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八条学園怪異譚

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第四十八話 薔薇園その一

                 第四十八話  薔薇園
 二人の行きつけの場所が増えた、言うまでもなくビクトルがいる喫茶店だ。二人でクラスメイト達にその喫茶店のことを話すと。 
 クラスメイト達がだ、二人に勢いよくこう言ってきたのだった。
「ああ、あそこよね」
「ハーフのお兄さんがいる喫茶店よね」
「洋館をそのまま喫茶店にした」
「あそこよね」
「え、ええそうだけれど」
「あのお店だけれど」
 二人は言い出すとすぐに自分達を囲んできたクラスメイト達に戸惑いながら応えた。教室の後ろで囲まれているので少し見えるといじめに見えかねない。
「あそこね」
「お兄さんのことも知ってるのね」
「有名よ、あの人」
「八条大学の学生さんよね」
「背が高くてすらっとしててね」
「顔も凄い美形でね」
「しかも紳士で」
 クラスメイト達は二人に次々と言っていく。
「所謂イケメンっていうか?」
「モテ要素の塊よね」
「洋館の中の貴公子」
「こんな絵になる人そうはいないわよ」
「そ、そうよね」
「言われてみればね」
 二人は戸惑ったまま応える。
「あの人確かにね」
「格好いいわよね」
「まあねえ、商業科は男の子選り好みしてたら売れ残るけれど」
「それでもね」
 商業科は女の子の方がかなり多いからだ、男にとってはまさに理想郷だが女の子にとってはサバイバルなのだ。
「美形への憧れっていうかね」
「どうしてもそういうのあるから」
「というかうちの大学って結構格好いい人多いからね」
「剣道部の中田さんとかね」
「乗馬部の広瀬さんとか」
「そういう人達もいいけれどね」 
 そのビクトルもだというのだ。
「ビクトルさん人気よ」
「王子様って言われてるのよ」
「そ、そうなのね」
「そこまでなの」
 二人は今も戸惑いながら応えた。
「あの人大人気だったの」
「皆も知ってて」
「というかね、愛実ちゃんと聖花ちゃんがそうしたお話に奥手過ぎるのよ」
 クラスメイトの一人が右手の人差し指を立ててこう指摘した。
「いつも思うけれどね」
「ううん、よく言われるけれど」
「私達ってそうなのね」
「そうよ、さもないと本当に高校の三年間彼氏なしよ」
「ただでさえ商業科だから競争率高いのに」
「もう男子殆ど全員彼氏いるわよ」
「こっちはサバイバルなのよ」
 クラスメイト達はこの現実を話す。
「商業科の女子っていうだけでね」
「恋愛は青春の最重要要素の一つじゃない」
「だからね、もっとね」
「二人共そっちも頑張りなさいよ」
「ううん、とはいってもね」
「そうよね」
 だが二人はだった、今も微妙な顔で言うのだった。
「恋愛は今はね」
「ちょっとね」
「興味がないっていうか」
「関心が湧かなくて」
「やれやれね、まあこういうことって興味が湧かないとだからね」
「どうしようもないからね」
 クラスメイト達もそんな二人にわかっているが仕方ないといった顔で言う、とはいっても温かい笑顔ではある。
「部活にお友達とお店のこと?」
「それと遊ぶこととかよね」
「そういうので充実してるのよね、今」
「それも凄く」
 話には出さないが泉探しのことでもだ。妖怪や幽霊達とも友達になれている。。 
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