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ちょっと違うZEROの使い魔の世界で貴族?生活します

作者:うにうに
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本編
  第27話 タヌキとキツネを化かせ

 こんにちは。ギルバートです。ただ今王都の魅惑の妖精亭に居ます。今頃父上はバカ貴族や高等法院の連中相手に、舌戦を繰り広げているのでしょう。父上の活躍を目に出来ないのは、ちょっと惜しい気がします。……まあ、焼肉でも食べてゆっくり待っていましょう。

 実は私もサボっていた訳ではありません。昨日の明るい内にドリュアス領を出発して王都に入り、ヴァリエール公爵へ根回しをしました。夜目の効く騎獣で、夜通しの行軍は怖かったです。お陰さまで、起きてから2時間も経っていません。

 それよりも根回しの際に、公爵から無視出来ない話を聞きました。その時の事を思い出し、思わず大きなため息を吐いてしまいます。

「どーしたの? ため息なんかついて」

 話しかけて来たのは、追加の肉を持って来たジェシカでした。私は「ちょっとね……」と、曖昧な返事をしながらチップとしてドニエ銅貨を数枚渡します。私が口に出せない事を悟ったのか、ジェシカは礼を言うと店の奥に引っ込んでしまいました。

 現在魅惑の妖精亭は、改装中で店を開けていない状態です。と言っても、私が食事をしている事から分かると思いますが、内装工事は既に終了し残りは一部の外装工事のみです。スカロン店長はデミグラスソースの完成と、人がそろうまで店を開けない心算の様なので、開店はもう少し先になるそうです。店に出入りしているのは、私を含むマギ商会関係者と工事を請け負う大工達です。

 大工達はスカロン店長からの差し入れを渡されているので、魅惑の妖精亭の味を知り開店が楽しみだと話していました。この調子なら、開店してすぐに繁盛店に返り咲けるでしょう。

 私はそんな事を考えてから、追加で来た肉を焼き始めました。若い大工が羨ましそうな視線を向けて来ましたが、気にせず肉を焼き口に運びます。

(家に帰ったら、また家族会議ですね。……あっ、このたれ美味しい)



---- SIDE アズロック ----

 思えば良くこの様な所まで来たものだと思う。大貴族とは言え私生児の子供である私は、本来爵位など賜れる人間ではないのだ。謁見の間を目の前にして、柄にもなく緊張が走る。しかもこれから挑むのは、伸るか反るかの大勝負だ。気負って失敗しましたでは、洒落にならない。

 指示に従い謁見の間に入ると、正面に玉座に腰掛ける国王陛下、右側にヴァリエール公爵が立っていて、左側に怨敵リッシュモンが居る。他にも左右に分かれ二十人近い有力貴族と近衛兵が居た。

 私は陛下に臣下の礼をとると、一呼吸置いて報告を始める。

「この度、魔の森の調査が完了いたしました」

 私の一言に、謁見の間にざわめきが起こった。

「ドリュアス子爵よ!! それは誠か!?」

 国王陛下が思わず立ち上がり、私に聞いて来る。私は「はい」と、力強く頷いた。

「して、魔の森が広がる原因は何だったのだ?」

「陛下。先ずはこちらを……」

 私はドライアド家の人間が書いた手記を提出した。内政官を通し受け取った陛下が、手記に一通り目を通すと同じ内政官に読み上げるように指示した。



 内政官が手記を読み終わると、謁見の間は大きなざわめきに包まれた。敵意を多分に含んだ視線が、私に多く向けられる。手記の内容は、トリステインの上級貴族を批判する様な文脈も含まれていたので、これは仕方がないだろう。

「その手記を発見した時に、先ず偽物であると疑いました。しかし残念ながら、偽物である根拠も無いのです。むしろ状況は、本物である可能性が高いと判断せざるえませんでした。
 ドリアード家・ドライアド家・ドリュアス家は、1200前に実在した家の名前です。そして、王宮資料庫と王軍資料庫の魔の森に関する資料は、肝心な所が全て紛失もしくは破り捨ててありました。
 そこで私は、精霊の存在を確認する為に魔の森に入ったのです」

 そこでいったん言葉を切り、周りの上級貴族達を見回す。視線に含まれる敵意は、だいぶ薄くなっていた。

「そして私は、木の精霊との接触に成功したのです。誠に残念ながら、その手記に記されている事は全て事実でした」

 私は信じられないと言う視線を受け、遺憾の意を表す様に首を振った。

「当然ながら、木の精霊は我々人間に対して強い不信感を持っています。接触時に対話か死かの選択を迫られました」

 私の言葉に、再びざわめきが起こった。

「ドリュアス子爵なら、討伐する事が出来たのではないですかな?」

 来た!! リッシュモン本人ではなく、傘下の人間が口を開いた。その言葉には、臆病者と言う罵りが言外に含まれている。

「残念ながら、討伐どころかではありませんでした。木の精霊は正面から戦えば、スクウェアクラス50人そろえても討伐は不可能です。私程度では逃げる事もままなりません。あの場で、対話以外に生き残る道は……ありえませんでした。しかし、対話も正解とは言えなかった様です。木の精霊の怒りは凄まじく、木の精霊と人間との戦争になりかけました」

 大きなざわめきが起ったが、ヴァリエール公爵が一喝して黙らせた。

「私はそこで賭けに出ました。精霊に頭の中身を覗かせたのです」

 私の言葉に謁見の間は騒然となった。ヴァリエール公爵でさえ、驚きのあまり固まっている。私はこの場をどう収拾するか一瞬だけ悩んだが、国王が一度手を叩き「静まれ」の一言で黙らせた。流石国王である。

「無抵抗に命を預ける事で、こちらに害意が無い事を伝え、そして私の頭を覗いた事により、こちらに邪心が無い事も伝える事が出来ました。この行動をもって誠意を示し、木の精霊の怒りを鎮める事に成功しました」

 場が色めき立ったが、私は更に言葉を続けた。

「……しかし、残念ながら木の精霊の不信感を完全にぬぐう事は出来ませんでした」

 私の言葉に謁見の間が静かになる。

「木の精霊の信頼は、今のところ私個人の物です。当然だと言わんばかりに、交渉役として私を指名して来ました。また、交渉役以外の開拓を禁止すると言って来ました」

 謁見の間のざわめきに、罵る様な言葉が混ざり始めた。

「そして木の精霊は、森に住まう者達の解放を宣言しました」

 再び場が静まり返る。

「幻獣・魔獣は解放されて、自由に動き回る様になるでしょう。と言っても、その殆どが森にそのまま住みつくと思われます。亜人はただ森に住んでいただけですが、居なくなる訳ではありません。住む場所を守るために、全力で抵抗して来るでしょう」

 私は国王が頷くのを確認してから更に続けた。

「魔の森……いえ、精霊の森の開拓は時間をかけて、ゆっくり行うべきだと思います。また、私の言葉が真実である証明は、木の精霊に分霊をお願いして王宮までご案内しようと思います」

「何故今木の精霊を連れて来なかったのですかな?」

 先程のリッシュモン傘下の馬鹿が、余計ないちゃもんをつけて来た。私に対して、言外にその位の効率も考えられないのか? と言っている。……阿呆だ。

「木の精霊と会談するのに、人間(こちら)側の意思を統一する必要が無かった。と言いたいのですか? 如何考えても、木の精霊を怒らせるだけと思いますが」

 謁見の間に居る人間の視線が、蔑みの視線となって馬鹿に集中する。リッシュモンでさえ、怒りの表情を浮かべている。……あの馬鹿終わったな。そこでようやくリッシュモンが口を開いた。

「陛下。ドリュアス子爵はこう言っていますが、残念ながらトリステイン王国の財政では森の開拓は急務です」

 ……ここは反論すべきだな。そしてこの反論が、今後の成否を分ける。

「リッシュモン卿。ドリュアス家では、用意できる資金に限界があります。また、資金を借り受ける事が出来たとしても、現在のドリュアス家が森と面している範囲は狭いです。効率的に投入できる資金にも限界があります。またそうなれば、騎獣の数も足りなくなります。如何考えても、現実的でないと思いますが……」

 そこで一瞬だけリッシュモンの顔に、喜色の色が浮かんだ。

「何を仰るのかな? ドリュアス子爵よ。王国への忠誠を示すのに、頭を下げられないと仰るのかな? そして、森に面する土地が足りなければ私に提案があますぞ」

 リッシュモンはしたり顔で続ける。

「陛下。森に隣接する王領を、ドリュアス子爵に賜ってみてはどうですかな? 現在森に隣接する王領は、森の南西に在る森に王国から分断された土地。森の北西に在る海沿いの土地。そして、森の東に在るドリュアス領からガリア国境までの土地が在ります」

(森の北西に在る海沿いの土地? 聞いてないぞ。……いや、ギルバートの計画ではその土地を賜れれば有利だな)

 私の思案を他所に、謁見の間は騒然としていた。森に隣接する王領は、全て大きな赤字が出る領地なのだ。森の拡大が止まり、警備をある程度緩く出来ると言っても焼け石に水だ。以後も大きな赤字が出る事に違いはない。

 リッシュモンの発言は、財政的にドリュアス家に潰れろと言っている様なものだ。しかし、それを黙らせるべく声が上がった。

「ドリュアス家には、当家が全面的に支援しましょう」

 発言したのは、ヴァリエール公爵だ。しかし、リッシュモンは慌てなかった。

「公爵の支援があるのでしたら、先程出た土地を全て賜っても問題ないのではないですかな?」

 如何に公爵家が全面的に支援すると言っても、赤字の額が大きすぎる。リッシュモンの発言は、公爵の言葉を逆手に取った発言である。これに国王は暫く黙考し、結論が出せないと考えたようだ。

「今日の話は、ここまでとする。ドリュアス子爵の褒賞も含めて、これより精霊対策会議を始める。ドリュアス子爵。精霊は何時なら連れて来れる?」

「お命じいただければ、3日程でご案内いたします」

 国王は私の言葉に頷くと、私に退出を命じた。

(結果は上々か。……いや、まだ油断は出来ないな。とりあえずギルバートと合流して、公爵に挨拶して……ギルバートだけ先に領地に帰すか)

 そんな事を考えながら、魅惑の妖精亭に足を向けた。

---- SIDE アズロック END ----



 私が腹ごなしの訓練を終わらせ、魅惑の妖精亭に帰って来て部屋に入ると、既に父上が帰って来ていました。

「父上。ただ今戻りました」

「うむ。おかえり」

 私はサイレントをかけ、父上の向かいの席に着きます。

「父上。首尾の方はいかかでしたか?」

「怖いくらい想定通りだな。上手く行きすぎていて、どこか落とし穴が無いか不安になって来る」

 父上の感想に、私は苦笑いしか出ませんでした。最近の傾向から言って、上手く行きすぎて不安とは逆の問題が出るパターンが多かったからです。

「……否定出来ませんね」

「まあ、それよりも今後の事だが……。ギルバートは公爵に挨拶して、明日には領に戻ってくれ。精霊(分霊)を王都に迎える準備を進めてほしい」

 私は頷くと、公爵から聞いたあの話をする事にしました。

「父上。公爵から聞いた話ですが……」

「ギョームが死んだ件か? 謁見の待ち時間に私も聞いた」

 どうやら父上は知っていた様です。

「はい。この件は如何見ても……」

「ああ。リッシュモンの口封じだろう」

「いえ。それだけではないのです。公爵の話では、新しい暗殺用の秘薬を研究精製していた様なのです。ギョームが公爵にマークされた事により、リッシュモンはギョームを切り捨てたと見て良いでしょう」

 父上の目が細まり、顔つきが鋭くなりました。

「しかし、いくら公爵にマークされていたとは言え、反応が過敏すぎると思いませんか?」

 父上が僅かに頷きました。

「恐らくですが……。トリステイン王国内で相当身分の高い者を、暗殺しようとしていたのではないでしょうか?」

「しかし、リッシュモンが今更そんな手を使う必要がある者と言えば、クルデンホルフ大公かヴァリエール公爵あるいは国王陛下くらいか?」

 父上がお思いつく人物名を上げましたが、更にもう1人居ます。

「クルデンホルフはトリステインの属国です。危険を冒してまで、暗殺する理由は無いと思います。引退寸前のヴァリエール公爵も同様です。恐らくターゲットは……」

「国王陛下……か」

 父上は苦々しい表情で呟きました。王権強化を掲げる国王陛下は、貴族派であるリッシュモンにとって、目の上のたんこぶと言っても良いでしょう。

「はい。そしてこれからは、父上もターゲットになり得ます」

 父上は眉間に皺をよせ「そうだな」と、呟きました。



 夜になり、ヴァリエール公爵の別邸に来ました。

「良く来たなアズロック。それと……」

 公爵に思い切り睨まれました。思わず苦笑いが漏れてしまいます。

(歓迎されていないな。カトレアの事に加え、今朝の不法侵入だからな……。仕方無いと言えば、仕方が無いのか?)

「……まあ、ギルバートも良く来たな」

(うっ、目が全く歓迎してないです)

 私と父上は、公爵に聞き耳の心配が無い部屋に連れて行かれて、今日行われた精霊対策会議の内容を教えてもらいました。会議の内容は精霊の存在の真偽ばかりで、全く実りの無い不毛な物だったそうです。そして正式な決定ではありませんが、ドリュアス家に与えられる褒賞も決まりました。謁見の間で話があった通り、森と森に隣接する王領を全て賜れるそうです。昇爵も検討され、伯爵位を飛び越え侯爵位をいただける事になったようです。更に極め付けが、向こう5年間の免税です。

 私と父上は固まってしまいました。正直な話、森と森に隣接する王領と伯爵位を賜れれば良しと思っていたからです。

「も 貰いすぎではありませんか?」

 父上の口からそんな声が漏れました。

「逆だ。魔の森解決だけで、爵位の一つや二つ上がって当たり前だ。それに加え、困難な森の開拓も請け負ったのだ。更に森に隣接する王領は、赤字が酷過ぎるので褒賞にならん。リッシュモンの傘下で無い者からは、これでは罰だと言う意見も出ていたのだ。その流れで免税・減税という意見が出た。ドリュアス領からの税収と王領の合計赤字額を比べると、赤字額の方が大きいから簡単に免税で通った。10年の免税と言う意見も出たのだが、流石に長すぎると言ってリッシュモンが猛反対している」

 私と父上からは、乾いた笑いしか出てきませんでした。


 公爵と父上が雑談を楽しみ、時々公爵から嫌味を言われると言う時間を過ごしました。

「所でギルバート。お前はどうやって、この別邸に忍び込んだのだ?」

 突然公爵から、私に話を振られました。公爵相手なら、隠す必要も無いでしょう。と言っても、口止めはしておかないといけませんね。

「秘密にしていただけるなら、お話しますが……」 

「よかろう。秘密にすると誓おう」

 公爵は、即答で秘密にすると誓いました。ちょっと不安を感じましたが、公爵は信頼出来る人なので問題ありません。私は腰に付けた道具袋から、一枚のマントを取り出しました。

「秘密はこのマントです」

 私はそう言って、マントを被ると公爵が驚きの声を上げました。

「そのマントはまさか……」

「はい。不可視のマントです。確かガリアのド・ロナル家に同じ物が伝わっていたはずです。ちなみに、私は『インビジブルマント』と呼んでいます。精霊から預かった、貴重なマジックアイテムの一つです」

 私はそう言ってマントを外すと、道具袋にしまいました。しかしそれを見た公爵は、道具袋を凝視します。……まあ、当然と言えば当然でしょう。しまったマントに対して、道具袋は小さすぎるのですから。

「そして精霊から預かった、もう一つのマジックアイテムがこの道具袋です。下手な倉庫より収納量は多い上に、中身の重さを一切感じません。この二つが、精霊より預かったマジックアイテムです」

 私がそう言うと、公爵から感嘆の声が漏れました。なんか、羨ましそうな目で見られました。ちなみに絶対貸しません。私にはカトレアと言う、絶対監視者が居るから持っている事が許されるのです。と言うか、覗きに使ったら本気で死ねそうです。(カトレア、カリーヌ様、母上、ディーネ、アナスタシア、ルイズ、エレオノール。この7人が一度に敵になると思うと、背筋が寒くまります。特に最初の3人が恐ろしい)

 私の顔が青くなったのを見て、公爵もこれ以上話す事は止めてくれました。視線に同情的な物が混じった様な気がするのは気のせいだと思いたいです。カトレアが原因で、将来の同族と思われたのでしょうか?

 それから暫くして、公爵と父上の話はお互いの妻の愚痴話に発展していました。本人が聞いたら、大変な事になりそうな内容ばかりです。(2人とも相当我慢しているんだな)そして最後には、何故かお互いの妻の自慢話になっていました。(……砂糖吐きそうです。そしてこの2人の気が会う理由が、分かった様な気がします)



 次の日、朝一でドリュアス領に帰りました。帰ってからギョームの死を報告すると、案の定母上の機嫌が荒れに荒れます。そしてディーネとアナスタシアに、私が怒られました。(私だってとばっちりなのに)

 父上は私から遅れる事2日で、領に帰って来ました。早速家族会議を開き、現状のレベル合わせをします。

 ドリュアス家に与えられる褒賞は、結局公爵が言っていた物になったそうです。母上、ディーネ、アナスタシアは、褒賞の内容に目を白黒させていました。(気持ちは良く分かる)それ以外はこれと言った認識のズレも無く、不安点や問題点の検討に入りました。

 新たに気付いた不安点や問題点も無く、やはり今後の妨害工作をどうやって切り抜けるかが最大の問題であると結論しました。特に精霊の森への攻撃を、どう切り抜けるかです。

「防衛範囲が広くなりすぎるのが、問題なのよね」

 母上が思わずぼやきました。

「何か……攻撃を躊躇(ちゅうちょ)させる様な要素があれば良いのですが」

「精霊の力を借りられないかな?」

 ディーネが続き、アナスタシアが私に振って来ました。

「流石に無理でしょう。それに精霊には、人の瑣末事や血生臭い事には関わってほしくありません。それに下手をしたら、折角得た信頼を失いかねません」

 私の拒否の意に、母上が溜息を吐きながらも頷いてくれました。

「ギルバート。せめて精霊には、ハッタリくらいには協力してもらえないか?」

 父上の言葉に、私は「どうにかして説得してみましょう」としか言えませんでした。

 結局この日の家族会議は、他の問題も無く終了しました。



 次の日、父上と共に木の精霊の所に来ました。大樹に呼び掛けると、木の精霊はすぐに顕現してくれました。

 木の精霊に事情を話し、分霊を出してもらう様お願いすると、返事はすぐに帰ってきました。

「単なる者の町見て見るのも良いか」

 木の精霊は意外にも、町と言うか王都に行く事自体乗り気でした。後は、高等法院や馬鹿貴族に対するハッタリを如何するかです。

 私がどうやって切り出すか迷っていると、木の精霊はまた棘の蔓を巻きつけて来ました。(痛いです)木の精霊は私の頭の中を覗き、私が頼みたい事を読み取ったようです。

「精霊が我だけではない事を示せばよかろう。単なる者にとって、特に水の精霊は怒らせたくないのだろう? 5柱もの精霊が、敵になると脅せばよかろう」

 正直に言って驚きました。如何にもならないと思っていましたが、意外な事に木の精霊から案が出て来たのです。

 木の精霊は、もう一度他の精霊に招集をかけてくれました。精霊同士の話は早く、あっという間に了承し分霊の入れ物を要求して来ました。

 水の精霊は、以前と同じくらいの瓶。
 火の精霊は、大きなランプ。
 木の精霊は、大きな植木鉢。
 土の精霊は、水の精霊と同じ大きな瓶。
 風の精霊だけは、このまま本体を飛ばすと言っていました。

 父上と一緒に《錬金》で分霊の入れ物を作成し、それぞれの入れ物に分霊を入れてもらいました。精霊達の態度が、ピクニック行く様な気やすさなのが気になります。……特に水の精霊。

(果てしなく不安だ)






 ……王都大丈夫かな。 
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