“死なない”では無く“死ねない”男
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話数その18 綺麗じゃない
偽・駒王学園のグラウンドの一角で、鮮やかな色の火球と鈍く光る奇妙な形の弾丸の押収が行われ、辺りには肉の焼ける臭いと火薬とは違う薬の臭いが立ち込めていた。
「このっこのぉ!!」
「ガボッ」
顔面の火球により吹き飛ばされながら、晋は上空に居るレイヴェルに向かって銃を撃つ。大抵は躱わされるが、それでも幾つかは時々当たっている。いくら不死鳥と言えども、悪魔にとっての猛毒である“光”を込めた、弾丸による攻撃の傷は流石に完治できず、着実にダメージが溜まっている。
「……ほっ……もっとよく狙いな、雑になって来てるからよ…」
何度焼こうと倒れず、おまけに焼かれながらこちらに標準を合わせ、自分を撃ってくる敵にレイヴェルは精神的にも追い詰められているのか、晋の言うとおり段々と火球の狙いが雑になって来ていた。
「うる―――さああぁぁい!!」
「……でかっ、やけくそかよ……」
叫びと共に巨大な火球を出現させたレイヴェルは、それをそのまま晋に叩きつけるように投げつける。
晋は自分が焼けるのを感じながら、さて如何したものかと考えていた。
(……別に無駄乳が勝とうが負けようが如何でもいいんだが……このエセお嬢様との決着は付けてぇよなぁ……となると、無駄乳がエセホストに負ける前に決着を付けねぇとな…)
晋は今までの銃とは別の、特殊な弾頭の大柄な銃に両手とも持ち返ると、レイヴェルの左右に向かってその弾を撃つ。―――余りの衝撃に腕を外しながら。
「!? ……ど、何処を狙って―――」
訝しむレイヴェルだが、晋の狙いはすぐに分かった。 その弾はレイヴェルの対角線上まで来たとたんに破裂し、中から大量の弾が飛び出して来たのだ。
「きゃああぁぁっ!!?」
左右、否四方八方から来る“光”の込められた弾丸の雨霰……レイヴェルは成す術もなく直撃を受ける。
しかし、地上に墜ちれば晋が待っている事を頭に止めていたのか、高度はずっと下がったが、それでも空中に飛んでいる状態を維持していた。
「このおぉぉっ……」
「……ん?」
「燃えてぇ!! 焼けてぇぇ!!」
「……下手な鉄砲数撃ちゃ当たるかよ……」
先程よりも晋との距離がずっと近くなった事に恐怖がピークに達したのか、レイヴェルは無茶苦茶に火球を投げつける。ため息を吐いた晋はピックとナイフを取り出した。高度が下がったから、次はそれで攻撃するのか……と思いきや、何と晋はいきなりピックで目を貫き、ナイフで耳とその中身を切り裂いた。
「ぃぃぃぃぃぃ!?」
意味不明な自称行為に、レイヴェルはもはや声になっていない声を上げる。 と、晋はいきなり何かを取り出しそこら中にばら撒いた。
「くっ……!?」
また爆弾か―――そう思い避けるレイヴェルだったが、その判断は大きな間違いだった……それは避けてやり過ごす代物ではなかったのだ。
爆弾を避けたと安心したレイヴェルに、目が焼けるほどの強烈な閃光と耳が爆発しそうなほどの轟音が襲いかかった。
晋が先ほど投げた代物、それは晋特性の強化型“閃光弾”と“音爆弾”だったのだ。勿論、人間がこんな物を喰らえばショックで心臓が停止する者や失明する者も居るかもしれないし、そうでなくとも長い足止めを喰らってしまう。
先程の晋の自傷行為は、これを完璧に無効化する為のものだったのだ。現に晋からは、目がくらんだ様子や耳を痛めた様子は微塵も感じない。
「あああぁぁぁっ!!?」
しかし、レイヴェルは耐え切れずにとうとう落ちてくる。いくら症状は軽いといっても、それは“人間より”は軽いだけであり、とても堪え切れる衝撃ではなかったようだ。
逃げようと這うレイヴェルの腕や足が突如撃ち抜かれて焔となり、動かなくなる。
フェニックスの焔による再生は、再生している間は無効化する代わりに自身も動けず、おまけに精神的に追い詰められたり強大な一撃をぶつけられれば再生できなくなると言った弱点があった。
「……さっき思いついた……もう逃がさねぇよ」
目は焼けるように痛く、耳が殆ど利かず、頭は割れるように痛い。
おまけに腕や足が動かず逃げられないときて、レイヴェルはもう子どもの様に泣き叫ぶ事しか出来なかった。
「……よし、そんじゃ――――」
すると、晋は発砲を止めてそこから遠ざかっていく。やっとおわった……そう思ったレイヴェルはやっと利く様になった目を開け……絶句した。
彼女が居た地点が、見た事の有る爆弾で埋め尽くされていたからだ。……そして―――
「……Killyou」
晋の合図と共に、レイヴェルは大爆発に呑み込まれた。
『ライザー様の“僧侶”1名、戦闘不能』
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