気まぐれな吹雪
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第二章 非平凡な非日常
47、契約と仲間と色々と
要はソファに寝転がっていた。
家ではなく、黒曜ヘルシーランドの。
少しカビ臭いソファは、その臭いに合わず、わりと綺麗だった。
天井を見つめながら、腹部に手を当てる。
刺されたのが嘘かのように、そこには何もなかった。
†‡†‡†‡†‡†‡
腹部に深々と突き刺さった三叉槍。
それに伴う鈍い痛み。
思わずその場にしゃがみこんでしまう。
『て、めぇ……』
『契約の方法、それはこの三叉槍で対象を傷つけることです。そして、その傷が大きいほど、契約の結び付きが強くなる』
そう言いながら、骸はさらに深く食い込ませる。
彼の顔には不敵な笑みが浮かんでいた。
『痛いのは一瞬です』
『現状を見て一瞬もクソもあるかこの堕ナッポーが』
『クフッ!?』
要から発せられてしまった禁句に、骸の頬が強張る。
と言うか、引き釣っている。
その直後、三叉槍が勢いよく抜かれた。
刺されたときとは逆の鋭い痛みが走る。
傷口から鮮血が辺りに飛び散る。
しかし次の瞬間。
『なっ!?』
飛び散った血が藍色の霧となり、霧散した。
そしてまた集まり、要の傷を塞いでしまった。
そこには、何の痕もない。
『これで契約は終了です。僕たちのアジトに行きますよ』
そう言う骸は、心なしかふて腐れているようだった。
†‡†‡†‡†‡†‡
小さくため息を吐いて、ソファから起き上がる。
と、そこには見知らぬ人間が大量に増えていた。
クラリネットを持った少女、おっさん、謎の生命体(?)、学帽を被った男。
共通点と言うなら、全員黒曜中の制服を着ていること。
「……誰?」
思わずボヤいてしまう。
一番始めに反応したのは、クラ少女だった。
要を見るなり、突如として目を輝かせた。
「イ・ケ・メン!」
「はい?」
「私はM.M。よろしくね!」
謎のハイテンションである。
とにかく説明がほしくて骸を見る。
その目は寧ろ、helpにも思えた。
「彼らは、先程話した援軍ですよ」
「あ、はい」
先程、というのはつい数十分前のこと。
しかしながら、それにしても早いですね、と言うのが要の本心である。
「それと、君が寝ている間にボンゴレ達がやって来ましたよ」
「ふーん。ま、オレには関係ないな」
興味なさげにまたソファに寝転がろうとする。
しかしそれはM.Mによって阻まれてしまった。
「駄目よ! 今から私の出番なんだから、ちゃんと起きてなさい! 私の勇姿見せてあげるわ!」
要に何かを押し付けると、意気揚々として部屋を出ていった。
扉が閉まった後も、楽しそうな鼻唄が聞こえてくる。
「あいつどうしたの?」
「知りませんよ」
取り敢えず渡されたものを見てみると、片耳イヤフォンだった。
恐らく連絡用で使うものだ。
これを着けていろと言うことなのだろうか。
疑問しか残らないまま、とにかくイヤフォンをつける要。
何度か雑音が入ったあと、一気に音がクリアになった。
『気安くてめぇなんて呼ばないで。私はM.M』
どうやら、戦闘に入ろうとしているようだ。
ツナや獄寺に何故戦うのか聞かれ、彼女は答えた。
『戦う理由? そんなの決まってるじゃない。骸ちゃんから貰えるお金と、あの人を虜にするためよ!』
しーーーーん……。
なんとも気まずい静寂が訪れる。
骸までもが黙ってしまっていた。
「これは、恋ですね」
おっさんだけがポツリと、そう呟いた。
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