トライアングラー+α
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二話
「早乙女アルト君!SMS入隊おめでとう!」
翌日、新規入隊した、早乙女アルトのために、歓迎会が開かれた。
しかし、ここの歓迎会は半端ではない…
煙幕での手荒い祝福に始まり、成年者の酒盛りと、最早歓迎会など関係ない宴会が始まっていた。
「なんなんだよ!これは!」
「まぁまぁ、いつものことだよな?ルカ?」
「はい!そろそろボビーさんのポールダンスが始まるはずですよ!」
「そんなものに興味はない…」
「いいのか?女形の先輩として見なくても。」
「テメェ!ミハエル!」
学生軍団が、ワーワー騒いでいると、バリーはウーロン茶と自分の酒を持って、アルトの隣に座った。
「隣いいか?」
「バリー大尉!」
「よせよミシェル。今言われたとおり、バリー小島大尉だ。明日から早乙女准尉の訓練教官を務める。」
「ハッ!よろしくお願いします!」
軍隊よろしく、気を付けの姿勢のまま、バリーを見つめる目は、さすが元歌舞伎役者と言ったところだろうか、目力がある。
「まぁ軍隊じゃねーんだ、楽にして良いぞ…まぁこれは俺からの餞別だ。飲めよ。」
「ありがとうございます!いただきます!」
それを奥のミシェルとルカは、呆れた顔で見ている。
緊張でのどが渇いたのか、アルトは一気に飲んだ。
「…ってこれ!ウーロンハイじゃねーか!」
「ギャハハハハハハ!ひっかかってやんのー!」
「なんなんだよこれ!!」
「毎年恒例、バリーさんのイタズラ大作戦。」
「去年ミシェル先輩タバスコ入りコーラ飲まされてましたよね。」
「飲み物であっただけ感謝しろって。」
「なにしやがんだこのチビ野郎!」
その瞬間、その場付近の空気が凍り付いた。
当のバリーはニコニコ笑っている。
「アルト!お前!」
「やばいですってアルト先輩!」
「ヤバいって!ヤバいのはこいつの頭だろうが!未成年に酒なんか飲ませやが…」
そこから、早乙女アルトの意識は途絶えた。
鬼の表情に変わったバリーのハイキックが、テンプルに命中したのだ。
「バリーさん!悪かったって!こいつにそれだけは言うなって伝えてなかった俺が…」
「どけぇ!ミシェル!このアマちゃんには世間の厳しさと全国の背の小さめの方の恨みを教えてやんだ!」
「バリー大尉!もうアルト先輩意識無いですって!」
薄れゆく意識で聞こえたのはこれだけだ…
目を覚ますと、まだドンチャン騒ぎの真っ最中だった。
隣にはミシェルが着いていた。
「うっ…なにがあったんだ?」
「なにがあったじゃねーよ全く…お前がバリーさんのことチビとか言うから…」
たしかにバリーの身長は170あるか無いか程度。ゼントランもいるフロンティアではかなり小さい部類ではあるが…
「しかし、あのキック久々にみたな…」
「俺
はハイキックくらったのか…しかし、人の意識を刈り取るぐらいのキックって…」
「あの人は元プロの格闘家だよ。高校生の時にな。普段はフロンティア大学で、スポーツを専攻してる。」
通りで鋭いキックを放つと思った…
「なんでSMSに入ったかは知らないけど、あの人について行けば、バカみたいに体力はつくよ。」
「全く…とんでもないところに入ったよ。」
「それだけは同感だよ。アルト姫。」
「ミハエル!テメェ!」
翌日…
「昨日はすまなかったな、早乙女アルト准尉…めんどくせえ…アルトでいいか?」
「どうぞ好きに呼んでください」
アルトは完全にふてくされている。
「じゃあ、アルト!当分は訓練についてけるだけの体力を付けてもらう。バルキリーのシュミレーターはミシェルの担当だったな。」
とりあえず下のトレーニングルームに来いとだけ伝えて、その場を去った。地獄が待っているとも知らず…
「くたばんなよ!さぁ後50回!」(トレーニング担当バリー)
「なにをやっている!真ん中を狙えと言っただろう!」(射撃担当オズマ)
「27回目の撃墜おめでとう。」(バルキリー担当ミシェル)
「ここで、航空高度と、宇宙での相関を…ちょっと!寝ないでくださいよ!アルト先輩!」(座学担当ルカ)
こんなアルトの訓練生活は、一ヶ月を過ぎた。
「実際どうなんだ?アルトの素質は。」
「さすがに元歌舞伎役者ですよ。基礎的な体力と精神力は人並み以上ですよ。」
トレーニング中のバリーに、オズマが話しかけてるが、バリーは気にする素振りすらない。
「しかし…非番だってのにトレーニングとは…お前休日を過ごす恋人でもいないのか?」
「それは旦那だけには言われたくねーっすよ。」
バリーは、トレーニングを切り上げると、愛車のバイクに乗り、家路につくことにした。
サンフランシスコの交差点で、信号待ちをしていると、どこからか、女の声が聞こえた。
「離しなさいよ!」
「いいじゃんかよー!やっぱこの子シェリルそっくりじゃん!」
見過ごすのも目覚めが悪いな…助けてやるか!
バイクを止めて、チャラ男に絡まれてる女の子を助けることにした。
「なぁ!だから俺たちと遊ぼうよ!」
「ならよぉお兄さん、俺と遊ぼうや。」
後ろからガシッと腕をつかみ、後ろにひねった。
「テメェ!何しやがんだ!」
「いやぁ、なんか女の子が嫌そうにしてたもんで、つい…」
言うか言わないかの間に、拳が飛んできた。余裕で避けるが、宣戦布告と見ていいだろう。
「おっと…お兄さん方…やるですな?」
「うるせぇよおっさん!」
「おっさんじゃねぇ!21だ!」
そういうと、目の前の男の肝臓に、ミドル一閃。左の男には左フック。右の男には、右アッパーでノックアウトした。
かなり騒いでいたので、だいぶ人だかりができてしまっていた…警察を呼ばれるのも時間の問題か…
「ちょっとやりすぎたかも…お嬢さん、こちらに…」
「ちょっとアンタ!」
急にお姫さま抱っこしたので、何発かビンタをくらったが、かまっては居られない…バイクの後ろに乗せて、その場を去ることにした。
「しっかり捕まっててよ!」
バイクで急加速して、市街地を抜けていった。
「さっきは急にすまなかったね、俺はバリーだ。ってアンタのことは知ってるよ。」
「当然よ!アタシはシェリルよ?」
この女。変装はしているが、中途半端だ。間違いなく銀河の妖精、シェリルノームだ。
「そんで銀河の歌姫があんな所になんの用だよ。」
「何だっていいでしょ!?」
相当いきり立っている。さながら、怒ったネコのようだ。
「おいおい、助けてもらった恩人にそりゃねーだろ!」
「うーん…それもそうね…」
数秒考えた後、百万ドルの笑顔でこちらを見てきた。
「そうだ!今日1日、私に付き合わせてあげて良いわ!」
「ハァ!?」
これが運命とも知らずに…
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