魔法少女リリカルなのは~その者の行く末は…………~
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Chapter-3 Third Story~Originally , meeting of those who that you meet does not come ture~
number-30 biue flame of thuth
前書き
蒼い炎の真実。
この場合は、三桜燐夜。システムU-D。
管制室は、喧騒の中にあった。なぜならこの『闇の残滓事件』で最も警戒、そして、倒さなければならない相手、システムU-Dがリンディの予想よりもはるかに早く海鳴市の海上にて活動を開始したのだ。アラートがアースラ内に鳴り響いているのも、システムU-Dの活動開始を知らせるものである。
リンディは、司令官として常に冷静でなければなかったのだが、今回ばかりは、押し殺すことなく焦っていた。
(くっ……! 読み間違えたわ……。偵察隊の報告ばかりを鵜呑みした結果がこれだわ。やはり、もっと冷静に鑑みて動くべきだったわね……。
ここは、遠くから偵察を繰り返して状況の把握を急ぐべきかしら? それとも、燐夜君を呼んで向かわせるべきかしら? 悩みどころね……)
リンディは焦ってはいるものの、状況の把握に努めて、ひとまずこの状態から抜け出すべきと考えていた。クロノも同じことを考えていたらしく、リンディよりも先に動いて指示を出していた。
クロノは少し硬いが、こういう緊急時の状況判断力にはリンディも舌を巻くものがある。そう思いながら、クロノのおかげで一息つけると気を抜いた時だった。
「艦長! 訓練室から転移反応! 三桜燐夜君が出撃したようです!」
通信士のエイミィからの報告。
それを聞いたとき、リンディは思わずため息をつきそうになった。けれども、今は仕事中。そんなことをするわけにはいかない。すぐに意識を切り替えてモニターに意識を向け始める。
突然の燐夜の出撃に管制室が慌しくなる。それに比例するかのようにフェイトにも落ち着きが無くなって来ていた。その理由は勿論、燐夜の身を案じているのだ。少しでも長く燐夜の隣にいたい。燐夜がどれだけ強くたって、所詮は人。精神まではそこまで強くない筈なのだ。その支えにでもなればとフェイトは思う。
フェイトは、右手に持っていた自分の愛機、バルディッシュを見つめる。インテリジェントデバイスであるバルディッシュは、意思を持っている。だが、それは簡単なものでしかない。それでもフェイトは、バルディッシュに何かを訴えかけた。
デバイスは持ち主の意思を尊重することがほとんどだ。そして、今回もその例の中から外れない。ただフェイトに実行する勇気を持たせるには十分だった。
覚悟は決めた。怒られることだと分かっている。自分は組織の一局員であるから上官の命令には従わなくてはならない。けれども、自分の好きな人が戦っているのにそれを指をくわえてみているだけなんてフェイトには、我慢ならないことだった。
瞳に強い意志を宿したフェイトは、転移ポートへ駆け出した。
「――――駄目よ、フェイト。あなたには待機命令が出ている」
「……それでも私は、燐夜のもとへ行く」
「命令を守りなさい。ここで待機するのよ」
「嫌だ。私の大切な人が戦いに行ったのに、私だけ……私だけ置いて行かれるのは嫌だ。もうあんな思いはしたくないから……」
「フェイトッ!!」
フェイトは、リンディの制止も聞かずに転移ポートからシステムU-Dが出現した位置まで転移していった。
いつも温和なリンディがフェイトを敬称もつけずに呼んだ。そこにははっきりとした上下関係があったのだ。しかし、フェイトはそれに屈しなかった。
――――自分の大切な人のもとに――――
その言葉にリンディは、不覚にも昔を思い出してしまったのだ。もう解決している悲しい事件。愛する人が命と引き換えに守ったミッドチルダの人々――――。リンディはここまで考えて左右に大きく頭を振った。もう過去のこと。今を見据えて、未来を見据えて生き続けていくしかないのだ。フェイトには自分のような思いをしてほしくない。そんな私情も混ざってしまい、あまり強く言えなかった。
それでもリンディは、フェイトが自分の意思を優先してそれを固い決意のもと動き出してくれたことに嬉しさを覚えている。そして、まるで自分がフェイトの母親のような気がしてきた。
――――フェイトの本当の母親、プレシア・テスタロッサ。
彼女は自分の心を偽り続けていただけだった。燐夜と話していてそれを自覚したと彼は告げている。もし彼女が心を偽ることなくフェイトに接していたら……。そんな今となってしまっては、有り得ないことを次から次へと考えてしまう。リンディは、フェイトを養子にすることが不安だったのだ。
「ふうっ……」
いつの間にか関係ないことを考えていた自分を諌めつつ、モニターに目を向ける。今、モニターに映し出されているのは、一触即発の雰囲気を醸し出しているシステムU-Dと三桜燐夜の二人。別のモニターには、その二人がいる場所まで急いで向かっているフェイト。
「リンディさん! 今の警報、何ですか!?」
大声を出しつつ管制室に駆け込んできたのは、なのはとアミティエ、キリエのフローリアン姉妹だった。
なのはは、まだキリエの保護という任務からそう時間が経っていないため、疲労が溜まっている筈なのだが、そんな素振りは見られず、むしろ元気が有り余っているといった印象を受ける。
フローリアン姉妹は、見た目の外傷がなく普通にいつも通りということだった。
なのはの質問にリンディは、簡単に答える。勿論、なのははそれを聞くと、すぐに助けに行こうとする。しかし、それをクロノが止めた。フローリアン姉妹は黙って静観しているが、なのははそうではなかった。道に立ち塞がるクロノに食らい付こうとする。
リンディは、そんななのはを見かねて折れた。燐夜の後方支援という名目の任務をなのはたち三人に発動した。それを即答で受けるなのは。
なのはが率いる形で三人は出撃していった。
リンディは、直接戦うことは今となってはできないが、祈る事ならできる。あの五人に何かあってはいけないと無事に帰ってくることを祈る。
――――クラウドと同じ道を辿らないで頂戴ね……
そんなリンディの切実な願いだった。
◯
少数精鋭でシステムU-Dの撃破。それがリンディとクロノが望んでいること。しかし、指揮官と現場で直接戦っているものとでは、やはり食い違いが出てしまう。それが今回の件では顕著に出ていた。
いや、少数精鋭で撃破という点ではあっているかもしれない。なぜなら、燐夜だけが孤軍奮闘してシステムU-Dと戦っているのだ。
戦い始めてまだ数分なのだが、システムU-Dの背中から出ている手の形をした翼を巧みに使ってフローリアン姉妹を落としてしまった。瞬殺である。正確にはダメージを負って後ろに下がっただけなのだが。
なのはとフェイトは、燐夜が落とされない様に後方から支援しているだけなのだ。燐夜だけが一本ずつ剣を持って互角に渡り合っていた。その体からは蒼い炎が絶えず噴き出している。その炎がシステムU-Dの遠距離砲撃を緩和して、打ち消している。
砲撃が利かないと知るとシステムU-Dは、一気に距離を詰めて肉薄し、魔力を纏わせた拳を燐夜に向かって叩きつける。それを紙一重で回避した燐夜は、右手の銃の形態から剣の状態に変化させたハイぺリオンで斬りかかる。
それをまともに食らったシステムU-Dだが、さほどダメージを受けた様子もなく、燐夜の前にまた現れた。
「この化け物め……!」
「……化け物……それをいうならあなたのその蒼い炎だって化け物」
燐夜にとってみれば、思わず呟いてしまった程度の言葉だったのだが、システムU-Dは、聞き逃すことなかった。そのうえ、燐夜に聞き捨てならないことを言ったのだ。そのことについて問いただすために攻撃の手を休めた。
先ほどまで激しく鳴り響いていた戦闘音が消えたことに疑問を持ったなのはとフェイトが、燐夜の後方10メートルのあたりまで来ていた。
「何だと?」
「あなたのその炎の力は、はるか過去のドラゴン。古代ベルカ時代、覇王を戦乱の中で打ち破り、殺した。そして、数多の人を薙ぎ払った最強のドラゴン。『アルダーヴァレリオン』という。そのドラゴンの力があなたの中に流れている」
「…………そんな馬鹿な。そのドラゴンは子孫を作らなかった筈だっ!!」
「そう。だけど、現実にアルダーヴァレリオンの力はあなたに受け継がれている。それは、どうあがいても今ある真実」
ここにきて、今まで謎に包まれた力の正体を明かされた。その内容は、あまりにも衝撃的で。精神で理性を保っていた燐夜にショックを与えるのは簡単だった。
噴き出していた蒼い炎がより一層強さを増し、燐夜は理性を失った。暴走したのだ。
本能の赴くままに戦い始めようとする燐夜。それを何とかして抑え込もうとするなのは。流石に危険を察知して離れようと燐夜のもとに行こうとするなのはの腕をつかんでゆっくりと後ろに下がっていく。
システムU-Dは、本能だけになった燐夜に危機感を抱いたため、再び襲いかかった。
燐夜とシステムU-Dの戦いは、さらに激しさを増していく。一度二人がぶつかり合うと周囲に衝撃波が同心円状に広がっていく。その衝撃になのはとフェイトは、押し出されそうになるも何とか相殺し続ける。だが、二人は退却しようとは思わなかった。暴走しても燐夜は燐夜なのである。少しでも何かできることがあればと思いつつ、何もできないことに苛立ちを覚えながら燐夜とシステムU-Dの戦いを見る。
そんな二人にはお構いなしに次々とぶつかり合っていく燐夜とシステムU-D。
二人がぶつかり合うたびに海が大きく荒れる。波がだんだん高くなっているような気さえもする。
燐夜が砲撃を放つとジャベリンを作り出し、打ち消すシステムU-D。逆にシステムU-Dが砲撃すると燐夜から絶えず噴き出している蒼い炎がそれを呑みこんでいくように消してしまう。
やはり遠距離は無駄と判断すると、お互いに同じことを考えていたのか、同時に相手に向かって飛んでいく。その速度も尋常ではなく、辛うじて肉眼で捉えられるかといったところだ。
真正面から燐夜は蒼い軌跡を作って、システムU-Dは赤黒い軌跡を作ってぶつかる。今度は離れようとはせずに、至近距離のまま戦う。
燐夜は二刀流の利点をうまく使い、欠点を補うように巧く戦っている。システムU-Dは、自分の手のほかに背中にある翼も使って四本の手を連続して叩き込み続ける。
互いの攻撃がクリーンヒットすることはなかった。それでも、時々攻撃が掠って蒼や赤黒い何かが飛び散っていくように消えていく。翼を使って燐夜を包み込もうとするが、燐夜は声を上げて左手に持っているアレスを大きく横に振ると斬撃が飛んで、その斬撃を翼で抑え込む形になった。システムU-Dはそれを煩わしそうに翼で押し潰すように掻き消した。
もう一度言っておくが、二人がぶつかり合うたびに音の衝撃、空気の衝撃が辺りを襲っているのだ。それだけでなく、無駄と知りつつも遠距離からの砲撃戦も行われるのだ。当然、流れ弾も飛んでくる。
離れているとはいえ、まださほど離れていないなのはとフェイトに襲い掛かるのだ。
頑張って耐え凌いでいたが、とうとう押し返されてしまう。二人揃って近くの岩場に叩きつけられる。悲鳴と共に激突。そのあまりの衝撃でなのはとフェイトは意識を手放した。
◯
「なのは、なのは。しっかりして、なのは」
「……んう? あっ、フェイトちゃん」
どうやら先に目を覚ましたのは、フェイトのようだった。すぐ隣に横たわっていたなのはを起こしたフェイトだが、すぐに意識は周りに移った。
なのははやたらと辺りを警戒するフェイトに疑問を抱いたが、それを質問することはなかった。なぜなら、今自分たちがいる場所はどこかの家であった。しかも、その景色の色がなかった。なかったというのは言い過ぎではあるが、モノクロであったのだ。
しばらく気を緩めることなく、警戒を続けていたが、あるドアが開いてそこから女性が出てきた。
「燐夜ー! ご飯よー!」
「はぁーい!」
間髪入れずに返事を返して出てきたのは、燐夜と呼ばれる幼い男の子だった。
「も、もしかして、燐夜君の過去の記憶なの……?」
「……うん。信じられないけど……そうみたいだね」
後書き
すいません……最近、忙しいものでパソコンに向かう時間すら失っている状態でして……。
慌しい生活が安定して来たら、またそこそこの速さで投稿していきたいと思います。それまでは、月1で更新できるか……。
4月になったら、元に戻る筈なのでそれまで気長にお待ちください。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
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