チートな転生者の奏でる『俺の転生物語』原作どこいった!?
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『邂逅、説得、甦生』前編
前書き
どうも!
遅くなりましたが何とか投稿できました。
今回は長いので前編と後編をわけました。
どうも黒帝 零です。
今日はみんなでフェイトの家に行く事になったのですが……、
「ハンカチもった?」
「あぁ! なのはのお菓子がないの!?」
「フェイト~あたしのオヤツ知らない~?」
自分のオヤツを探す二人。
「アルフ アナタのオヤツはテーブルの上でしょう」
それを指摘する千歳。
「あっ! あった あった!」
正直言おう……。
「遠足か!?」
俺はあまりの気の抜け具合についツッコンでしまう。
「零、どうしたの?」
「お兄ちゃんどうかしたの?」
いやアンタらね……。
「一応ここシリアスな場面なんだけど」
「?」
全員が一斉に首を傾げる。
「まぁ いいや 準備はあとどれくらいで出来る?」
「基本的な準備は終わっていますよ」
千歳が俺の質問に答えてくれる。
「そうか」
「あ~ またあの女にあうのか~」
ぶつくさと文句を言うアルフ、
「アルフ……あんまり母さんの事を悪く言わないで……」
それを諌めるフェイトを見て俺は思う。
たとえ本人に愛されなくとも子が親に愛情を求めるのはある意味当然の事なのかもしれない。
それは人の本能かそれとも魂の渇望なのか……それはわかりもしないが……。
「でもさ~」
「アルフ……お願い」
「うぅ~わかったよぅ」
表情は嫌々なものではあるがしぶしぶ納得するアルフ。
「ありがとう」
「ところでフェイト お土産はもったのか?」
「うん 大丈夫 ちゃんともったよ 零」
俺の問いに翠屋のケーキが入った箱を見せて答えるフェイト。
「そうか なら そろそろ行くか?」
「そうだね」
「なのはも準備はいいか?」
「大丈夫なの!」
「そうか ならまずは屋上に行くぞ」
転移を行うために俺達は屋上へと向かう。
それから俺達は屋上へと移動し、
「それじゃあ フェイト 転位魔法を頼む」
「うん」
フェイトはデバイスを持ち、
「座標……固定……『時の庭園』!!」
転移座標の固定を行い詠唱が終わると、
空間が歪み転移を行う魔方陣が地面に描かれる。
魔方陣から溢れ出す光に陣内にいる全員が光に包まれ屋上から零達の姿が消え、
時空の狭間にある時の庭園へと転位する。
ー次・元・跳・躍ー
時の庭園と呼ばれる場所の広間に魔方陣が現れ、
「着いたよ」
「ふぅ~ココに帰ってくるのも久々だね~」
「ココが時の庭園か……」
「なんか凄いの!」
「何やらずいぶんと淀んだ空気と魔力を感じますね」
千歳の言うとおり普通の場所とは違い空気は淀み若干の息苦しさのようなものと嫌な感じのする禍々しい魔力の波長を感じる。
正直な話人が暮らすにはたとえお世辞でも良い環境とは言えない。
「母さんのいる場所に案内するね」
フェイトが先頭を歩き案内をする。
なのは達もフェイトの後に続き、
「さて……行きますか」
俺も後を追おうとしたその時、
『た……すけ……て……』
ちいさな消えそうなほどに小さな声が聞こえる。
「ん?」
俺は声に反応し足を止めるが声は聞こえず。
「なんだ? 幻聴か?」
そう思い無視しようとすると、
『お……ねがい……します……』
再び……今にも消えてしまいそうな声が聞こえ、
「零? どうしたの?」
「零お兄ちゃんどうかしたの?」
「零様いかがなされました?」
フェイト達が心配し俺のところへと向かってくる。
「いや……なんか声が聞こえた気がしてな……」
「声?」
「んな訳あるはずがないだろ? ココにはアタシ達しかいないはずなんだし」
アルフの言葉を聞いたなのはは、
「え……もしかしてオバケ?」
なのはの顔からは血の気が引き、
「え? ウソだよね?」
ガタガタと震えるフェイト。
「とりあえず声の聞こえた場所まで行ってみるか……」
俺は先頭に立ち声の聞こえた時に感じた魔力の反応を頼りにその場所を目指し歩く。
そしてたどり着いた場所は今は使われていないと思われる実験室のような場所だった。
「ココか……」
「ココは……」
「ん? 知っているのか?」
俺はフェイトに話し掛ける。
「うん……ココは『バルディッシュ』が生まれた場所……デバイスの開発室なんだ」
「そうか……」
さっきの声ってまさか……。
俺が思考しているその時!
『おねがい……します……どうか……』
再び声が聞こえる。
「また……」
「ふぇぇ……まさか本当にオバケなの!?」
流石に幽霊などのオカルト関係には耐性がないのか震えるなのは。
「ちょっと調べて来るよ」
「えっ!? 零!?」
「大丈夫 すぐ戻るさ」
心配する全員をよそに俺は開発室の中へと入る。
「暗いな……『レミラーマ』」
呪文を唱え部屋の中を明かるくする。
「さて声の主は……」
部屋の中をくまなく探していると『あるもの』を見つける。
「こいつか……」
そこにあったのは……、
「猫……いや……山猫か?」
猫と思わしき生き物の亡骸だった。
「コイツがさっきの声の主か?」
『わたし……の声が……聞こえるのですか?』
「聞こえるよ」
今にも消えてしまいそうな声に俺が返事を返すと、
『お願いします! どうか……あの人を……プレシアを助けて下さい!!』
猫の亡骸から幽霊がその姿を現す!
「お前は?」
『私の名前はリニス……プレシア・テスタロッサの使い魔だったものです』
「テスタロッサということはフェイトの親族か?」
やはり彼女俺の予想通りだったか。
『フェイトを知っているのですか!?』
フェイトの名を聞き強く反応を示す。
「あぁ……外にいるぞ」
『あの子は……フェイトは元気ですか?』
「あぁ 最初会った時はあまり健康とはいえなかったが今は健康そのものだ」
本当に最初に逢った頃の彼女は痩せていて血色がわるく、無理をしているのがすぐわかるような子だった。
今は俺と千歳で面倒を見ているから以前とは別人のように元気になっている。
『よかった……あの子が元気で……』
俺の答えに満足したのか安堵の声をもらす。
「ところでさっき言っていたプレシアを助けろというのはどういう事なんだ?」
俺はあえてリニスの目的を聞く事にした。
『プレシアは……アリシアが死んだあの日から変わってしまったのです』
「あの日?」
確か……新型魔導炉開発中に起こった事故……ヒュードラ事件だっけ?
『はい……私も詳しい事は知らないのですが……プレシア達の研究していた魔導炉が突如暴走し……アリシアはそれに巻き込まれ死んでしまったのです』
「フェイトは……あの子はアリシアについては何か知っているのか?」
『アナタにお願いをしてもいいですか?』
「内容による」
『これからお話しする事を聞いてもあの子を……フェイトを嫌わずにいてくれますか?』
リニスの問いに俺が出した答えは、
「わかった 俺の魂にかけて誓おう」
彼女を一人の人間として見る事だ。
『ありがとうございます』
俺はリニスから知っている事を全て聞く。
「なるほどな……」
『これが私の知る全てです』
「自分の大切なものを失ったが故の事か……」
『フェイトをよろしくお願いします』
「お前はフェイトにもう一度会いたくないか?」
『できるならもう一度会いたいです……でも私はすでに死んでいて……
何も出来なかった無念から地縛霊としてココに縛りつけられていたのですが……アナタに思いを託し無念が晴れた以上私がこの世界に留まる事なんて……』
彼女は悲しそうにうつむきながら絞り出すかのように言葉をつなぐ。
「いや……方法はある……」
少しばかり強引な方法ではあるが……方法じたいはある事はある。
『えっ!?』
「まずはお前の魂を何らかの媒体に封印し、この世に留まらせ、次は新しい身体を用意し宿らせれば……いけるはずだ」
『そんな事が可能なんですか!?』
「あくまで理論上はな……」
そう……あくまで理論上での話しではあるがおそらくこの方法が一番確率が高いだろう。
『…………』
「決定権は君にある……どうするかは君が決めてくれ」
考えこむリニス。
おそらくは彼女自身フェイトに逢いたいという想いはあるもの一度死んだ存在である自分が再び現世に甦る事に疑問と抵抗があるのだろう。
そしてしばらくたってから彼女が出した答えは……、
『あの子ともう一度会えるのなら私は……その方法を選びます!』
リニスは再び出逢える可能性のある道を選ぶ。
「わかった……なら俺は今から君をこの宝石に封印する」
俺は『王の財宝』から純度の高い魔力を帯びた紅い宝石を取り出し、
「『術式付加』」
宝石に術式を刻まれ彼女は淡い光の粒子となり宝石の中へと入って行く。
「『封印』!!」
リニスの魂を宝石に封印し一時的に定着させ、
「『安定化』」
さらにその上から術式を刻み魂が劣化しないように安定させる。
「しばらくは不便だが我慢してくれ」
『はい』
そして宝石に保護術式をかけて大事にしまう。
「さて……戻るとしますか……」
俺は部屋を出る、
「あっ! 帰って来たの!!」
「零! 大丈夫だった?」
「何かいたのかい?」
口々に質問してくるなのは達、
「いや……特に何もなかった」
それに俺はポーカーフェイスで何もなかったと答える。
「そうなの?(お化けがいなくてよかったの)」
「そう……」
「ふ~ん」
「時間を取らせて悪かったな」
「まぁ いいさね」
「それじゃあ 母さんの所に案内するね」
再びフェイトを先頭に長い廊下を歩き始める。
『零様』
千歳が念話で零に話し掛ける。
『なんだ?』
『先ほどあの部屋の中で奇妙な魔力を感じましたが何かあったのですか?』
『あぁ……』
念話で先ほどあった事を千歳に説明する。
『なるほど……では今回の件が終わりしだいに準備を始めますか?』
『頼む』
『わかりました』
などと念話で話していると、
「着いたよ」
大きな扉の前でフェイトが到着を告げる。
どうやら話し込んでいるうちに着いたようだ。
「それじゃあ零達の事 母さんに報告するね」
先に行こうとするフェイトを、
「待った 俺も一緒に行くよ 話さなければならない事もあるしな」
一度止めて自分も同行する事にする。
「そう? わかった なら一緒に来て」
「悪いがなのは達は少し待っていてくれ」
「えっ? 何で!?」
意味がわからずきょとんとするなのは。
「あまり大勢で入るわけにはいかないしね それに少し難しい話しもしなければならないしね」
一応の建前としての説明を彼女にする。
「う~ わかったの……」
渋々といった感じで納得するなのは。
「じゃあ千歳後を頼む」
「はい」
そして俺はフェイトの後に続いて部屋の中へと入り、
「母さん……今戻りました…」
入った部屋の先にいたのは、
「フェイト……それと貴方は誰かしら?」
大胆に肌を露出する衣装に身を包むが、顔色が悪く生気の無い肌をした女性だった。
「この人は……」
説明しようとするフェイトの言葉を遮り、
「はじめまして 俺の名は 黒帝 零 故あってフェイトと仲良くさせてもらっている」
「そぅ……そんな事はどうでもいいわ……フェイト……母さんのお使いはどうしたの?」
さもつまらなさそうな顔をしてフェイトに成果を聞くプレシア。
頭ではわかってはいたがやはり現実を目の当たりにするとどこか納得のいかないものがあるな。
「はい……」
フェイトはバルディッシュから集めた数個のジュエルシードを取り出し、プレシアに渡す。
「たったこれだけ?」
プレシアは苦虫を噛み潰したような顔をしてフェイトに聞く、
「ごめんなさい……」
「ダメな子にはお仕置きをしないとね」
そう言ってデバイスを鞭に変化させ、
「私の言い付けを守れないなんて悲しいわよ!!」
フェイトに向かって鞭を躊躇いなく振るうプレシア。
「っ!!」
迫り来る鞭に身体を強張らせるフェイトだが、
ー掌・握ー
振るわれたソレはフェイトに届く事はなく、
「やれやれ……躾とはいえ鞭はないんじゃないかな?」
フェイトへ向かって来た鞭が当たる前に零が右腕で掴み止めていた。
「零……」
彼女は怯えと若干の安堵の混じった声で零の名を呼ぶ。
「フェイト……悪いが俺は君のお母さんと話す事があるから一度外に出てなのは達と一緒にいてくれないか?」
「えっ? でも……」
「頼む」
少しだけ威圧感を込めて言う、
「わ わかった」
威圧感にあてられたのか慌てて部屋から出るフェイト。
「さて……これでゆっくり話しが出来るな」
「貴方……一体何者? ただの子供じゃないわね」
警戒心を剥き出しにして目を細め鋭く睨み付ける。
「そんな事はどうでもいい……自分の子供に鞭を振るうなど親のするべき事ではないと思うのだが?」
子供が虐待されている場面何て見たくも無い。
「私の子供? あぁ あの出来損ない? 冗談じゃないわ」
「出来損ない? ずいぶんな言い方だな?」
一応は産みの親だろ? 何故そこまで嫌う?
「出来損ないは出来損ないよ 私のお使いも満足にできてないじゃない」
「母親のためにと一生懸命頑張っているあの子にたいして言う言葉ではないと思うのだが?」
あの子の記憶が偽りであっても彼女が母親のために頑張っていたのは真実だ。
「私の命令を遂行できてない以上そんなものなんの価値もないわよ!! それにあの子とは違う!」
今のプレシアのセリフでフェイトを嫌う理由が解った……。
「あの子とは『アリシア』の事か?」
俺の一言で場の空気が変わる。
「貴方……何故アリシアの名を!?」
もはや殺気を通り越して殺意のこもった射抜かんばかりの鋭い視線を彼女は零に向ける。
「なぁに とある人物から聞いただけさ」
「そいつは誰よ!?」
プレシアは全身から殺意と怒気を漲らせながら吼えるように言葉を飛ばす。
「そんな事はどうでもいい それよりもアンタの目的はなんだ? フェイトのような幼子にジュエルシードのような危険物を集めさせている目的はなんだ?」
「貴方に話す義理はないわ!」
「内容しだいではコイツを渡してもいいんだがな」
俺は『王の財宝』からジュエルシードを一個取り出し見せる。
「それを寄越しなさい!!」
プレシアはデバイスを起動させ雷の魔法を零に向かって放つが、
「無駄だ!!」
俺は自分に向かって放たれた雷を、
ー掌・握・破・壊ー
『支配者の右腕』で掴み取り魔法を握り潰す。
「なっ!? 魔法を素手で握り潰した!?」
「残念ながら俺の右腕はちと特別でな」
ホントにこの能力はかなり便利だよ。
「クッ!! 厄介ね! でもこれならどう!?」
零を取り囲むように全方位に魔方陣が現れ、
「全方位から放たれる雷ならその右腕がどんなものであろうと意味がないわよ!」
確かにな……だが…甘い!
「『創造』……『千鳥』!!」
俺は『とある』一本の刀を創りあげる、
「ハァッ!!」
ー高・速・回・転ー
独楽のように高速回転をしながら刃を振るい己に襲い掛かる全ての雷を一刀のもとに切り裂く。
「なっ!? 雷を切り裂いたですって!?」
普通ならば切り裂く事など不可能とも言える雷を容易く切り裂く目の前の存在に驚愕する。
「この刀の名前は『千鳥』かつて雷を一刀のもとに切り裂いたという逸話を持つ刀だ」
「どういう事?」
「この刀には雷を切り裂いた逸話から雷を切り裂くという概念が付加され雷を切る事が可能となったんだよ つまりこの刀とアンタの相性は最悪という事だ」
「クッ!! それでも諦めるわけにはいかないのよ!!」
なおも雷系統の魔法を放つプレシアだが、
「無駄だ!」
その全てをことごく切り伏せる。
プレシア side
なんなのよあのガキは!?
あの出来損ないといい、
何故私をこんなにも不快にさせる!?
「いい加減くたばりなさい!!」
ー雷・撃ー
私はあのガキに向かって再び魔法を放つが、
「それは無理な相談だ!」
再びあの片刃の剣で意図も容易く切り裂かれる。
「何故!? なんでなのよ!?」
あれはロストロギアなの!?
「いい加減人の話しを聞け!」
うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!
あの出来損ないといい『アイツ』といいあのガキも何故私をここまで不快にさせるの!?
私はただあの場所に行ってアリシアを甦らせ、再び一緒に暮らしたいだけなのに!?
あのガキに向かって魔法を放とうとしたその時、
「これをくらっ!? うっ! ゴフッ!」
いつもの発作が起こり、
魔法を中断させる。
「ゴホッ!」
私は血を吐き出し床に膝をつく。
こんな……ところで……。
アリシア……私の愛しい娘……。
私はただ貴女と一緒にいたいだけなのに何故……、
何故いつも邪魔がはいるの!?
プレシア side end
零 side
俺の目の前には吐血し、床に膝をつくプレシアの姿があった。
その姿に最初のような威圧感などはなくただの病に侵された病人の姿そのものだ。
「もう止めないか?」
俺は刀をおろし、戦う姿勢をやめる。
「まだよ……私は……あの場所へ……『忘れられし都』……『アルハザード』に行くのよ」
息も絶え絶えに言葉を紡ぐプレシア。
「『アルハザード』……過去に在ったとされる伝説の魔法の都か……」
地球のアトランティスみたいな場所だな……どちらも高度な文明を持っていたが消えてしまった伝説の都という共通点がある。
「私はそこに行き……全てを取り戻す……アリシアを……私の愛しい娘を!!」
それは子を失いし母の嘆き。
「フェイトはどうするつもりだ?」
失ったアリシアだけしかみていないがフェイトも貴女の子供だろう。
「フェイト? あんな出来損ないどうでもいいわよ」
「…………」
俺は無言でプレシアへと歩み寄り、
ー平・手・打ー
プレシアの頬をはたく。
「いい加減にしろ! フェイトにアリシアの幻影を重ねるな! あの子はフェイトという一人の人間であってアリシアではない!」
いくら代わりをつくろうとしても人は物ではないからできるはずがない!
「アレは所詮アリシアの代わりに造ったクローンよ! アリシアになれない出来損ないなのよ!」
「いくらアリシアの時の記憶があろうとアリシアになれないは当然の結果だ!! 人は自分以外の何者にもなる事はできはしない!」
「ガキが知った口を! 失った事のない貴方に何が解るというのよ!?」
「俺も昔……家族を失った事がある」
産まれてくるはずだった弟をな……。
「だからアンタの気持ちも少しは理解出来る……」
「それでも……アリシアは私の全てだった……あの子のためならなんでも出来た……あの子は私の支えだった……」
愛が深いが故に矛盾や違いに耐えられなかったんだろう。
「アンタはフェイトに辛くあたってはいるがそれはフェイトを通してアリシアを見ているからじゃないのか?」
「…………」
「フェイトの優しさに救われた事はないのか?」
「…………」
「それと残念なお知らせだが……」
俺は再び『王の財宝』を開き、
皮張りの部厚い古ぼけた一冊の本を取り出しす。
「『大魔導書(グラン・グリモワール)』検索 『アルハザード』『死者蘇生』」
本のページがバラバラと勝手に高速で開かれ、
突如ピタリと止まる。
「検索結果はアルハザードにアンタの求めるものは無い……」
「どういう事よ!? そんな汚ならしい一冊の本で何が解るっていうのよ!?」
「この本の名は『大魔導書(グラン・グリモワール)』……こいつ自体は全ての世界の記録が記憶されているアカシックレコードの『魔』に関する記憶に直結している」
「…………」
「つまりは『過去』『現在』『未来』において生まれた『魔』が記憶されている……この中にアルハザードの事もあったが……」
そう……ソレは確かに存在した。
「なによ……」
「アルハザードの中に確かに死者を甦らせる術はあったが……アンタの求めているものとは違う」
「どう違うのよ!?」
「アルハザードにあったのは死者を擬似的に甦らせ傀儡のように操る術だ……」
在ってはならぬ禁じられた外法ってヤツだ。
俺の言葉(残酷な真実)に、
「ウソ……私の求めたものが……」
膝から崩れ落ちるプレシア。
その姿は実年齢以上に老けて見えてしまう。
俺は崩れ落ちるプレシアの身体を支える。
支えたプレシアの身体は軽くその身体は軽く力を込めれば折れそうなくらいに痩せ細っていた。
「病気か?」
「えぇ……もう長くはないわ……」
プレシアはもう全てがどうでもいいと言わんばかりに無気力な返事を返す。
「一つ聞く……」
「何よ……」
「アンタは……本当にフェイトの事を憎んでいるのか?」
「………」
「他人である俺にはアンタの本心なんて解りはしない……だが……俺にはアンタがフェイトの事を本当に嫌っているようには見えない」
フェイトとの会話の時に僅かにだが愛しさと悲哀の感情が彼女から感じ取れた。
「私だって解ってはいるのよ!! あの子はアリシアじゃないって! それでも……それでもアリシアは私の全てだったのよ!!」
それは大魔導師としてのプレシアの言葉ではなく、
一人の母親としての壮絶な叫び。
「優しいあの子は私の支えだった! 私の宝物だった! あの子のためと思えばなんでもできた! だからこそフェイトを見るのが辛いのよ! あの子はアリシアになれなかった! あの子はアリシアになるはずだった!」
現実と理想が噛み合わなかった結果か……。
「…………」
「もうどうすればいいのか解らないのよ!! 私がすがったものは私の思い描くものとは違った! 私はどうすればいいのよ!?」
涙を流しながら叫び続けるプレシアに、
「もし……」
俺は……、
「もし……アンタの望みを俺が叶えると言ったらどうする?」
告げる……。
「え? な 何を言っているの?」
「俺にアリシアの蘇生を出来る可能性があるとしたらアンタはどうする?」
「な 何を言っているの? 死者蘇生の方法が無いって言ったのは貴方のはずよ!?」
「あぁ 確かに『アルハザードには無いと』言ったな」
そぅ……俺は確かに『アルハザードには無いと』は言った。
「だが『死者蘇生』の方法が無いとは一言も言ってはいないが?」
「………」
俺の言葉に声を失い、放心状態となるプレシア。
「お~い 戻ってこ~い」
ペチペチと頬を軽くはたいて放心状態から回復させようとする、
「ハッ!?」
「おっ! 回復したか?」
そう言った次の瞬間、
「本当にアリシアを蘇生できるの!?」
両肩をもたれ乱暴にガクガクとゆらされる。
「ちょっ!? もちつけ! じゃなくて落ち着け!?」
しかし、プレシアは逆にヒートアップし、
「はっきりしなさい!?」
さらに肩を揺さぶるスピードが上がる始末である。
「えぇい!!」
そんなプレシアに俺は、
ー両・肩・掴ー
プレシアの肩を掴み、
「いい加減落ち着かんかい!!」
けーね先生ばりの頭突きをかます! その瞬間にまるで鈍器で殴ったかのようなゴッスン!!という鈍い音が辺りに木霊する。
「きゅう~」
俺の頭突きで目を回しながら轟沈するプレシア。
「うぷ……気持ち悪~ 吐きそう……」
散々首を揺らされたせいか物凄く気持ちが悪かった。
「とりあえず今のうちに治療しとくか」
少し気分が回復してから、
「まずは『ライブラ』」
対象のステータスを視る魔法『ライブラ』でプレシアの身体を解析する。
「え~と……」
免疫力の低下、内臓機能の低下、結核、栄養不十分、運動不足による運動機能の低下、癌……etc
「うわ~ 解析結果からみると余命約4、5ヶ月ってとこか」
予想以上にヤバいな……。
「とりあえず開け『王の財宝』!」
俺は『王の財宝』を開きそこから、
「コレだ!」
一本の蛇が巻き付いた杖を取り出す。
「癒せ!『偉大なる医神の杖(アスクレイピオスの杖)』!!」
杖の真名解放をする事によってプレシアの身体は光に包まれ、
「あ……ぐ……うぅ……」
病気によって死滅した身体の細胞が再構築される反動に苦悶の顔を浮かべるプレシア。
「次はこれか」
俺は再び『王の財宝』を開きそこから一つの小瓶を取り出し、
「『万能の霊薬』で体力を回復させる」
プレシアの口を開き少しずつ飲ませる。
すると……、
「凄いな」
先ほどまで生気のない顔色と張りの無い肌をしていたプレシアだが、
みるみるうちにその身体に活力が戻っていく。
「これで危険域は脱したな」
そして仕上げに……、
「『目覚めろ』」
『言霊』を使いプレシアを強制的に起こす。
「うぅ……」
「身体の調子はどうだ?」
「何を言って……身体が軽い!? それにいつもの発作が無い!?」
「成功か……」
上手くいって良かったよ。
「貴方……一体私の身体に何をしたの!?」
「『宝具』を使ってアンタの身体の細胞を再構築させて普通の健康な身体にしただけだ」
「しただけって貴方ね……」
あまりの出来事に呆れ果てるプレシア。
「それはさておき俺の質問の答えを聞こうか?」
「本当にアリシアの蘇生が出来るの?」
「方法自体はあるが断言はできん……だが俺の全てを賭けて挑む」
この方法は俺も危険だからな。
「あの死にかけだった私の身体を治した貴方なら信じてみる価値はありそうね」
「それと言い忘れていたがアリシアの蘇生を行う上で俺の要求を呑んでもらう」
「要求?」
「なに……そう難しいものじゃない」
俺はプレシアに俺の要求を話す。
1 フェイトにアリシアを重ねるのを止めフェイト・テスタロッサという一人の人間として見る事
2 フェイトに全てを話し自ら謝る事
3 アリシアが復活した後はフェイトをアリシアの妹として自分の娘としてちゃんと可愛がる事
4 俺の側に付き協力して欲しい
「4はあくまでお願いであって強制ではないから嫌だったら拒んでもいいよ」
プレシアクラスの魔導師兼研究者が協力してくれるならかなり俺の計画が進むだろう。
「フェイトは……赦してくれるのかしら……」
今までの事を省みて悩むプレシア。
母親としては複雑なのだろう自分の娘に辛く当たってきたのだから。
「あの優しい子なら大丈夫だ……だが仲良くしないとアリシアが復活したら確実にこう言われるな」
俺は声帯模写でフェイトの声を真似て、
『私の妹を虐めるお母さんなんて大っ嫌い!!』
アリシアを真似てセリフを言うと、
「イヤァァァァァァッ!! アリシアーーー!! アナタに嫌われるのは嫌ぁぁぁぁっ!!」
発狂したかのように泣き叫ぶプレシア。
「アンタの言うアリシアが本当に優しい子なら確実に言うな」
「やめてーー!!」
まだ叫ぶプレシアに、
俺は迫り、
「つうか冷静になって考えてみろよ、アリシアとフェイトはようは一卵性双生児みたいなものなんだろ?」
アレって実はクローンみたいなものなんだよね。
「だったらあんな可愛い子が二人揃ってアンタの事を呼んだ時を想像してみなよ」
追撃をする。
そして、そう言われ素直に想像するプレシア。
明るくほがらかな笑顔を見せるアリシア、
そしてソレとは対象的に、
もじもじと顔を赤らめ控えめな笑顔で、
『お母さん♪』
『か、母さん ////』
母を呼ぶ二人の美少女。
「良い……」
「さて……俺の要求を呑んでくれるか?」
俺の問いかけに、
「えぇ……アナタの要求を全て呑むわ……私の幸せのためにも!!」
と、良い笑顔で言うプレシア。
「そ、そうか・・・(う~んまさかここまで上手くいくとは予想ガイです)」
「まず……私は何をすればいいの?」
「そうだな……まずはフェイトを探して今までの全てを話した後は必要な荷物を全部纏めてとりあえず俺の家に転送しておくか」
「荷物を?」
「あぁ おそらくアリシアの蘇生をした場合はほぼ確実に『次元震』が起こるだろうからな、それによって『時の庭園』が時空の狭間に飲み込まれてしまう可能性を考慮しての事だ」
「そう……」
「万が一の時はこの時の庭園を破棄してもらってもいいか? 嫌なら別の世界でやってもいいんだが……」
「いえ……別に良いわよ……元々ココはアリシアの蘇生を行うためだけの研究所みたいなものだしね」
娘のためにとはいえ凄まじいな……母の愛って。
「そうかなら……まずはフェイトを探すか……」
俺は契約ラインを通じて千歳に念話を飛ばす。
『千歳聞こえるか?』
『どうかなされましたか零様?』
『あぁ フェイトの母さんとのお話が終わったからちょっとフェイトと話しがしたいんだが今お前達はどこにいるんだ?』
今現在のフェイト達のいる場所を尋ねる。
『今私達はフェイトさんのお部屋にいます』
『そうか なら今からそっちに向かうよ』
『わかりました』
俺は念話を切り、
「どうやら他の皆はフェイトの部屋に集まっているようだ」
「わかったわ」
「さて 行きますか」
俺達は即座にフェイトの部屋へと向かい、
「とりあえずアンタとフェイトを二人っきりにするように話しをしてくる」
話し合いの場を整えるために話をしに行く。
「わかったわ……」
俺は部屋のドアをノックし、
「入ってもいいか?」
確認を取る。
「どうぞ」
ドアのロックが開き俺は中に入る。
「零! 話しは終わったの!?」
「あぁ 実はその事なんだがな」
俺はフェイトにプレシアが二人っきりで話したい事がある事を伝える、
「母さんが?」
「あぁ……」
「あの女がフェイトに何を話すつもりだい!!」
アルフが敵対心丸出しで俺に聞く。
無理も無いだろう……彼女からすればプレシアは自分の大切な主を傷つける敵にしか思えばないのだから。
「大丈夫 今のプレシアなら問題ないさ」
俺はアルフを宥めながら説得する。
「本当だろうね?」
「あぁ」
「アンタが言うならしょうがないから納得してやるよ」
どうやら嬉しい事に俺は彼女と信頼関係が結べているようだ。
「ありがとな」
「なのはも外に出るの?」
「あぁ 悪いけど外で俺と一緒に待っていようか」
「うぅ~わかったの」
「良い子だ」
俺はなのはの頭を撫でてやる。
「うにゃあ~」
猫のような声をあげながら気持ち良さそうにするなのは。
「とりあえず俺達は外に出るとしよう」
俺が先導してフェイト以外の全員を部屋から出し、
「プレシア……中でフェイトが待っている……」
「わかったわ……フェイト……入るわよ」
先ほどのような歪んだ顔ではなく憑き物が落ちたかのような顔をしたプレシアがフェイトの部屋に入る。
プレシア side
今私はあの子……零に言われフェイトの部屋に入ったんだけど、
「か……母さん……」
フェイトの顔はどこか怯えの混じった顔だった。
私がしてきた事のせいというのはわかってはいる……。
あぁ……初めて気づいた……いえ……気づかされた。
私はあの子に言われたようにフェイトにアリシアを重ねて見ていたのね。
私は本当に情けない母親ね。
「フェイト……」
「はい……」
「ごめんなさい……私は……アナタに謝らなければならないの……」
フェイト……確かにこの子はアリシアとは違う……。
アリシアではない。
でも……、
「か、母さん!?」
突然の事に驚きながらもプレシアを心配するフェイト。
あの子に言われて初めてこの子の優しさに気づいた……。
「フェイト……実はね……」
私は自分の行った事を懺悔するかのように全てをフェイトに話した……。
「そ……そんな……私は……」
あまりの事に動揺を隠せないフェイト。
それは当然の反応でしょう……私のエゴで貴女はこの世に生み出されたのだから。
「フェイト……今話した事は全部本当の事なの……謝って赦されるような事じゃないのはわかっているけど……ごめんなさい」
「母さん……」
フェイトはその紅い瞳に大粒の涙を溜めながらもぽつりと言葉を紡ぐ、
「私は……確かにアナタに造られた生き物です……でも……でも……私はアナタの娘でありたい……私をアナタの娘と認めてもらえますか?」
アナタはこんな私をまだ母と呼んでくれるの!?
「フェイト!!」
私はいてもたってもいられずフェイトを抱きしめる。
「フェイト! フェイト! アナタは……私の娘……そしてアリシアの妹……今までごめんなさい! 私は……私は……」
我を忘れ幼子のように泣きじゃくる私を……、
「母さん……母さん!」
強く抱きしめ私を呼んでくれるフェイト。
プレシア side end
零 side
あれからしばらくしてプレシアとフェイトの話しが終わったようで部屋から出て来たプレシアに話し掛ける。
ちなみに覗くなどといった野暮な事はしてませんよ。
「どうだった?」
「アナタの言った通りあの子に……フェイトに赦してもらえたわ……」
「優しい子だったろ?」
「えぇ……そうね……今になってその事が解るなんてとんだ皮肉ね」
人間というのはどうしても一つの事に囚われると視野が狭くなってしまう生き物だからな。
「まぁ……それは……さておき荷物を纏めてくれるか? それが終わり次第にアリシアの蘇生を行うつもりだ」
「わかったわ」
「なるべく手短にな……」
そしてココで、
『キング クリムゾン』!!
時をすっ飛ばす!
場所は変わりとある広い場所。
「荷物はこれで全部か?」
「えぇ 必要な資料や研究記録はこれで全部よ」
「なら とりあえずは先に転送するとしますか」
俺は魔方陣を展開し、
「転送!」
荷物を俺の家の物置に転送する。
「さて……次は……」
「えぇ……そうね……」
プレシアが頷いた次の瞬間、
部屋の奥の部分が開き、
その部屋の先にあったものは、
人のシルエットを映す何かが入ったポッドだった。
その中に浮かんでいるのは……、
「フ……フェイトが二人!?」
フェイトと瓜二つの姿の少女『アリシア』が安置されていた。
「フェイト……あの子がアナタのお姉さん……『アリシア』よ」
冷たい液体の中でまるで赤子のように眠り続けるアリシアを愛しさのこもった瞳で見ながら彼女の名を呼ぶ。
「アリシア……姉さん……」
フェイトは自分の基となった少女『アリシア』を複雑な想いを抱きながら見つめる。
「さて……始めますか……」
世界と理にケンカを売る行為をな!!
「お願い……今一度アリシアを甦らせて!!」
「その願い……全力で叶えるとしよう」
アリシアを一度ポッドから出し、床に敷き詰めた毛布の上に寝かせる。
「ん?」
アリシアの身体を毛布の上に寝かせている時に彼女の首から下げられた宝石のはまったネックレスからは何かの力を感じる。
気になり『解析』してみて解った事は……、
「プレシア……アリシアのつけているネックレスは最初から彼女がつけていた物か?」
ソレは本来ならばあまりにも『あり得ない』物だった。
「えぇ……アリシアがいつの間にかつけていた物よ どういうわけか外そうとしても外れ無いのよ……別に何か害があるわけでもないから気にしていなかったけど……」
プレシアの言葉と宝石に刻まれた術式と『中にあるもの』で俺の頭の中に一つの可能性と仮説が生まれる。
「なるほどな……そういう事か……」
これはかなり厄介だな。
「何か解ったの!?」
「一つだけ言える事はアリシアの蘇生が高い確率で成功するという事だ」
後書き
今回も遅くなってしまい申し訳ございません。
今回は長くなってしまったので前編と後編をわけました。
次の更新も頑張りますのでこれからも応援よろしくお願いいたします!!
作者は感想やアドバイスをいただけるとテンションが上がります。
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