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ちょっと違うZEROの使い魔の世界で貴族?生活します

作者:うにうに
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本編
  第26話 問題ばっかり!!ホントどうしよう?

 こんにちは。ギルバートです。精霊との交渉を終え、領地に帰って来ました。帰って来て早々に母上に殺されかけましたが、父上と2人がかりでなんとか抑えます。そして父上が、ドリュアス家緊急家族会議の開催を宣言しました。

 精霊との交渉は上手く行きました。……いえ、上手く行きすぎたと言って良いでしょう。その所為で別の問題、……それも致命的な問題が出て来ました。

 ……ドリュアス家以外の開拓を拒否する。

 これはドリュアス家が、森全てを領地とする事を意味します。これを国王に報告すれば、間違いなく開拓を命令されるでしょう。しかし問題は、幻獣・魔獣・亜人達です。自分達の住処が奪われる事になるので、全力で抵抗して来るでしょう。そんな状況で、のんびり開拓など出来ません。それでも無理に開拓を推し進めれば、住処を追われた者達は、周辺の領地を荒らし始めるでしょう。そうなると、ドリュアス家の責任問題になります。

 ハッキリ言って、誰もこんな森を開拓したいとは思いません。現状で唯一の救いと言えば、バカ貴族や高等法院の奴らに嫉妬や妬みを軽減出来る事くらいです。

 ドリュアス家緊急家族会議の会場に向かう足で、足りない物を頭の中で思い付く限りあげて見ました。

・資金
 圧倒的に足りない。兎に角足りない。対策として十分な切り札がありますが、目立つ事は出来るだけ避けたい。

・人材
 先ず開拓する為に木を伐採する人材。幻獣・魔獣・亜人に対する警戒や撃退に必要な人材。開拓した土地を有効利用してもらう人材。……外部から人間を招き入れるとなると、それらを教育する人材。それに治安の問題も出るので、警備の為の人材。マギ商会の手も足りなくなる。

・騎獣
 初めの内は問題ないが、開拓が進むと警備する面積が増えるので、必然的に足りなくなる。バカ貴族が起こしたバンザイアタック(以前魔の森に仕掛けた自棄攻撃)の所為で、国内の騎獣が不足し補充もままならない。下手をすれば、国に騎獣を取り上げられかねない。

・物資
 確保した人材が、安心して生活する為の家用建材と食糧や衣類等の生活物資。

 パッと思いついただけでも、これだけの物が足りません。焼き畑が可能なら一気に楽になるのですが、確実に木の精霊から顰蹙(ひんしゅく)を買います。それはドリュアス家にとって、絶対に避けねばなりません。私は思わず立ち止り、額に手を当ててしまいました。

「ギル。如何したのですか?」

 私に話しかけて来たのはディーネでした。私の様子に本気で心配になったのか、振り向いた私の額に手を当てて来ました。

「熱は無い様ですね」

「家の事で困った事になっているからで、体調が悪い訳ではありませんよ」

 心配してくれるのは嬉しいですが、今心配しなければならないのはドリュアス家の今後です。この話を聞いたら、ディーネも似たような状態になるのでしょうか?

「取りあえず部屋に入りましょう。詳しい話は中でしますので」

 ディーネに入室を促し応じてもらうと、私も後に続きます。部屋の中には、既に全員そろっていました。……母上の機嫌がレッドゾーンに突入しているので、今すぐ逃げ出したい気分ですが。

 私とディーネが席に着くと、父上がドリュアス家緊急家族会議の開催を宣言します。そして新ためて今回の事の顛末を、父上が全員に説明し始めました。私はその時間を使い、以前寺子屋用に作った黒板に、ドリュアス家が単独で開拓を行う場合の問題点を記入して行きます。

(せっかく作った黒板とチョークなのに、全然売れなかったのは何故でしょうか? ドリュアス領内では、物凄い好評なのに……。と言っても、数は出ませんでしたけど)

 私は今の状況に、現実逃避をしながらチョークを走らせます。私が書き込み終わった頃には、父上の説明も終盤でした。私は席に戻って、父上の説明が終わるのを待ちます。

 父上は最後に、居残りをした3人に頭を下げ謝ります。私も当然父上に続き謝りました。母上は私達が謝った事で、不機嫌オーラを引っ込めてくれました。(助かった)

「ドリュアス家の今後についてだが、木の精霊との約束で交渉役を降りる訳には行かない。また、説得するのも不可能だろう。当然国に精霊の事を秘密にする訳にもいかない。よって、如何考えてもドリュアス家単独で、森を開拓しなければならない。本来なら少しずつ開拓するのだが、一部貴族(馬鹿貴族と高等法院)が王国の財政状況を理由に、無理な開拓を強要してくるだろう。だからと言って、下手な所から融資を受ければ後々食い物にされる。よってどう対策をとるか、この場で話し合いたいと思う」

 父上の宣言で、全員黙ってしまいました。いきなり言われても、良い案等出るはずがないのです。それでも全員で妙案を出そうと必死に考えました。

 ぽつぽつと出て来た案から利点と欠点を抜き出し、問題点を検討していきます。

 人材に関しては、結局良い案は出ませんでした。現ドリュアス領で優秀な者に教師役をやらせ、少しでも早く優秀な人材を確保するしかないとされました。騎獣に関しても同様に良い案が出ず、少しずつ増やすしかありません。物資に関しても、お金を払って買い集めるしかないとされました。まともにお金を借りられそうな所も、ヴァリエール公爵家だけの様です。

 ハッキリ言って、有効な案は一切出なかったと言って良いでしょう。どんよりとした空気が、その場を支配する事になります。

「せめて安全に資金を借りられる相手が、もう1人居れば……」

 資金面の不安から、父上がそう呟きました。

「優秀な人材がどっかに余っていないのかな?」

 私が続けてあり得ない事を呟きました。

「どこかに、騎獣にできる幻獣や魔獣が居ないのかな?」

「そうですね。森に居る幻獣や魔獣を、騎獣に出来れば良いのですが……」

「野生の幻獣や魔獣は、人を恐れ攻撃的になるからまず無理でしょう」

 アナスタシアの呟きにディーネが答え、それを母上が沈んだ声で否定しました。八方塞(はっぽうふさ)がりとは、この事を言うのでしょう。しかし私は、アナスタシアとディーネが話した内容に、ピンと感じる物がありました。

「父上。木の精霊に仲介を頼んで、森の幻獣や魔獣に騎獣ならないか聞いてみては?」

「そうだな。ダメもとで頼んでみるか。皆はその間に、対策案をもう一度考えて見てくれ。遅くとも明日朝一には、王都に報告に向かわなければならない」

 私はこの時、5~6頭も騎獣になってくれれば御の字ぐらいに思っていました。準備中に父上とも話しましたが、父上は「せめて10頭は欲しい」と言っていました。現在ドリュアス領で確保している騎獣は、合計で38頭です。この数は一領主としては、規格外に多いです。(普通はどんなに多くても4~5頭くらい)魔の森調査官の名は伊達では無いのです。

 早めの昼食を食べ、もう一度木の精霊の元へ向かいます。先刻と同じ場所にグリフォンを降ろし、フライ《飛行》で大樹の前に行きます。

「木の精霊よ。姿をお見せください」

 父上の声に木の精霊は、すぐに応えてくれました。

「何の用だ。単なる者よ」

「お願いしたい事があるのです。それは、現在この森に住んでいる幻獣や魔獣達についてです」

 精霊からの返事はありませんでしたが、父上はそのまま言葉を続けました。

「現在我々は、森の開拓を許可していただいています。しかしそれは、我々が住める地を増やすと同時に、幻獣や魔獣達が住める地を減らす事になります。そこで、我々人間と共に生きても良いと考える者達に、人間の世界へ来てほしいのです。住む場所と食事は、ドリュアス家の名において保証します。我々の意思を、幻獣や魔獣達に伝えてもらえませんか?」

 父上が喋り終ると、木の精霊は少し間をおいて返事をしました。

「よかろう。森に居る者達に、単なる者の意思を伝えよう」

「「ありがとうございます」」

 私と父上は、同時に感謝の言葉を口にしました。精霊が黙ってしまったので、暫く待っていると葉鳴りの音が鳴り始めます。そして更に暫く待つと、木の精霊が口を開きました。

「共に行きたいと言う者達が現れたぞ」

 私と父上は同時に「「おおっ」」と、声を上げてしまいました。父上が興奮した様に口を開きます。

「それで、その者達は……」

「単なる者がユニコーンと呼ぶ者達だ。単なる者に追われて、我が森に逃げ込んできた。番で仔がいる」

(番で仔が居ると言う事は、少なくとも3頭のユニコーン!?)

「父上!! ユニコーンならば……」

「ああ。ドリュアス家より王家の方が、聖獣として大切にしてもらえるだろう」

 ユニコーンは聖獣にして希少である為、王家の覚えもこの上なく良いです。角を狙う者達も、相手が王家なら手が出せないでしょう。そう言った意味では、ドリュアス家では不安があります。現状では、警備に人を割く事が出来ませんし。

 色めき立つ私達をよそに、木の精霊は続けます。

「ペガサスも了承したな。以前1頭だけ傷つき森に迷い込んで来た者だ」

(ペガサス!? 希少度で言えばユニコーンより上ですね。しかしお金になるかと問われれば、ユニコーンより圧倒的に劣るとしか答えられません(ユニコーンの角が原因)が、それでもかなりの額になります。ユニコーン(殺して角だけ奪える)と違って傷つければ値が落ちるので、わざわざ警備を厚くしなくても現状の警備だけで十分ですね)

「単なる者が乗って来た者達も、了承している」

 私が考え事をしている間に、木の精霊は話を先に進めていました。

「騎獣だった者達ですか? 種類と数は?」

 父上が精霊に聞き返しました。

「グリフォンが8、ヒポグリフが11、風竜が12だ」

 予想より遥かに多いです。この数では、新しく獣舎を建てなければいけません。私と父上は、嬉しい悲鳴が上げるのを必死でこらえます。しかし、ここで終わりではありませんでした。……そう。終わりではなかったのです。

「そして、我を古くから守護してきたマンティコア達」

 ここで私と父上の動きが止まりました。恐る恐る父上とアイコンタクトをとりました。

(マンティコアって、森に対応しているから凄い数が居るんじゃ)Byギルバート

(10頭や20頭位なら何とかなる。大丈夫だ……タブン)By父

 しかしそんな淡い期待は、跡形も無く吹き飛びました。

「人の所へ行くのは178か、7ほど我が守護に残ってくれるのか」

((ひゃくななじゅうはち!?))

「ワイバーンは93か。全て人の所に渡るのだな」

(ワイバーンが93頭? 合計で300頭超えるじゃないですか!! 父上!! 不味いです)Byギルバート

「それにガルムが89で全部だな」

(ガルムまで居るのか!? 含めると400近いぞ!! 如何する?ギルバート。ガルム等の一部断るか?)By父

(ここで断れば、断った者達は全て敵になります。下手に断れません)Byギルバート

 ここで木の精霊の止めの一言が飛んで来ました。

「単なる者よ。我が森に住む者達への気遣い感謝する」

(父上!! 完璧に断れない状況が出来上がっています!! ここは受けるしかありません。時間差をつけて、順次受け入れる形にしましょう)Byギルバート

(分かった)By父

「木の精霊よ。ありがとうございます。しかしそれほどの数となると、我々にも準備が必要です。準備ができ次第、順次受け入れる形でよろしいでしょうか?」

「かまわぬ。だが、単なる者が乗って来た者も含めマンティコア達やワイバーン達も、以前単なる者に仕えていた者も居て、早期の受け入れを望んでいる。その者達から話が広がっていて、他の者達も速い受け入れを望んでいる」

 なんか、嫌な汗が出て来ましたよ?

「よって、その者達の意も考え期限を設ける。月があと12回交差するまでに、この者達を受け入れよ」

「「1年!?」」

 私達が期限の引き延ばしを求めようとした所で、木の精霊は大樹に引っ込んでしまいました。 

(反論は受け付けません。と言う事でしょうか?)

「父上。如何しましょう?」

 私が声をかけると、父上は頭を抱えてしまいました。



 対策を練る為に、私達は急いで領に帰りました。

 急いで母上にこの事を報告すると……。

 ユニコーンで驚き、ペガサスで喜び、グリフォン・ヒポグリフ・風竜で父上に抱きつこうとし、マンティコアで固まり、ワイバーンで崩れ、ガルムで父上を殴っていました。直後に、泣きながら私も殴られました。実に見事な百面相です。その時のセリフが、「上手く行きすぎよ!! 加減しなさい」でした。そんな事言われても……。期限の事を言ったら、父上共々もう一発殴られました。

 そしていよいよ本日2回目の、ドリュアス家緊急家族会議です。母上、ディーネ、アナスタシアの視線が、やたら冷たく突き刺さります。

「まったく。あなた達は、問題を大きくして如何するの?」

 母上のお叱りに、私と父上は縮こまる事しか出来ませんでした。

 騎獣不足は解決しましたが、資金・人材面で問題を大きくし新たに土地の問題も追加されました。そう、騎獣舎を設置する土地が足りないのです。

 そこから家族会議が始まりましたが、やはり良い案は出ませんでした。

「人材も致命的だけど、資金・物資・土地は問題よね。今回の褒美で、国王から領地を貰えないかしら? と言っても、近くに在るのはお金がかかる王領ばかり。ドリュアス領の北は、他の貴族が既に収めているからまず無理だろうし」

 母上が呟きますが、答える気力がある者が居ません。私は地図を眺めながら溜息を吐きます。

(……森がドリュアス領にくみこまれれば、海に隣接するのか。以前望んでいた塩作りが出来ますね)

 私は既に、現実逃避を始めていました。

(森切り開くのは大変だから、森に寸断されて孤立した王領を貰ってここで塩作りかな……。そうなると初期の輸送はガリア経由か。街道作らないと、税金と称して相当な金額を……。って、貰ってもいない土地の事なんか如何でも……ッ!? いや、上手く立ち回れば貰える。それなら……)

「父上!! 部屋から物を取って来ます」

「待て、ギルバート。今は……」

 私は父上達の制止を振り切り、自分の部屋へ戻ります。厳重にしまっておいた大きな箱を取り出し、抱えると父上達の元へ戻ります。私に注意しようとする父上と母上を無視して、私は箱の中身を全員に見せました。

「これを売り払えば、当面の資金はなんとかなると思います」

「何を言っているの? こんなガラス玉で、お金になる訳ないじゃ……」

 母上が怒り口を開きましたが、言い切る前に私が口を開きます。

「ダイヤモンドです。私が《錬金》で作りました」

「へっ?」「嘘?」「馬鹿な!」「冗談?」

 母上、ディーネ、父上、アナスタシアの順で、面白い声と顔を披露してくれました。

「父上。母上。ディティクト・マジック《探知》を使ってください」

 父上と母上が《探知》を使うと、父上が頭を抱え母上はグッタリと椅子に座り込んでしまいました。父上の口から、絞り出すような一言が出ます。

「……本物だ。なんと非常識な」

 箱の中には、大人の握り拳大のダイヤが二つ在りました。カットが分からないので、形こそ球状ですが。売れば天文学的な値段になるでしょう。

「本来なら、絶対に表に出したくないのですが緊急時です。仕方ありません。お金を借りられれば、一番良いのですが……てっ、待てよ。これを質にする事により、低い利子でしかも内密にお金借りられませんか?」

「可能だろう。しかし、これだけの品となるとトリステイン王国関係では、ヴァリエール公爵かクルデンホルフ大公くらいだぞ。その条件では、王家は除外せねばならぬし」

 私の質問に、父上がかろうじて答えてくれました。流石に父上です。金額的には王家も出せるのですが、王家のお金は半公金となるので内密となると無理があります。下手をすると“王家はドリュアス家を特別扱いしている”と、醜聞が出て来かねません。

「父上はそれぞれの家から、これを質にして資金を絞り出してください。当面の資金はこれで解決ですが、問題はこれからの収入です。そして同時に、土地の問題も解決します」

 私は王国から森に寸断された王領を指さし、言葉を続けます。

「どうにかしてこの領を国王より賜り、マギ知識による新しい海水塩の製塩を行います。マギの世界から換算すると、4アルパンで1日に平均2万リーブルの塩を生産出来ます。最もハルケギニアでは、多少効率が落ちると思いますが……」

 父上達がポカンとしていますが続けます。

「この領を手に入れる方法ですが……」

 私は自分が考えた方法を、父上と母上に説明しました。しかし父上と母上は、難しい顔をしました。

「いや、それはちょっと無理がある。それよりも、ここをもっとこう……。シルフィアはどう思う?」

「もっと徹底的にやった方が良いと思うわ。だからここは……ヴァリエール公爵に、ちょっと協力してもらえないかしら」

 私、父上、母上の3人は、領地奪取作戦を練り始めます。ディーネとアナスタシアは、議題について行けず口をへの字にしていました。






 ……問題はバカ貴族や高等法院が、私達の作戦にはまってくれるかどうかですね。 
 

 
後書き
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