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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第120話

麻生が上条達と待ち合わせ場所に着くと、二人はすでに待っていた。
上条は麻生の後ろから付いてきている少女を見つけると、目を見開いた。

「間違いない。
 俺の財布を盗んだ子だな。」

そう言いながら、上条は麻生達に近づいてくる。
少女は上条が怒っていると思ったのか、麻生の後ろに隠れてしまう。

「おい、どうして俺の後ろに隠れるんだ?」

麻生はそう尋ねるが、少女は答えようとしない。
ため息を吐く麻生に、上条は疑問に思っていたことを聞く。

「なぁ、どうして財布を盗んだんだ?」

上条は日本語で話すが、少女は日本語など知る訳がなく、首を傾げる。
麻生はイタリア語で上条が言った事を訳して伝える。
少女は恐る恐る、後ろから顔を出すと、上条の顔色を窺いながら答えた。

「お、お母さんの病気の治療費がどうしても欲しかったから・・・」

「えっと・・・・何て言っているんだ?」

「お前、イタリア語も分からないのか?」

「てか、イタリア語を理解できる恭介が異常だと思うんだが。」

あからさまに面倒くさそうな顔をすると、少女の言葉を上条が分かるように、日本語に言い換えて伝える。
その言葉を聞いた上条は眉をひそめる。

「何か訳がありそうだね。」

隣にいるインデックスがそう言った。

「俺もそれに興味があってな。
 今から、こいつの家に行ってみる予定だが、お前達はどうする?」

「もしかして、わざわざそれを確認するために、俺達を集めたのか?」

「確認を取らないと、後で知ったらお前らうるさいだろ。」

「でも、それってきょうすけ達が決めることじゃないような気がするんだけど。」

三人は少女に視線を向ける。
少女は三人が日本語で話しているので、話の内容を全く分かっていない。
インデックスは軽くしゃがんで、少女に目線に合わせて言う。

「ねぇ、君の名前は?」

「な、ナタリア、ナタリア=カミンスキー。」

「ナタリア、いい名前だね。
 私はインデックスて言うの。
 こっちの背の高い人がきょうすけで、もう一人がとうまって言う名前なの。」

「あの、貴方達は何を話しているのですか?」

「それを今から伝えようかと思ってたの。
 ねぇ、今から君の家に行ってもいい?」

「わ、私の家にですか?」

突然のインデックスの言葉にナタリアは動揺を隠せない。
それを見たインデックスは優しく微笑みながら言う。

「うん、何か事情がありそうだから、もしかしたら私達なら何か力に慣れるかもしれないから。」

インデックスの言葉を聞いたナタリアは、少しだけ考えると、小さく頷いた。

「よし、それじゃあ話も済んだみたいだし、案内を頼めるか?」

「うん。
 でも、その前に・・・」

少女は手に持っていた財布を、上条に差し出す。

「これ、返します。
 それとごめんなさい。」

「え、えっと・・・・何て言ってるんだ?」

「これを返します、ごめんなさい、って言ってるんだよ。」

インデックスに訳してもらい、ナタリアが何を言っているのか理解した上条。
財布を受け取り、身振り手振りで気にするなと伝えようとする。
しかし、傍から見たら奇妙な動きをしている以外に見えない。
それを見かねたインデックスは、上条が何をしているのかをナタリアに伝える。
上条の動きの意味を知ったナタリアは、小さく笑みを浮かべる。
少し笑みを浮かべながら、ナタリアは自分の家に案内する。




麻生達が合流した場所から、数十分くらい歩いた所に、ナタリアの家があった。
先程までの綺麗な町並みとは違い、その家はお世辞にも綺麗なアパートとは言えなかった。
壁の色は剥がれいて、階段などの鉄は錆びていて、いつ壊れてもおかしくないボロアパートだった。
ナタリアは錆びた鉄の階段を上がっていく。
扉は四つ有り、一番手前の扉を開けて中に入る。
ナタリアに続いて、麻生達も部屋に入っていく。
外の外装と比べて、中は比較的に綺麗だった。
玄関を抜け、リビングを越えた先の部屋にナタリアは入っていく。
部屋に入る前にナタリアは麻生達に言う。

「少しお母さんと話しますので、リビングで待っていてください。」

そう言ってナタリアは部屋に入っていった。
麻生達はリビングで待っていると、部屋からナタリアが出てくる。

「お待たせしました。
 どうぞ。」

麻生達はナタリアに続いて、部屋に入っていく。
部屋の中は天井の高さくらいの本棚と机、そしてベットが一つ置いてあった。
そのベットに一人の女性が、上半身を起こして座っていた。
歳は四〇歳くらいだろうか。
髪は茶髪で、胸くらいまで伸びていて、一つに纏めてある。
服はパジャマなのか、紫一色のシンプルな半袖を着ていた。

「いらっしゃい。
 ベットからの挨拶を許してください。
 私がナタリアの母の、ユミナ=カミンスキーです。
 娘がお世話になったみたいで、本当に感謝します。」

ユミナは座りながらも、深々と頭を下げる。

「気にしないでください。
 たまたま、通りかかっただけですから。」

「それでも娘を助けてくださったのは、変わりありませんから。」

そう言って、ユミナはインデックスの服装を見ると微笑みながら言葉を続ける。

「その格好は教会のシスターさんですね。
 何とも可愛らしいシスターさんだこと。」

それを聞いたインデックスは少しだけ照れたような顔をする。

「娘さんから聞きました。
 何でも病気にかかっていると。」

「・・・・・・・・・・・・ナタリア。」

「何、お母さん?」

「少しだけ席を外して貰える?」

「でも・・・・」

「お願い。」

「・・・・・・分かった。」

ナタリアは部屋から出て行く。
全ての会話がイタリア語で進んでいるので、上条はなぜナタリアが部屋を出て行ったのか分かっていない。

「なぁ、何がどうなっているんだ?」

上条はインデックスと麻生に聞く。

「インデックス、任せた。」

「えっとね、つまり・・・・・・・・こういう事。
 分かった?」

「まぁ、大体は把握した。」

「よろしいかしら?」

ユミナは上条がイタリア語が分からない事が分かったのか、インデックスの説明が終わるまで待っていた。
それに何となく気がついた、上条は軽く会釈する。

「まずは、娘が行った事について謝ります。」

「あの子から聞いたのですか?」

「いいえ。
 でも、あの子の事だから私の治療費を集めるために、盗みをしたのでしょう。」

(さすがは母親といったところか。)

麻生はユミナがナタリアの事を深く理解していることに感心する。

「あの子を責めないでください。」

「そんなつもりはありません。
 失礼ですが、貴女が罹っている病気は難病なのですか?」

インデックスは疑問に思ったことを口にする。
それを聞いたユミナは少し苦笑いを浮かべながら答えた。

「身体がおかしくなった時に、病院に診察に行きました。
 そのときの診察結果を聞いて、耳を疑いたくなりましたよ。
 病名はALS。
 通称、筋萎縮性側索硬化症という病気です。」

「き、きん、いしゅく?」

聞きなれない単語を聞いて、インデックスは首を傾げる。
分かっていないインデックスと、そもそも会話の内容すら分かっていない上条に麻生は説明をする。

「ALS、筋萎縮性側索硬化症って病気は手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく病気の事だ。
 筋肉そのものの病気ではなく、筋肉を動かし、かつ運動をつかさどる神経だけが障害をうけ、脳から「手足を動かせ」という命令が伝わらなくなることにより、力が弱くなり、筋肉がやせていく難病だ。」

「もしかして、その筋なんたらって病気は、この人が罹っている病気の事か?」

「そうだ、現代の医学では完治は不可能とされる病気の一つだ。
 今の医学では進行を遅らせる程度にしかできない。」

「それって、最終的にどうなるんだ?」

恐る恐る上条は麻生に聞く。

「隠す必要もないから、言っておく。
 体のどの部分の筋肉から始まってもやがては全身の筋肉が侵され、最後は呼吸の筋肉も働かなくなって呼吸不全になって死ぬ。」

その言葉を聞いて、二人は絶句する。
麻生はユミナに近づき、しゃがむ。

「少し、手足を触ってもいいですか?」

「構いませんよ。」

失礼します、と言って麻生はかけ布団をめくり、ユミナの足を触る。

「もう歩く事はできないようですね。」

「あら、貴方はこの病気について知っていたのね。」

「少しばかり。
 このまま進行すれば、おそらく一年以内には貴女は呼吸不全になります。」

「医者にもそう言われたわ。
 もって、二~三年だろうって。
 治療などを受けるにしても、お金がね。
 見ての通り、貧乏だから。」

「娘さんはこの事は?」

「まだ、はっきりとは言っていないわ。
 でも、気がついてたんでしょうね。
 重い病気だと言う事は、だからあの子は盗みをして治療費を稼ごうとした。
 馬鹿な娘ですよ、本当に。」

そう言葉を漏らすが、表情はとても穏やかだった。
自分の為に何かをしようとしているのが、嬉しいのだろう。

「でも、盗みはいけません。
 今後はそういった事はさせませんから、安心してください。」

「どうして、俺たちにここまで教えてくれたのですか?」

麻生が尋ねると、ユミナは少し笑顔を浮かべながら言った。

「初めて会った時にね、分かったの。
 貴方達は優しい人なんだって。
 ナタリアが部屋に招いたと言うのも理由の一つだけど、一番の理由はそれね。」

麻生はかけ布団を元に戻す。
すると、上条が自分の財布からお金を取り出して、ユミナに差し出す。

「これは?」

「麻生、訳してくれ。
 これぽっちじゃあ何の役には立たないけど、それでも少しは足しになるはずです。」

「これは受け取れません。」

「受け取ってください!
 あの子の為にも。」

「気持ちだけ受け取っておくわ。
 ありがとう、本当に優しい子ね。」

麻生に訳して貰った言葉を聞いた、上条は差し出したお金を強く握り締めた。
自分にできる事など、これくらいしかできない事を悔やんでいるのだろう。
その時、麻生が隣で軽くため息を吐くと、しゃがみ込みユミナの右手を両手で優しく挟み込む。
麻生が何をしようとしているのか分からないユミナは、それを黙って見つめる。

「ユミナさん。
 足を動かしてください。」

「え?
 でも、この足は・・・」

「いいですから。」

麻生に言われるがままに足を動かそうとする。
すると、今まで動かなかった足が動き出した。
それを見たユミナは驚きの表情を浮かべる。

「これは一体・・・・」

「少しおまじないをかけました。
 明日には立つ事はできると思います。」

そう言うと、麻生は立ち上がり部屋を出て行こうとする。

「ちょっと待てよ!
 何がどうなっているんだよ!?」

状況がさっぱり分からない二人は、麻生に聞く。

「外で教えてやる。
 さぁ、行くぞ。」

それだけを言って、麻生は部屋を出て行く。
リビングではナタリアが椅子に座って、待っていた。
麻生達が出てくるのを見て、近づいてくる。
麻生はナタリアの頭に左手を軽く乗せてこう言った。

「これからはあんな馬鹿な真似はするなよ。」

そう言って部屋を出て行こうとするが。

「待ってください。」

後ろから呼び止められたので、振り返る。
そこには壁を支えにしつつも、部屋の扉の所でユミナが立っていた。
ナタリアはユミナが立っているのを見て、驚きの表情を浮かべ、ふらふらなユミナを支える。

「お礼を言わせてください。
 本当にありがとうございます。」

できるだけ深く頭を下げる。
それを見た麻生は、軽く会釈をして、部屋を出て行く。
訳が分からないまま、上条とインデックスも会釈をして部屋を出て行った。 
 

 
後書き
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