気まぐれな吹雪
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第一章 平凡な日常
41、豪華客船やで
《まもなく、豪華客船リボット号が出港いたします》
船内アナウンスが流れる。
遂に、リボーン一行を乗せた豪華客船が日本を出港した。
さて、ここで疑問を持った人は何人いるだろうか。
この船の名前、どこかで聞いたことがある気がしないか。
「これ、自分の名前もじったんちゃう?」
「ピンポーン」
「お前なぁ!」
あっさりと気づいてしまった千鶴だった。
と言うことで、奈々・京子・ハル以外のメンバーにネタバラしが始まった。
「この船はな、実はマフィアのための船なんだぞ」
「はぁ!?」
「マフィアのための船?」
「ああ。そしてこの船が向かっているのが、マフィアのマフィアによるマフィアのためのリゾート地、マフィアランドだ。多くのファミリーからの融資を集めて作られたその島に直通する唯一の船だぞ」
『へー』
納得する面々だが、千鶴の前でマフィアの話をしても良かったのだろうか?
それに気づいたツナが突っ込むも、千鶴の答えは『なんや意味わからへんけど、面白そうやん』であった。
さすがは関西人クオリティ。
「あ、そや。要に写メ送らんとな」
言うが速いが、ケータイを取り出すと船内を撮影しまくる。
そしてそれを片っ端から要へと送りつけていく。
そんな彼女に、ツナはずっと気になっていたあることを聞いてみることにした。
「ね、ねぇ榊原さん」
「千鶴でええねんて。何や?」
「うん、あのさ、オレってやっぱり霜月さんに嫌われてるのかな?」
それは、去年からずっと思っていること。
なんだかいつも態度がそっけない。
なんだかいつも必要以上の会話をしていない。
それは、山本や雲雀、千鶴と比べれば一目瞭然の差である。
隣人であるはずの自分とのこの差が、ツナにこの思いを持たせていた。
「んー……。ウチが思うに、自分は嫌われてへんで」
「え!? じゃあどうして」
すると千鶴は、ちょいちょいとツナを引き寄せる。
そして小声で耳打ちした。
「あいつが嫌いなんは、リボーンと長谷川や」
「リボーンとやc……むぐ」
「自分、声でかいわ」
「ご、ごめん」
謝りながらツナは考える。
要が嫌いなのは自分ではなくリボーンとやちる。
彼女が自分に近づかないのは、この二人がいるから?
要がこの二人を嫌いになる理由だったらいくらでも思い付く。
なんだか納得できた。
「ついでやけど、自分は要とどうなりたいんや? このままの関係でええのか、仲良くしたいんか」
「え、オレ? オレは……そりゃあできることなら仲良くしたいとは思ってるけど」
「なら努力や。いっぺん自分の立場を取っ払って接するのが一番や。リボーンとか引っ張ってるからあの子はついてきぃひんのや。いっぺん『一中学生の沢田綱吉』として接してみぃや」
「ただのオレとして……」
ツナは考える。
どうすれば山本たちのように要に接することができるのか。
どうすればリボーンの支配外で要に近づけるのか。
その肩に、そっと手がおかれた。
「とにかく今は楽しもうや。せっかくの旅行やし、何より、自分の好きな京子もいるんやしな」
「なっ//////」
「分かりやすいのぉ」
ケラケラと笑いながら、千鶴は走り去ってしまった。
ツナは顔を真っ赤にしながらその場に佇んでしまう。
その様子はあまりにも滑稽だったとか。
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