めだかボックス 〜From despair to hope 〜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第37箱 「俺のなりたいもの……。 それは……。」
善吉は鹿屋先輩に連れられて、校舎の屋上へと来ていた。
そして 話しの内容を聞く。
「……黒神めだか襲撃計画?」
……そう、めだかちゃんを文字通り襲撃しようとする計画だったのだ。
「あぁ、 今 有志を募ってるんだよ。人吉君も一口乗らねーか?」
鹿屋先輩は爪切りで手入れをしながら話しを進めていた。
何故今?家できっときなよって思う。 苦笑
「ちょっとキツい冗談ですね この腕章が見えないんですか? どー考えても 誘う相手間違ってるでしょ?」
善吉は、庶務の腕章を見せながら言う。
そう……何を隠そう善吉は誇り高き庶務!!……です。 苦笑
鹿屋先輩はその言葉に一笑。
「いやあ 間違えちゃいねーさ 生徒会庶務とかいって結局はバケモン女のパシリやらされてるだけじゃねーか 入るときもかなり抵抗したって聞いてるぜ。部活荒しもありゃお前なりのストレス解消法なんだろ? それとも生徒会辞めたいって意思表示か?」
そう言うと、鹿屋はそのまま立ち上がった。
「何の見返りも無く 尻に敷かれて良いように使われて お前だって本当はムカついてるはずだぜ!それなら今のうちに俺についとけよ!あのバケモン女は俺から力ずくで生徒会長の座を奪ったんだ!だったら 力ずくでの下克上もアリだろうが!!」
鹿屋先輩は“がーーっ!!”と吠えてた。
どうやら、よっぽど酷い思いをしたんだろう。
でも、善吉は決して同情はしないようだ。
「……ありゃ アンタが女子を脅して票を集めようとしたからでしょうが 自業自得ですよ。」
……そういうことだ。
それは事実。
勿論女子を脅す!など、男がすることじゃない!っとめだかちゃんが成敗をしたのだ。
でも…鹿屋先輩は全く通じるはずも無く。
「ハッ!良い子ぶってんじゃねーよ 人吉君!俺はこれでもお前を買ってんだぜ お前みたいな頑張り屋さんが埋もれていくのを見てられねーんだよ。お前にだってなりたいモンがあるんだろ?」
その言葉に善吉は言葉を濁し少し考えていた。
「なりたいもの…ですか…」
≪自分がなりたいもの≫その言葉だけ少しだけ、善吉の頭の中を廻っていた。
「今日の放課後作戦会議をやっからよ こっちに寝返るならそれまでにな なぁに 例えお前が裏切っても、あの女にはヤサ男もついてるだろーし 気にもしねーだろーよ。」
鹿屋先輩は、そう言うと、屋上から立ち去っていった。
善吉は考える。
ヤサ男……について。
そして直ぐに解った。
「ヤサ男?…ああ 成程、劉一のこと……だろうな。……随分抜けてると言うか……馬鹿だな。劉一は俺よかよっぽどつえーのに。でもまぁ、アイツはこんな話しにゃ100パーのらないだろうが… それに 何よりも根性なしだしな。 なんにしても……。」
そう呟くと、善吉は頭を抱え。
「はあーあ!めんどくせーことになってんなあ!」
今後起こる事を想像するだけで頭が痛くなる。
善吉は項垂れていた……。
その時だ!
「いや めんどくさくなど無い 実に心踊る展開だ!」
「…根性無しで悪かったね…」
聞き覚えのある声が二種類。
そう……善吉の後ろにいたのは≪あいつら≫だ!
「…………いつからいたの?」
そう……我らが生徒会長とその補佐だった。
「「最初から…」だ!」
めだかちゃんは胸を張ってそう言い、 劉一は少し拗ねていたようだ。
「……僕、善吉に付き合ってあげてるのに、そっか~ 根性なしかぁ〜 ふ〜ん…」
“ムスッ…”
それは、まるで絵に描いたように拗ねていた。
「……じょーだんだって劉一。本気にすんな!それとも何か? お前はめだかちゃんを襲撃する根性あんの?」
劉一はそう言われると“ピクンッ!”っと身体を震わせた。
そう言われたら劉一は答えは1つしかない。
「それもまた…心踊るな!確かに多少は複雑だ。だが!劉一と本気の勝負が出来るのだからなっ!」凛っ!
めだかちゃんが笑ってます。
それはそれはとても素敵な笑顔でです。
「うぅ……カンベンだよ。 大体僕はそんな根性要らないよ!」
劉一は顔が引きつってます…。 苦笑
子供の時の再来になりかねないから!
「むう… 本気の貴様と私は戦ってみたいのだがな……。」
対照的にめだかちゃんはすっごく残念そうだ。
でも、そんな表情をしても駄目って劉一は言っていた。
「まあ 劉一の件はおいといても… 嫌われたもんだな めだかちゃん。」
もう 劉一の根性なし!の件は終わりみたいだ。
( まあ いっか…特にめだかちゃんに 絡まれちゃかなわないし…)
劉一は、そう思っていた。
めだかちゃんにボコボコにされるくらいなら根性無しのレッテルを張られる方が良いみたいだ。 苦笑
「ふん……。構わんさ もとより私は人から好かれようと思っておらん 私が人を好きであらばそれでよい!だが、もちろんそれには、例外はあるぞ!」凛っ!
「……ん?」
めだかちゃんは劉一のほうに視線を送ってる。
でも、解ってない劉一は、≪なんだろ?≫って顔をしていた。
次第にめだかちゃんの顔が近づいてきて……。
「だから、≪れ・い・が・い≫はあるぞ!!」
もう、瞬速で!近付いて来た!!
「はっ!!はい!」
劉一は その剣幕と眼力に思わず敬礼をしていた。
「ふむ!そして 下克上を受けて立つのも王の務め・・・ 余計な真似をするでないぞ 善吉!」
そう言って…めだかちゃんは何処かへと。
片手に劉一を引きずりながら。
「……って!め、めだかちゃん??ちょっ!なんで!!」
「先ほど 不知火と仲よさそうにしていたのが不愉快だったんでな! ちょっと付き合え!劉一!!」
ずる・ずる・ずーる♪ずーーる♪
「えええ!何もないよ〜〜!不知火ぃ!!めだかちゃんに何言ったの!?」
劉一は、引きずられながら叫んだ。
めだかちゃんは劉一のほうを見ると。
「何も言ってなどおらん! 教室をのぞいたら貴様が楽しそうに不知火と話していたのが≪多少≫!!気になったのだ!」
ほんとに多少???って聞きたい。
ああ……聞きたい。
でも、めだかちゃんは劉一を“むんずっ!!”っと摑みなおすと。
「ひゃああぁぁぁ……!」
そのまま、劉一を引きずっていった。
“バタン………”
扉も閉まってしまったから、劉一の叫びももう善吉には届かなくなっちゃった。。
「まぁ、ドンマイだな……。」
善吉は思わずそう呟いていた。
……簡単に説明すると、めだかちゃんは敵さえも好む。
支持率98%と言えば聞えは良いが その数字は2%の反乱分子を意味している。
実際には選挙に参加してなかったであろう日向や門司先輩とは違い。
選別の結果めだかちゃんを支持しなかった層が確実に存在する。
しかし、めだかちゃんはその全てを受け入れる。
そして、そんな何でもできる幼馴染を……自分は……。
【会議室】
そこでは、鹿屋が集めたメンバーが数名揃っていた。
「鹿屋さーーん!エモノはこれくらいありゃいいですよねえ?」
鹿屋が言っていた有志のメンバーが武器をどっさりと持ってきた。
本当にどっさりとあるが、鹿屋の表情はうかれない。
「………いや この倍は欲しいな それともっと長ェの沢山そろえとけ!」
釘バットやら鉄パイプやらを確認しながらそう言う。
「警戒しすぎじゃないスか?いくら化物じみてるっても相手は女でしょ?」
メンバーの1人は 笑いながらそう言うけれど。
鹿屋はめだかちゃんにコテンパンにされた事があるゆえに。
「馬鹿野郎ッ!化物じみてんじゃねえ!化物なんだよ!アイツは!! おい!ンな事より あのバケモンの弱点とか聞いた事ねーのか!!」
その剣幕に皆ビビりながら、いろいろと話すけれど。
やっぱり、 どれも信憑性にかける。
“ ドガアアア!! ”
纏まらない意見にイラついた鹿屋は机を殴りつける。
「チッ!使えねーな!てめーらがそんなんだから 俺が選挙に落ちちまうんだろうが!!」
そう 怒鳴りつけていた。
当然……ますます皆ビビっちゃって……。 苦笑
襲撃する!っと言う気配じゃなくなってしまっていた。
そんな時。
“ガラッ……”
善吉が入ってきた。
「おお!人吉君!いやー遅かったじゃねーか、待ってたぜ……って え?」
善吉は入るや否や鹿屋には目もくれず、凶器の入った箱を見てそちらへ。
そして。
“ドガッ!!”
そのまま、 箱を蹴っ飛ばした!
「…………こりゃあ何の真似だよ。」
流石にこの行動は怒りに火をつけたようだ。
「………。」
善吉は 少しため息をつき
一瞬だけ鹿屋を睨み、そして背を向けた。
「めだかちゃんは アンタ達みたいな連中でも大好きだし アンタ達が何したところで傷1つ負わないでしょうよ。 だけど 知っちまったらこうせずにはいられない 1人で何でも出来る幼馴染を俺は放っておけないんですよ。」
散らばれた武器を見つめる…
「鹿屋先輩 なりたいものくらいあるだろうって言ってくれましたよね?俺はね… めだかちゃんを≪守れる奴≫になりたいんですよ。そして ≪アイツを超えれる男≫にもなりたい… ハッ!なりたいもの… けっこーあるみたいだわ俺。」
善吉はそう言い、最後の方は苦笑いしていた。
そして対照的に鹿屋は怒り心頭だ。
「ハァ!?わっけわかんねえ!!だから!!」
思いっきり釘バットを振りかぶる!
「これはいったい何の真似だってんだよ!!!」
一気に善吉の頭上目掛け振り下ろす!!
……が!!
「余計な真似だよ!!」
“ドガアアアア!!”
善吉!後ろ回し蹴り炸裂!!
「アンタたちには改心する暇も与えない!明日からは頑張って噂を流してくださいよ。 生徒会長の側にいるのは… 劉一だけじゃねえ… 凶暴な番犬がいるってな!」
鹿屋を吹き飛ばしたが、まだメンバーは多くいる。
そして、リーダーを蹴っ飛ばされ、流石に黙っていられないようで、善吉の周りに群がってくる。
だが、そんなもの、ものともしない善吉。
「それでは これより 一身上の都合上に基づき!生徒会を執行する!!」
善吉に迷いは無いようだ!
その後…どうなったのか…はもちろん。
善吉だって、めだかちゃんと何年も過ごしてきたんだから。
ずっと……傍にいたんだから。
そんな卑怯な連中になんか負けないんだ!
柔道部 side
場面は変わり、場所は。
【柔道場】
そこでは 部員が今日も汗を流している。
「やっぱ柔道部には来てくれへんみたいやねぇ… 噂の部活荒らしクン達!」
その部員の中の1人が組み手をしながら呟く。
「ビビったんですよ!きっと ホラ 俺ら一応全国区だしィ!」
そして、一緒に組み手をしている部員がそう言っていた。
でも、その言葉に首を振る。
「ダァホ そんなん個人戦での話しやろ? ちゅーか、まあ それ言い出したら そのコらは、何のために部活荒らしなんかやっとんねんゆう話になるけどな」
笑いながらそう言っていた。
そこに…
「……あれは ただの健気なパフォーマンスですよ。黒神めだかの側にいていいのは俺だけだと ありもしない強さをひけらかしているつもりなんでしょう。でも、俺はもう1人の男は知りませんがね。」
汗を拭きながら何やら、全体的にキラキラした感じの美男子がそう言っていた。 苦笑
「なーんや?阿久根クン しっとんか?その1年生の片方?」
そう聞くと…
「はい。その片割れ…… 人吉善吉は小さな害虫です そして 黒神めだかは俺の花です。」
花と害虫ときたか。 なかなかユーモアだ。 苦笑
その男子部員の名は…
~~~~~~~~~~~~~~~~~
☆阿久根 高貴☆
所属: 二年十一組
性別: 男
血液型:AB型
資格: 柔道二段
~~~~~~~~~~~~~~~~~
side out
めだかちゃん side
場所は再び変わり。
【生徒会室】
そこで……某会長と補佐はと言うと。
「……むっ誰も来ないぞ!?劉一!」
腕を組みながらずっと生徒会室で待っていた。
「……めだかちゃん 誰かの誕生会でもするの? このご馳走と飾りつけ… シャンパンまで用意してさ…?」
確かに下克上??大歓迎だ!!っていうのはわかる。
でも、こんなパーティするような気配じゃないって思うのだ。
「私に向かってきてくれるのだぞ?歓迎してやらねばならんだろう!」
「はあ… そだね。」
劉一は、諭すのを諦める。
それは逃げるのはもちろんだし、めだかちゃんを論破するのも無理だ。
劉一は、実は両方最初っから無理だと判断していたようだった。
ページ上へ戻る