万華鏡
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第四十七話 運動会が終わってその七
「一家いるしね」
「一人じゃないから」
「あの一家に囲まれたい?」
琴乃は真顔で四人に問うた。
「妖怪と言っても普通のレベルの妖怪じゃないでしょ」
「確かに、もうね」
「ゲゲゲの、だと毛を飛ばされるレベルよね」
「それかちゃんちゃんこか下駄か」
「もうそんな域だよな」
「そうでしょ、あれも怖過ぎるのよ」
だから問題だというのだ、俗にキモ可愛いと言われるが夜道で会えば子供が泣き出す代物のキャラである。
それでだ、琴乃はまた言うのだ。
「今本当にそういうのが出そうだから」
「洒落になってないのね、琴乃ちゃんにしては」
「そうなのね」
「最悪何かね」
ここでこうも言う琴乃だった。
「髭だらけ毛だらけのがっしりした体格のガチムキ白ブリーフ男登場とか」
「嫌な意味で刺激的ね」
「本当に」
聞いていればだ、本当にだった。
そうした話をしつつだ、五人はそれぞれ話したのだった。
そして次の日だ、琴乃はクラスのホームルームで文化祭の催しの話をしようという時にだ、早速手を挙げてこう言った。
「お化け屋敷にしない?」
「ああ、お化け屋敷」
「それか」
琴乃の提案にまずは男子生徒達が応える、彼等は女子の話をあまり聞いていなかったのでそれで応えたのだった。
「いいよな、じゃあな」
「よし、ここは凄いのいくか」
「ゾンビとかな」
「この前死んだあの将軍様とかな」
女子達の話を聞かずに全く天然でだ、こう言う彼等だった。
「ああいう気色悪いのでいいよな」
「あの将軍様気持ち悪い顔してたからな」
「もう十人位出してな」
「しかも裸だといいよな」
「下は白ブリーフ、革靴に黒ナイロンの靴下な」
「首にはネクタイだけでトレントコートを脱いでバッ、とかな」
最早変態のそれだった、妖怪というよりも。しかしそれでも彼等は笑いながらこう話していくのであった。
「よし、じゃあな」
「それでいくか」
「そうするか」
「先代将軍様な」
「あのおっさんのゾンビな」
「却下にしない?」
琴乃は彼等に言った、男子達の話ににんまりとなっているそのクラスメイトを見ながら。
「そういうアブノーマルじゃなくて」
「何だよ、インパクト凄いじゃないか」
「誰でも知っている顔だしな」
本当に誰でも知っている、誰でも知っている顔といっても美形であるとは限らない。そうではない顔でもそうなるのだ。
「だからいいだろ」
「裸の将軍様のゾンビが団体で襲い掛かってきたら怖いだろ」
「一発で学園の話題独占だろ」
「怖過ぎるからな」
それでいいとだ、彼等も言うのだった。
「折角いいアイディアだと思うんだけれどな」
「男でもあの将軍様が裸で団体で来たら怖いぞ」
「一生忘れられない位にな」
「だからいいだろ」
「面白い考えだろ?」
こう話す彼等だった、だが。
琴乃は強引にだ、こう彼等に言った。
「駄目に決まってるじゃない、本当に心臓止まる人出て来るわよ」
「怖いうえに気持ち悪くてか」
「インパクトあり過ぎか」
「あのね、暗がりで出て来るのよ」
裸のあの顔がだというのだ。
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