いつの間にかハイスクールD×Dの木場君?
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
教会直下のブラックスミス
第3話
旅を初めて1年経った現在、僕はボロボロだった。特に精神的に。油断していたのが原因だ。幼い頃に無いだろうと思っていた隠秘学に連なる物が存在していて、それに触れてしまったのだ。死霊秘法の写本であるギリシャ語版の断片に。アーチャーの記録が無ければ確実に発狂している所だった。SAN値が直葬される所だった。
偶々感じた気配を辿って突入した屋敷ではぐれ悪魔を討伐した後に家捜しをしていた所、地下研究室らしき所にそれは置かれていた。それに偶々触れてしまった僕は魂を汚染されてしまった。ただの紙切れ一枚にだ。
現在は収納の魔法陣に放り込んだためになんとか周囲への汚染は止まったけど、僕は当分動けそうに無い。にも拘らず、この場に何体かの悪魔と、それに追われている何かが近づいて来ている。勘弁して欲しいんだけどな。
適当な剣を杖代わりに階段を上っていく。玄関の方まで向かうと丁度追われている方が、屋敷に飛び込んで来た。追われていたのは猫耳と尻尾が生えている少女で、酷い怪我を負っている。既に体力が尽きたのか気を失っている。確か猫又とかいう妖怪であっていたかな?そんな彼女を追う様に三人の悪魔が屋敷に入ってくる。
「やれやれ、一体何事ですか?」
猫又の少女に治療系に剣を突き刺してから、悪魔に尋ねる。傷が癒え始めていることに悪魔達が驚いているが無視する。
「何故此所に教会の者が居る?」
「はぐれの気配を辿って来ましてね。襲われたので滅したのですよ。所でこの少女をどうするおつもりで?」
「貴様に答える必要は無い」
「いえいえ、そういう訳にもいかないのでね。聖書にはこう書かれています。汝、汝が隣人を愛せとね。ここでこの少女を見捨てるのは主の意向に背くことになるのですから」
「そいつは妖怪だぞ!!」
「それがどうかしましたか?聖書の解釈は人それぞれですからね。私にとっての隣人ではない者とは罪を償おうともしない犯罪者と私に襲いかかって来る者です」
「……たかがエクソシストごときが!!」
はぁ~、プライドが高い奴が多いから悪魔って嫌いなんだよね。三人の内二人は魔法使いタイプなのか、その場で魔力を高め始め、激昂しているのが戦士タイプなのか殴り掛かってくる。相手にするのは面倒なので収納の魔法陣から先程手に入れた死霊秘法の写本の断片を取り出して見せ付ける。それだけで戦闘自体は終了した。
三人ともSAN値を直葬されて絶叫を上げたり、無気力になって倒れ込んでしまった。それを見て、アーチャーの記録を持っていて本当によかったと心から思う。だが、おかげで僕も再び汚染させてしまった。これを機に精神汚染無効系の剣を作っても良いと思った。
とりあえず悪魔達は気絶させてから適当に縛り上げて転がしておく。猫又の少女は傷の方は治ったのだが、多少の衰弱が見られるので客間を見つけてベッドに寝かせておく。僕も疲れきっているのだけど、何か有った時にすぐに対応出来る様に少女と同じ部屋のイスに座って眠りに着く。一応隠蔽系の剣を大量に作って結界みたいな物を敷いておいたから大丈夫だとは思う。疲れた。
不意に強大な力を持った悪魔が二人、街に現れたことで目が覚める。その悪魔達は明確にこの屋敷に向かって来ている。出来れば気づかれたくはないのだが、転移系の剣で逃げようかと思ったが、今逃げればやましいことがあると自供する様な物だ。僕の作る隠蔽系の剣は天界の警備すらも抜くことの出来る物だ。それを大量に作って結界を敷いているのだ。気づかれるはずが無い。
そう思っていたのだがその悪魔達は迷うことなくこの部屋に向かってくる。何故気づかれたのかと思ったのだが、よく考えて見るとここははぐれ悪魔が住んでいてしかも死霊秘法の写本なんて物を取り扱っていたのだ。そんな屋敷にぽっかりと何も感じない部屋があれば怪しいの一言に尽きる。
自分のミスに頭を抱えながらとりあえず少女を守る様に新たに剣を創造して結界を敷く。防御に関してはガブリエル様のお墨付きだ。簡単に抜かれることはない。まあ問題があるとすれば相手がガブリエル様達並の強者だってことかな。
体調は相変わらず最悪だ。体力と魔力は有り余ってるから問題無いけど、まともに戦えるかどうか分からない。何とか交渉で立ち回れると良いんだけどな。
そして部屋に入って来た二人の悪魔を見て、頭を抱えたくなった。ガブリエル様達並の力を持っていて、燃える様な紅い髪の男と銀色の髪のメイドの組み合わせなど四大魔王の一人であるサーゼクス・ルシファーとその妻であり最強の女王であるグレイフィアしか思い当たらない。逃げ切るのは無理だな。せめて街に入って来たのを感じた時点で逃げに徹していれば何とかなったんだけど。
「これは、すごいね。目の前に居ると分かっているのに今にも存在を見失いそうになる」
「お下がりくださいサーゼクス様。いくら人間のエクソシストとは言え此所までの装備を持っている者は報告にございません」
「いや、大丈夫だよ。そもそも彼は消耗している。それに敵対する意志はないようだ」
良かった。どうにか交渉が出来る相手のようだ。
「座ったままで失礼。動ける力が殆ど残ってないので」
「構わないよ。それより君に聞きたいことがある。その少女とはどういう関係だい?」
「この街に偶々寄った所、はぐれの気配がしたのでそれを討伐し終えた所に彼女が逃げ込んで来たのですよ。それを追う様に玄関に転がしている悪魔達がやって来たので話を聞こうとした所、襲いかかって来たので気絶させたのですよ」
「その子は妖怪なのに助けたのかい?」
「追って来た悪魔達にも言いましたけど聖書にはこう書かれています。汝、汝が隣人を愛せとね。聖書の解釈は人それぞれですから、私にとっての隣人ではない者とは罪を償おうともしない犯罪者と私に襲いかかって来る者です。そう説明したのに襲いかかって来たので倒したまでです。殺せば面倒なことが起こりそうでしたので命までは奪っていませんが」
「そうみたいだね。最も精神面では無事とは言えないみたいだけど」
そう言って先程までと打って変わり、濃厚な殺気が部屋一杯に溢れる。
「原因は僕ではないのですがね。ここのはぐれ悪魔が研究していた物。それに魂を侵された結果ですよ。触れてみますか?この世の邪悪を一つにぶち込んで混ぜ合わせた様な狂気の一片に。僕自身も侵されてこの様ですよ。もう少しで僕もあの三人の様になっていた」
「少し興味があるね」
「サーゼクス様!!」
「分かっているよ。興味があるだけでそれに触れようとは思わないよ。少なくとも此所に住んでいたはぐれ悪魔の今までの素性とあの三人を見れば彼の言っていることは事実だと分かるからね。ちなみにそれの正体は何なのか聞いても良いかい?」
「死霊秘法の写本の中で最も古い物とされるギリシャ語版の1ページ」
「たかが紙切れ1枚にここまでされるなど信じられるか!!」
「なら、触れてみますか?生半可な覚悟では一瞬にして喰らいつくされるぞ」
脅しと共に少しだけ収納の魔法陣から断片を取り出す。すぐに顔色を変える二人を見てすぐに収納し直す。
「……見ての通り、今ので僕に抵抗する力は完全に無くなった」
僕の汚染も再び侵攻し、髪の毛が金から白になり、立ち上がる気力すらなくなった。少女は結界のおかげで無事なようだ。
「それで、ここへは何が目的で来られたのですか?この少女を始末するというのなら、命をかけて邪魔をさせて貰いますよ」
「いや、逆だ。私は彼女を保護しに来たのだよ」
「保護?すみませんが状況がまったく読めないのですが?」
「ふむ、話すと長くなるから簡単に説明するけど、彼女のお姉さんが主殺しの上に色々と犯罪を起こしてね。はぐれ認定されたのだよ」
「そこまでは理解出来ますけど、それで何故彼女が、ああ、そういうことか。そのお姉さんと仲が良かったから手引きしたとか、色々思われたんですね」
「その判断で間違いないよ。だが彼女は転生悪魔ではないし、罪を犯した訳でもない。ただ一緒に暮らしていただけだ。彼女自身に罪はない。でもそれで納得しない者も多い。あの三人もそう言った考えを持つ主の者でね」
「なるほど。それで保護と言いますが、どうするおつもりで?」
「私の妹の眷属になってもらおうと考えている。無論、本人が望めばだけどね。それを断られると、申し訳ないが軟禁という形になるだろう」
「軟禁ですか」
「彼女は猫又の中でも絶滅危惧種である猫魈の生き残りでね。出来るだけ死なせたくはないからね。君が渋るのも分かるが」
「いえ、僕も教会で軟禁されてましたから。まあ、そこそこ良い待遇でしたから不満は無かったんです。でも、それが原因の一部で今は教会から追われている身な者で」
「教会から?グレイフィア、彼の手配書はあったかい?」
「いえ、私が知る限りでは無かったはずです」
「教会にとって僕の存在を知らせることは不味いですからね」
そう言ってから殆ど力を込めていない聖剣と魔剣と名剣を作り出す。
「これは!?聖剣創造と魔剣創造?だが、それだと最後の一本の説明がつかない?禁手化しているような気配もない」
「『無限の剣製』魔剣創造の亜種に一応位置づけられています。この1年程度で7年前から強まっていた天界の勢力の力が弱まっているはずでしょう。僕の無限の剣製はあらゆる剣を作り出せる。その力は年々強くなり、とうとう対堕天使の概念を持った剣すらも作れる様になりました。それが原因で上の方の何人かにこう思われてしまった。いずれは対天使用の剣を産み出して謀反を起こすのではないのかとね。おかげで僕は教会から逃げ出すしか生きる道が無くなった。お世話になった人達に別れを告げてから今まで逃亡生活ですよ。教会は僕の痕跡を消すために僕の作った剣の大半を破棄し、昔の武器を使っているみたいですね」
「……何故そんなことを話すんだい?」
「打算的な話ですが、僕も保護してもらいたかったからですかね?死にたくなかったから教会から逃げ出した物の、たった1年で随分と疲れました。そして死霊秘法の写本に侵されてしまった以上、教会に戻ることも出来なくなった。疲れ果てていても、生きるためには逃げ続けるか、誰かに保護されるしかない。そんな時に貴方に出会い、少なくとも信用出来ると思った。こんな子供に、態々自分の印象が悪くなる様なことまで教えてくれたのだから」
「なるほどね。それで私にどんなメリットがあるんだい?」
「年間で2万本の魔剣と名剣を献上しましょう。天界勢が使っていた物と同レベルの物を。それとは別に報酬を貰えるならオーダーメイドで剣を作りましょう」
「そんなにかい!?」
「少なかったですか?教会にいた頃は年間で3万本は作っていましたし、エクソシストとしても活動していましたけど?」
「その2万本とはこの部屋にある剣と同等なのかい?」
「はい。それで、どうでしょうか?」
「私としては構わないのだが、本当に良いのかい?悪魔になれば神に祈りを捧げることも出来なくなるのだよ?」
「主への祈りや十字架で激痛が走るという奴でしょう。もちろん知っています。ですが、その程度で主への信仰をやめるとでも?その程度の試練、乗り越えてみせましょうとも」
教会に追われようとも習慣として付いてしまっている祈りなどを捨てるわけにはいかない。初志貫徹で一生信仰していくことを決めている。激痛位我慢してみせるし、そういう耐性を持った剣を作るのも有りだ。
「ふ、ふはははは、聞いたかいグレイフィア。ここまではっきりと言い切るのは初めて聞いたよ」
「サーゼクス様、まさか」
「うん、気に入った。その条件で君も保護しよう。納める魔剣については後日、要望を出しておこう。忘れていたが、私はサーゼクス・ルシファー。魔王をやっている」
「木場祐斗です。元ガブリエル様直属のエクソシスト兼鍛冶屋をやっていました」
「鍛冶屋か。言い得て妙だね」
「自分でもそう思いますけどね。7年間ずっと剣に触れている生活でしたから」
「これからは教会にいた頃よりも楽しい生活が送れるはずさ。悪魔にも法はあるが緩いし、欲望に忠実ならそれで良いと僕は思っているよ。君が先程言った悪魔になろうとも神への祈りを捨てないというのも立派な欲望だ」
「その考えで言えば、この世には悪魔しか居ないと言っている様な物ですね。まあ生きていくには食欲と睡眠欲は満たさないといけない以上、否定出来ないんですけどね」
「本当におもしろい考えをするね。君の将来が楽しみだよ」
僕としては普通だと思っているんだけどね。
「それでは行こうか。彼女を守っている結界を解いてもらえるかい?」
「こいつでベッドの四隅に刺してある剣を折って下さい」
グレイフィアさんに対結界の剣を渡して叩き折ってもらう。正直、剣を振るどころか杖無しで歩ける気がしない。グレイフィアさんが少女を抱えてサーゼクス様の傍に戻る。それと同時に床に魔法陣が現れる。感覚的に転移系の物だと分かる。紋章はルシファーの物だからサーゼクス様が発動させているのだろう。
「では、行こうか」
転移が発動する時に思い出した。冥界の空気って確か純粋な人間には毒だと聞いた覚えがある。魔力を身体に埋め込んでいる魔剣に流し込んでとりあえず宇宙でも生きていられる状態を保っておく。転移すると同時に魔剣の魔力が削られていくのが分かる。あの各地のおいしい物が大好きなエクソシストの先輩が言った通りだったな。と言うか、一言欲しかったですサーゼクス様。
後書き
何故かデモベが混ざってしまいましたorz
おかしい、何故こんなことに?
ページ上へ戻る