんまだ模擬戦段階でしかありませんが、ワルキューレやスパルタニアンとのキルレシオは概ね3:1です」

「ほお、3:1とはまた高性能だな。必要十分な数を揃えれば空戦では圧倒的優位に立てるのだが………」

「ティオジアへの侵攻が数ヶ月後に控えている現状では、訓練の期間なども考慮すると配備可能なのは陛下の直属隊と親衛艦隊ぐらいが限界かと思われます」

「せめて近衛艦隊にも配備させたかったのだが……無理は禁物か」

「ええ、下手に一部に配備させても部隊間の足並みが乱れるだけで、むしろマイナスになる可能性が高いかと」

「…………」

確かに、ヴァルキリーの性能はワルキューレやスパルタニアンと比べて突出している。
上手く足並みを揃えることが出来れば良いが、そうでなければヴァルキリーの配備は逆効果にしかならない。
各機の連携が重要となる空戦での(性能差による)足並みの乱れは無視し得るものではないのだ。

それに、ヴァルキリーが完成して間もない新鋭機という問題もある。
何か重大な欠点があっても、それに気付いていない可能性は長年の運用実績を誇るワルキューレに比べて高い――つまり信頼性に乏しいのだ。

それが新鋭機の宿命とはいえ、不安の種は周囲の士気を低下させる。
下手をすればヴァルキリーのパイロットとワルキューレのパイロット間での諍いに発展する可能性さえもあった。

そういったリスクと引き換えにしてでもヴァルキリーを配備させるのか…と問われれば、答えは否である。

敵戦闘艇とワルキューレの性能にそれほど違いがない以上、高性能機を無理に投入しなければならない理由は無く、むしろ戦場に投入される戦力も艦艇・戦闘艇ともに銀河帝国に劣るだろうティオジア・ルフェール連合軍こそが高性能機を投入しなければならないのが現状であった。

「うむ、分かった。配備は直属隊と親衛艦隊に限るとしよう」


<アドルフ>

あ~マジかよ、大量のヴァルキリー投入で空戦無双とか考えてたのに。
せっかく俺が考えてたハルトマンorルーデル量産計画が……orz

あと1年…あと1年完成が早ければそれも可能だったものを………。

これも全部ルフェールやティオジアのせいだ。
あいつらの妨害工作で開発が遅れた…という風にしておこう。

くそ~、なんかそう考えてたらムカついてきたぞ!

よし、こうなったらアレだ。
迫り来る敵戦闘艇を『回想シーン強制流し装置』で無力化してやる!

何度か行われた検証で妨害電波が飛び交う戦場で敵艦隊に向け使用するのは難しいという結論になったからな……だが、接近してくる敵戦闘艇に対してならその問題もクリアされる。
しかも、『回想シーン強制流し装置』の優れたところは敵の機体性能が全く意味を成さないことだろう。
とどのつまり、新鋭機だろうと旧式機だろうと対策を施してない限りは性能差に関係なく無力化されるってことだ。

さすが俺、とんでもない物を創ってしまった。
自分の才能が恐ろしい……。
俺の進化はいつ止まるのだろうか?

…………

話は変わるが、領土が広がり過ぎてんだよなぁ~。
自由惑星同盟に加えてロアキアまで版図に加えるとか原作ブレイクにも程があんだろ。
ロアキアだのルフェールだのティオジアだの原作に出てきてすら無いじゃん!

この分だと、他にもまた新たな国家が存在しそうだな。
未だ俺達の知る範囲は天の川銀河内のオリオン腕9割とサジタリウス腕、南十字・盾腕の一部でしかない。
この宇宙全域だといったいどれだけになるのか…なんて想像もしたくない。

とにかく、これだけ領土が広大になると従来の方法だとどうしても非効率的なのは否めん。
となると……方面軍の編成が必要か。

なら、さしあたって旧ロアキア領を統括するロアキア方面軍の編成だな。
自由惑星同盟との戦争終結後に編成したオリオン方面軍、バーラト方面軍、ガンダルヴァ方面軍の3軍にロアキア方面軍を合わせた計4つの方面軍。
それを宇宙艦隊司令部が統括するといった形だ。

まあ、それについては今後の議題に上げるとして、ティオジア、ルフェールも征服後はそれぞれに方面軍を置く。
丁度ポストが不足気味だったのもあるし一石二鳥だ。


* * *


――宇宙暦813年/帝国暦504年 2月25日――

旧ロアキア領の完全制圧から4年。
銀河帝国は予定通り、宇宙艦隊の総数を58万7000隻にまで拡張することに成功していた。

「時は満ちた。今こそあの忌々しいティオジアを撃つ! 第二次アシカ(ゼーレーヴェ)作戦を発動せよ! メックリンガー、シュタインメッツ、出撃準備だ」

「お待ちください、態々陛下自身が前線に立たれる必要はありますまい」

今にも飛び出していきそうなアドルフを幕僚総監メックリンガー元帥が制止する。

「既に俺には後継ぎもいる。万一、俺が戦死しても問題は無いさ。もちろん、そうならないよう卿らには期待しているぞ」

そう言われては、メックリンガーとしてもこれ以上言うことは何も無い。
ただ主を全力で補佐するだけだ。

・・・・・

アドルフは直属隊5000隻(バルトハウザー上級大将指揮)にレンネンカンプの親衛艦隊15000隻、シュタインメッツの近衛艦隊15000隻を合わせた35000隻の艦艇を従え、新帝都フェザーンを出立した。

アドルフが乗艦するのはパーツィバル級2番艦フリードリヒ・デア・グロッセ。
その周囲には、バルトハウザーの旗艦バルバロッサにメックリンガーの専用艦クヴァシル。
ヴィルヘルミナ、ベルリン、オストマルク、フェルゼン、ラーテ、ウィルヘルム、ヴィクトリア、ピョートル、カルロス、クイーン・エリザベス、キング・ジョージ、マリア・テレジア、カイザー・カールのヴィルヘルミナ級戦艦13隻。
グラーフ・ツェッペリン、ペーター・シュトラッサー、ウェーゼル、ポメラニア、ケルンテン、スラボニア、シロンクスの7隻の宇宙母艦。
他にも、旧ナトルプ艦隊の旗艦レヴィアタンに、旧メルカッツ艦隊旗艦ヨルムンガンド、旧ゼークト艦隊旗艦スターリンの姿もある。

これに、ロイエンタール、ミッターマイヤー、ファーレンハイト、ルッツ、ワーレン、アイゼナッハ、シュムーデ、ミュラー、パエッタ、シューマッハ、ベルゲングリューン、ビューロー、クナップシュタイン、スプレイン、フィッシャー、アッテンボロー、マリナ、アルトリンゲン、ブラウンヒッチ、ハルバーシュタット、グエン・バン・ヒューの21個艦隊が随行する。

総戦力は実に30万隻以上。

しかも、オダワラ要塞やオオサカ要塞などの移動要塞まで加わるのである(駐留艦隊各8000隻)。
まさしく、『大親征』と呼ぶに相応しい陣容であった。
 
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