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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第124話

後ろに麻生が立っている事に気がついた上条は、ユミナ達を守るように前に出る。
それを見た麻生は小さくため息を吐いた。

「そこをどけ、当麻。」

「どいたら、お前はユミナさんを殺すだろ。」

「そうだ。
 だが、殺すのはそいつだけだ。
 ナタリアには何もしない。」

「それじゃあ、意味ないんだよ!
 ナタリアさんが生きても、ユミナさんが死んだら駄目なんだよ!」

上条と話しても無駄だと分かった麻生は、後ろに立っているナタリアに話しかけた。

「おい、ナタリア。
 お前はどうだ?
 そこにいるのはお前の知っている母親じゃない。
 それでも、庇うというのか?」

「此処にいるのは私のお母さんです。
 だから、貴方に明け渡すなんてできません。」

ナタリアの言葉を聞いて、麻生は少し驚いた顔を浮かべた。
だが、その後に面倒くさそうな顔をする。

「おい、お前もなんか言ったらどうだ?
 さっきは自分から命を差し出したが、今も差し出すつもりはないのか?」

幾ら周りが何と言おうが、ユミナ自身が決めたのなら何も言えないだろう。
さっきのユミナの行動を見て、自分から来るだろうと思っていた麻生だったが。

「いいえ、私もナタリアと生きていきたいのです。
 ですから、この命、簡単には差し出す事はできません。」

「・・・・・・・」

今度こそ、本当に心の底から面倒くさそうな表情を浮かべ、ため息を吐いた。

「お前達がいらんことを言うから、こうなったじゃないか。
 まぁいい、これも一応想定していた事だ。
 面倒なのは変わりないが。」

そう言って、剣先を上条達に向けて言った。

「さっきも言ったが、お前達を倒してそこの死徒を殺させてもらう。」

「ッ!?
 逃げるぞ!!」

一瞬、何かとてつもない何かを感じた上条は、ユミナの手を取り、路地裏から大通りに移動する。
まるで、ゴーストタウンになったかのように人の気配が全くない。
すると、上条達の頭上を影が通り過ぎる。
その影は言うまでもなく、麻生だ。
麻生は上条達を飛び越え、前に立ち塞がる。

「お前達も驚いただろ。」

「やっぱり、これはきょうすけがやったんだね。」

「そうだ。
 此処を中心とした、半径数キロに特殊な結界を張った。
 人払いと昏睡、あと索敵だな。」

「それだけの結界を短時間で展開するなんて。」

「できなくはない。
 使い魔を召喚して、そいつらに結界の拠点を作ってもらう。
 そうすれば、俺一人でも短時間で張る事ができる。」

「私達をすぐに追いかけなかったのは。」

「そうだ、その準備をしていたからだ。
 人混みに逃げられては、面倒だからな。」

再び麻生は、上条達に剣先を向ける。

「諦めろ、お前達がどこに逃げようと、この結界の範囲内なら俺は手に取るようにわかる。
 加えて、結界内にいるのならお前達を絶対に逃がさない。」

麻生の言葉を聞いた、ユミナは前に立っている上条を押し退けて、前に出ようとする。
このまま自分が居れば、迷惑がかかると思ったのだろう。
さっきまで、生きると決めたが、それが原因で上条やナタリアが傷つくのは見たくはない。
だが、前に出ようとした時、上条が手を出して止める。

「ナタリアさん、生きるって決めたんだろう?
 なら、最後まで諦めるな。」

上条はそれだけを言うと、麻生に近づいていく。
四メートルの幅を開けて、上条は足を止めると、拳を握りしめる。
それを見た麻生は眉をひそめる。

「お前、まさか。」

「そうだ、お前がユミナさんを殺すっているのなら、俺がお前を止める。」

「ま、待ってください!
 貴方達が戦うなんて!」

「止めても無駄だよ。
 ああなったとうまは、誰の言う事を聞かないんだから。」

「でも、私の命の為に戦うなんて。」

「それ、とうまが聞いたら凄く怒るよ。
 ユミナさんは生きるって決めたんなら、命をそんな軽々しく捨てるな!、ってとうまは言うよ。」

インデックスがそう言うと、ユミナはまだ何か言いたそうな顔をするが、言葉を呑み込む。
そして、麻生と上条に視線を送る。

「お前がそっち側にいるのならこうなると思っていた。」

そう言うと、麻生は手に持っていた剣を地面に投げ捨てる。
上条は小さく首を傾げた。

「何で、武器を捨てたんだ?」

「これは黒剣と言ってな。
 浄化っていう意味の籠った概念武装だ。
 吸血鬼相手にはよく効く武器でな、お前の右手なら一撃で破壊できるだろう。」

「てことは、普通の武器でも出すつもりか?」

「いいや、俺は能力は一切使わない。」

「は?」

上条は一瞬、麻生の言っている事がよく分からなかった。

「理解できなかったか?
 俺は能力は一切使わない。
 身体に刻んである戦闘経験も今だけ、無くしてある。
 今の俺は本当にただの一般人Aだ。」

理由が全く分からなかった。
そんな事をして、麻生に何の得があるのか全く分からない。

「どうして、そんな事を?」

「お前と対等に戦う為だ。
 ただ、それだけだ。」

そこで上条はようやく気がついた。
麻生の能力を使えば、ユミナが死徒だと分かった時に、すぐに殺す事ができた筈だ。
それなのに、最初は見逃し、結界なんて回りくどい事を真似をした。
麻生が本気を出せば、結界なんてなくても誰にも見つかる事なく、殺せた筈だ。
今、この瞬間にもユミナだけ殺す事が出来る筈なのに、それをしない。
それは何故か?
理由は麻生にも分からない。
ただ上条がユミナを守る為に戦うのは目に見えていた。
だからこそ、麻生は決めたのだ。
上条が前に出て来た時は、能力を使うことなく倒すと。
誰に言われた訳でもなく、自分でそう決めたのだ。

(自分から面倒な事にするなんて、俺は馬鹿だな。)

本当に馬鹿な事をしている、と自分に呆れる。
理由は分からない。
けど、こうしないといけないと麻生は思った。
じゃないと、後悔すると。
麻生も拳を握り、構えをとる。

「ユミナを助けるのなら、俺を倒すんだな。」

「言われなくてもそのつもりだ!」

麻生の言葉と同時に、上条は麻生に向かって走り出した。 
 

 
後書き
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