とある星の力を使いし者
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第121話
ナタリアの家を出た麻生達。
上条はさっき起こった出来事を聞く為に、前に歩いている麻生に聞く。
「恭介、一体何をしたんだ?」
「俺の能力を使って、ユミナさんの身体に干渉して、病気を治したんだ。
それだけだ。」
それだけと言うが、現代の医学では治す事は不可能とされている病気を治したのだ。
普段ならその事を聞いて驚くのだが、上条は笑顔を浮かべながらそれを聞いていた。
それを見た麻生は怪訝そうな顔をして言う。
「何を笑っているんだ?」
「いや、確かに驚いたけど、ユミナさんが助かった事は事実だからな。」
「うん、私もそれは良かったよ思うよ。」
上条の隣を歩いているインデックスも上条の言葉に賛同する。
「でも、意外かも。
きょうすけって、自分から人を救う事はあんまりしないから、ちょっと驚いた。」
インデックスの言葉を聞いて、上条は大覇星祭の時の土御門の言葉を思い出した。
(いいか、カミやん。
あいつは自分に被害を受ける事が分かったら動くが、被害がかからないと思ったら動かないぜよ。
気まぐれで被害関係なく動いてくれる事もあるが、よほどの事がない限りないだろうにゃー。
後、自分が守るべき存在に危険が及ぶ可能性が出た時と、動く場合の理由が限られてくるにゃー。)
今回の一件は麻生に被害が及ぶことはまずない。
麻生が守るべき存在というのが分からない上条だが、それも被害が及ぶ事は無いに等しい。
なのに、助けたのには何か理由があるという事だろうか?
それが疑問に感じた上条は麻生に聞く。
「なぁ、どうして助けようと思ったんだ?」
「私も聞きたいかも。」
二人の言葉を聞いた麻生は、ちょうど橋を渡っていて、その中央で足を止める。
既に日は落ち始めており、橋からは綺麗な夕焼けが見える。
そして、麻生は夕焼けを見つめながら静かに話し始めた。
「お前達、俺の母さんの事は知っているな?」
「ああ、秋葉さんだろ。
それがどうかしたのか?」
「実はな、母さんは重度の病気にかかって死にかけた事があったんだ。」
麻生の発言に二人は眼を見開く。
「あんなに元気な秋葉さんが。」
「まぁ、信じられないと思うが事実だ。」
その事について思い出したのか、少し笑みを浮かべる。
「俺がまだ中学にいた時の事だった。
突然、先生に呼ばれて、聞かされた内容は母さんが家で突然倒れたって聞いた。
俺は学園都市を出て、母さんが入院している病院に向かった。」
そのまま麻生は言葉を続ける。
二人はそれを黙って聞いている。
「癌だった。
何でも、前々から症状は出ていたらしいんだが、俺や父さんに心配をかけたくないからって言って無理をしていたんだ。
倒れた時には手遅れで、身体中に転移していた。
医者にはもう治す事はできないと言われて、父さんは大泣きした。
今思えば、冥土返し(ヘブンキャンセラー)にでも頼めば、完治できたかも知れないがな。
話が逸れたな。
ベットに寝ている母さんは、病気で苦しいにもかかわらず、泣いている父さんを慰めた。
その時の俺は何をしていたと思う?」
「えっと・・・・一緒に泣いていたとか?」
「全く違う、俺はな病室の扉の前でただ立っていただけだ。
父さんと母さんのやり取りを黙って見ていただけ。
涙なんて一つも流していない。
でも、母さんはそんな俺を見ても、優しく笑ってこう言ったんだ。」
『ごめんね、恭介さん。』
「ごめんね、って言ったのか?」
「何でそう言ったのか今でも分からない。
けど、あの時の俺はそれが何かに響いたんだろうな。
俺は能力を使って母さんの身体中にある癌を全て消滅させた。
あの時の俺からしたら、本当に想像もできない行動だったな。
その後、二人は泣きながら抱き合って、無事に退院で今に至る訳だ。
ユミナさんを見た時、病院で寝ている母さんを思い出してな、それで助けただけだ。」
そこまで話した麻生は、何かに気がついたのか上条とインデックスの顔に、視線を送りながら言う。
「どうして、こんな事を話す気になったんだ?
何よりユミナさんを助けた理由を明確に言っていない気がする。
何がどうなって・・・・・」
何かぶつぶつ呟きながら、麻生は再び歩き出した。
自分でも、なぜこんな話をしたのか分からないのだ。
「ねぇ、とうま。」
「ん?」
「きょうすけって、意外に分かりやすいかも。」
「俺も土御門に言われた時はよく分からなかったけど、確かにあいつは分かりやすいかもな。」
何となくだが、二人は麻生がユミナを助けた理由が分かっていた。
麻生が秋葉を助けたのは、単に母親を失いたくないと無意識に思ったからではないだろうか?
そして、ユミナを助けたのは、その時と同じ気持ちが芽生えたから、助けたのだろう。
あの親子は少しだけ、自分の親と同じ境遇だったからこそ、助けた。
そんな単純な気持ちに麻生は気がついていない。
麻生は変わっていた。
それも良い方向に。
(あいつ、何だかんだで鈍感なんだな。)
上条も人の事は言えない事を思う。
「って、俺達もこんな所で突っ立っている場合じゃない。
早く、恭介に追いつかないと、部屋に入れてもらえないかもしれないぞ。」
「あっ!ちょっととうま!
待ってよ!」
先に歩いている麻生に追いつく為に、上条は走り出す。
その後ろをインデックスが慌てて追いかけるのだった。
「お母さん、もう大丈夫なの?」
ナタリアは肩で支えているユミナをベットに座らせる。
ユミナはベットに座ると、優しく微笑みながら答えた。
「ええ、不思議な事に身体の方はもの凄く楽よ。
明日には歩けると思うわ。」
もう歩く事はできないと思っていたので、ユミナの顔に笑顔がこぼれる。
それを見た、ナタリアも笑顔を浮かべる。
「良かった、本当に治って良かった。」
「貴女にはたくさん迷惑をかけたわね。
これからは、貴女が私にたくさん迷惑をかける番よ。」
「でも、あの人達、本当に不思議な人達だったね。」
「そうね、神様が本当にいるのならこの出会いに感謝するわ。」
「シスターさんもいたし、明日から教会にお祈りにでも行く?」
「それはいいわね。
良いリハビリになりそうだし。」
二人はこれからの事を笑顔で話し合う。
その時、部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「誰かしら、こんな夜更けに?」
外は既に日は暮れている。
ユミナ達にこんな時間に家に訪ねてくる友人はいない。
ユミナは首を傾げ、ナタリアは言った。
「もしかして、さっきの人達が何か忘れ物でもしたのかな?」
「そうかもしれないわね。
ナタリア、出て貰っていい?」
ユミナの言葉を聞いて、頷く。
部屋を出て、扉に近づいていく。
その間もノック音は何度も鳴り響く。
「はいはい、今出ますよ。」
ナタリアは扉のドアノブを握り、扉を開ける。
その扉の前に立っていたのは・・・・・・・
後書き
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