戦国異伝
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第百四十六話 闇の仕掛けその六
織田家の青い兵達が家や田畑に火を点けるのを見た、そして言ったのである。
「お、おら達の田や畑が」
「家も燃えているぞ」
「牛達も殺されておる」
「何ということじゃ」
「折角ここまで耕して育てたというのに」
「織田家は何と酷いことをするのじゃ」
人が殺されただけではなかった、彼等にとって命である田畑や住む家に可愛がっていた牛や犬達まで殺されていた、それを見てだった。
彼等は泣き崩れた、僧達もそれを見て怒って言う。
「織田信長、こうした奴じゃったか」
「許せん、許せぬぞ」
「無辜の民を撃ち田畑を焼くとは」
「これが織田家か」
「民百姓をそう扱うというのか」
彼等は身体を震わせて怒りを露わにさせていた、そして同じく伊勢の赤坂の辺りでだ。
九鬼が港からあがり田畑を見回っていた、彼も丘の政に携わっているのだ。
それで兵達と共にあちこちを見回していた、そのうえで政をするべき場を見ていたのだ。
それは幾つか見つかっていた、それで周りの者達に言うのだった。
「うむ、この場はな」
「はい、どうしましょうか」
「この村は」
「まず川の堤じゃ」
最初はそこだrというのだ。
「そこをなおしてな」
「そしてですか」
「それからですか」
「田畑はよい」
そこはだというのだ。
「そこはな、しかしじゃ」
「堤ですか」
「そこをですか」
「そして道じゃな」
続いてそこであった。
「道も整えるか」
「わかりました、それでは」
「人をやり速やかにかかりましょう」
「そうせよ。あとこの辺りは本願寺の寺が傍にあるが」
この辺りにも本願寺の寺があるのだ、九鬼はここでこのことについて話すのだった。
「あの者達のことはよいか」
「織田家にも何もしてきませぬし」
「さしあたってはですな」
「それならよい。当家の者や民百姓に何かをすればな」
その時はというのだ。
「容赦せぬ」
「ではそれの備えもですか」
「忘れずに」
「うむ、戦になればな」
その時はというのだ。
「民百姓にまで迷惑がかかる」
「それは絶対にですね」
「許してはなりませんね」
「そうだ、よいな」
九鬼の言葉が強くなる、そして。
そのうえでだ、今は本願寺の方を見ていた。今はこれといって荒れた気配は見られなかった。
だがそれは一瞬のことだった、九鬼の前に足軽の一人が慌ただしく来た、彼は九鬼の前に跪くとこう言ってきたのだ。
「た、大変です!」
「どうしたのじゃ?」
「敵です!」
「敵?一揆か?」
織田家ではこれも珍しくなっている、信長の善政の結果だ。九鬼も言いながらそれはないと考えた。
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