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ヘタリア大帝国

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TURN110 法治その十一

「我等もそれで」
「異論はありませぬ」
 自分達の意見を引っ込めた、そしてだった。
 カテーリンの戦後の処遇は決まった、それからだった。
 伊藤は難しい顔で五藤に言う、今二人は日本のとある料亭で話をしている。 
 豪勢な懐石料理を食べながらだ、彼は言うのだった。
「法律か」
「それですね」
「あの二人は法律を出した」
 言うのはこのことだった。
「軍人らしいな」
「軍人は法がなければ動かないからですね」
「そうだ、そしてだ」
「そしてとは」
「我々は政治を優先させたな」
「外相達は尊厳を」
「どれも国家にとって極めて重要なものだ」
 そのどれが欠けてもだというのだ。
「しかしだ」
「法はですね」
「それだ、我々は今回法を至上にしなかったな」
「それが問題ですか」
「内相は元々軍人だが」
 そこで辣腕を振るい才を認められて内相に抜擢されている。
「法だな」
「はい、とかく軍は法で動きます」
 まずそれがあり命令で動く、それが軍だ。
「それが第一です」
「そうだな、国家もな」
「法を忘れてはなりませんね」
「無法は最悪の事態だ」
 伊藤も首相だ、だからこそ痛感していることだ。
「だが私は今回それを優先させなかった」
「法律を」
「それが問題だな」
「私も、結論は長官達と同じでしたが」
 それでもだというのだ、政治的な主張は同じでも。
「法律に基いてではなりませんでした」
「慎まなければな」
「そうですね、大変な考えでした」
「このことは宮内相と外相にも話しておこう」
 ハルと宇垣にもだというのだ、処罰を主張した二人についても。
「法律は守らねばな」
「国家が成り立たないですから」
「そうだ、法があってこそだ」
 政治が成り立つというのだ、まずは法だというのだ。
「法治国家でなければな」
「恐ろしいことになりますから」
 こう話す二人だった、そして。
 伊藤は実際にハルと宇垣にも話した、そうしてだった。
 二人も反省する顔になった、そのうえで言うのだった。
「そうですね、法ですね」
「まずはそれがあってですな」
「国家が成り立つものですから」
「まして私は軍人であるというのに」
 特に宇垣だった、彼はとりわけ反省していた。
「いや、不明の極みでした」
「これからはそうした感情的な考えは慎みます」
「頼む、確かに国家の尊厳は忘れてはならないが」
 伊藤は二人に言う。
「法があってこそだからな」
「この場合は特にそうですね」
 ハルは普段の落ち着いた態度に戻って伊藤に応える。
「他国とのことにおいては」
「そうだ、そのことはよくわかっておいてくれ」
「ですな、私も今後気をつけます」
 宇垣も落ち着きを取り戻している、普段の的確な働きをする外相に戻っている。そのうえで話すのだった。
 こうして戦後のカテーリンへの対応も決まった、そしてジューコフにこのことを伝えることになった、これもまた戦争だった、政治の一手段としての。


TURN110   完


                    2013・5・14 
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