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万華鏡

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第四十七話 運動会が終わってその八

「想像してみてよ、心臓に悪いでしょ」
「ううん、寝不足の時に朝のニュースで見て胃にくる顔だからな」
「一発で来るからな」
「ちょっとやり過ぎか」
「もっと考えた方がいいか」
「インパクトあり過ぎなのもか」
「あれは劇薬よ」
 そこまで至る驚異の顔だというのだ。
「まさにね」
「確かにな、それじゃあ」
「これは止めか」
「将軍様はな」
「父子共演もな」
 男子の一人が看板を見て言う、今もクラスの壁の後ろに掲げられているがそこの将軍様は健在なままである。
「まあ確かに怖過ぎるか」
「だよな、劇薬だな」
「何処かのゾルゲみたいだよな」
「あれも怖かったな」
 二人で合体する超人の敵だ、どれも驚異の不気味さだった。
「前の将軍様そんな域だしな」
「夜道で前に出てきたら本当に怖いな」
 まさにショック死するまでだ、ましてやそれが裸で団体ともなると。
「やっぱりまずいか」
「止めておこうな」
「もっとマイルドにいくか」
「普通でいいんじゃないの?」
 琴乃はあらためてこう提案した。
「普通のお化け屋敷で」
「普通ってどんな感じ?」
「どんなのがいいの?」
 今度は女子達が言う、教壇のところにいる進行役の男女のクラス委員達も興味津々といった顔でやりとりを見ている。ただし先生は立って見ているだけだ。
 その中でだ、琴乃は言うのだった。
「普通に幽霊とか作りものの首が置いてある」
「そういう感じ?」
「夜店のお化け屋敷みたいなの」
「ほら、住吉神社とか八条神社に出るみたいな」
 琴乃も関西人だ、だから住吉神社の名前も出したのだ。
「ああいうのでどう?」
「住吉のは怖いわよね」
 女子の一人が言った。
「あれは」
「そうでしょ、お正月の出店の中にあるね」
「あれは確かにね」
「あとね」
 ここで琴乃はさらに言う。
「出店じゃないしもうないけれど」
「ない?」
「ないっていうと?」
「これお父さんから聞いたけれど」
 また聞きだ、だがそれでも話す琴乃だった。
「奈良にあったあやめ池遊園地のね」
「ああ、そんな遊園地あったよな」
「もうないわよね」
「いい遊園地だったらしいな」
「今住宅地になってるのよね」
 残念ながらなくなってしまった、もうあやめ池も伏見桃山城も近鉄劇場も近鉄百貨店京都店も近鉄バファローズもない、近鉄グループに残ったのは年間十億円の赤字を生み出す火薬庫だけとなってしまった。
 その今はないあやめ池遊園地にだ、何があったかというと。
「そこのお化け屋敷がね」
「凄く怖かったの」
「そうだったの」
「そうなの、これも今はないけれど」
 琴乃はさらに話す。 
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