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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第119話

「なるほど、お前はあの子に財布を盗まれたと。
 だらしないにもほどがあるだろ。」

上条がなぜ走っていたのか、気になったインデックスが上条に聞いた。
先程の一連の出来事を伝えた上条だが、麻生から呆れた顔をされる。

「今はそんな事を言っている場合じゃないだろ!
 早く追いかけないと!」

「追いかけるって言ってもその子はどこにいるの?」

「あ・・・・」

インデックスの言葉を聞いて、上条はその子が走り去ったであろう先に視線を向ける。
そこには多くの通行人が歩いているのが見える。
この中から探す事は至難の技だろう。
何より、あの子供も常に移動している筈だ。
今頃、家や隠れ家に戻っているかもしれない。

「まぁ、ご愁傷様だな。
 観光地ではよくある事だ。」

「ふ、ふざけんなぁぁぁぁぁ!!!」

「うるさい。
 少し黙れ。」

鬱陶しいそうな顔をしながら言う。
それでも上条の怒りは静まる事はなかった。

「と、とうま、落ち着いて!
 まだ、遠くに行ってないかもしれないよ。
 一緒に探すから、もう少し頑張ってみようよ!」

何とか怒りを鎮めようとインデックスが説得をする。
その言葉を聞いたのか、少しずつだが落ち着きを取り戻しつつある。

「ほら、きょうすけも手伝ってくれるって言ってくれてるし。」

「俺はそんな言葉、一度も言った覚えはないがな。」

「言ったの。」

「いや、言って「言ったよね!!」・・・・・ちっ、分かった。」

舌打ちをしながらも、了承する。
それだけ、インデックスに言い返せない迫力があったという事だ。
ちなみにインデックスも少し、というかかなり焦っている。
なぜなら、財布を盗られたという事は、ご飯を買う事もできないという事だ。
つまり、食欲を満たす事ができないという事。
だが、インデックスは上条の財布に全財産が入っていると、勝手に判断している為にこうやって焦っている。
実際に上条の財布には観光の為か、結構な額が入っていたが、それを盗られたかと言って学園都市の生活が苦しくなるだけで、別に死ぬわけではない。
そんな事をインデックスが知る訳がない。
例え知っていても、生活が苦しくなるという事を知った時点で、やる事は変わらないだろう。

「なら、手分けして探すぞ。
 お前達は右、俺は左。」

「分かった。
 行くぞ、インデックス!」

「うん、私達の明日のご飯の為に!」

変な掛け声を共に、二人は走り去ってしまう。
それを見て、ため息を吐きながら、麻生は上条達とは逆の方へ足を向ける。
インデックスの手前は手伝うと言ったが、本当はそんな気は全くない。

(あの時は無理に断れば、インデックスは余計に噛み付いてくるからな。
 それなら、適当に手伝って終わればいい。)

そう思いつつ、適当に歩いていくのだった。








「ああ、こっちは収穫なしだ。」

携帯を片手に麻生はそう言う。
電話の相手は上条だ。
財布を盗った女の子を見かけたかを、聞くために麻生に電話したのだ。

「恭介の方でも駄目か。」

「二手に分かれて見つからなかったんだ。
 もう諦めろ。」

「俺はもう少し探してみる。」

「そうか、まぁ好きにしろ。
 俺は部屋に戻っているからな。」

「もし見つかったら連絡する。」

「いや、しなくていいから。」

そう言って通話を切る。
欠伸をしながら、麻生は来た道を戻ろうとする。
だが。

「離して!!」

「うん?」

ふと、そんな声が聞こえた。
声のする方に視線を向けると、その先には路地裏から聞こえていた。
少し興味が湧いたのか、その路地裏に近づいていく。
そこでは、屈強そうな男が四人が少女を囲んでいた。
少女は壁を背にしているので、逃げる事ができないようだ。

(てか、あの子は当麻の財布を盗んだ子供じゃないか。)

よく見ると、その子の手には上条の財布が握られている。
男四人は、刺青やピアスなどをしており、見るからにガラが悪い。

「離して!」

「その財布を俺達に渡すって言うのなら、離してやってもいいぞ。」

男の一人が、少女の腕を掴みながら、そう言う。
腕の太さは少女の三倍はあるだろう。
振り払う事もできないようだ。

(まぁ、俺には関係ない。
 帰って寝るとするか。)

興味をなくしたのか、その場から離れようとした時だった。

「絶対に嫌だ!
 これを渡したら、お母さんの病気の治療費が無くなっちゃう!」

その言葉を聞いて、麻生の足は止まる。
そして、もう一度振り返る。

「下手な嘘だな。
 そんな嘘で、俺達をだまさせると思っているのか?」

男達は全く信じていない。
確かに、言葉だけを聞いたら嘘を言って、言い逃れをしようとしているように見える。
しかし、麻生の眼にはそう見えなかった。
少女の眼は嘘を言っているように見えなかったのだ。

(ちっ・・・・本当に甘くなったな、俺は。)

大きくため息を吐くと、麻生は路地裏に入って行く。

「おい、お前ら。」

「ああん?」

イタリア語で麻生は、その男達に話しかける。
少女を含めた全員が、麻生の方に視線を向ける。

「何だ、てめぇは?」

「通りすがりのただの一般人Aだ。」

「一般人だぁ?
 さっさと消えやがれ。」

「そうもいかない。
 その財布には見覚えがあってな、黙って見過ごす訳にはいかない。」

「何だテメェ。
 あんまりうだうだ言うなら、ぶっ殺すぞ!」

四人の男達の内、三人が麻生に近づいてくる。
どれも麻生より体格は大きい。
少女は麻生が本当に殺されてしまうのでは、と思った。

「まぁ、その方が手間が省ける。」

その声が聞こえたと思うと、麻生は地面を蹴る。
一歩で三メートルの距離を詰め、一番前にいる男の懐に潜り込む。

「は?」

麻生の動きが全く見えなかったのか、信じられないものを見たような顔をしている。
そのまま、男の胸ぐらを掴むと、男を背負い投げで地面に叩きつける。
叩きつけられた衝撃で、男は意識を失う。

「こ、この野郎!!」

その光景を見て、もう一人の男が麻生に殴りかかる。
それを半歩移動して、紙一重でかわす。
そのまま、左手で男の顔面を掴むと、壁に思いっきり押し付ける。
後頭部を打ち付け、そのまま壁にもたれながら、地面に倒れる。
麻生がただの一般人でない事を分かったもう一人の男は、ポケットからナイフを取り出す。
それを右手で持ち、麻生に向かって走り出す。
その時、男の前を何かが通り過ぎる。
さらにキィン、と甲高い音が聞こえた。
麻生を見ると、右足を真上に振り上げていた。
そして、空から何かが落ちてくる。
それは、ナイフの刃の部分だった。
男はゆっくりと視線を下ろしていく。
持っていたナイフの刃の部分が、無くなっていた。
男は前を何かが通り過ぎたが、それが麻生の右足であるという事にようやく気がつく。
気がついた時には遅く、振り上げていた麻生の右足が、男の右肩に入り、地面に叩きつけられる。
最後に残ったのは、少女と男の二人だけになった。

「な、何なんだよ、テメェは!!」

男は少女の手を離すと、ポケットから先程、男が持っていたナイフと同じ物を取り出す。
だが、これだけでは勝てない事はさっきの光景を見て、分かっている。
それを理解しているのか、男の身体は小刻みに震えていた。
少女は呆然と、麻生を見つめている。
麻生はゆっくりと男に近づいていく。
近づいてくる麻生を見て、男は後ずさりする。
恐怖に耐え切れなくなったのか、後ろを振り返り、路地裏の奥へと逃げていく。
麻生は地面に落ちている、刃の無いナイフの拾う。
それを男に向かって投げつける。
凄まじい勢いで飛んでいき、男の後頭部にヒットする。
後ろからの衝撃を受けた男は、前に倒れ、そのまま動かなくなった。

「あ~、疲れた。」

心底、だるそうな顔をしながら麻生はそう言った。

「あ、貴方は、あの時ぶつかった人。」

「覚えていたのか。
 それなら、話は早い。」

「財布を取り戻しに来たのですか?」

「いや、全然。」

その言葉を聞いて、少女は首を傾げる。

「さっき、あの男達にそう言っていたじゃないですか!」

「そう言ったかもしれないが、あんなの口実に過ぎない。
 実際、俺の財布じゃないしな。」

「じゃあ、どうして助けてくれたのですか?」

「お前のさっきの会話に興味を持ったからだ。」

「会話ですか?」

その時、麻生の携帯が鳴り響く。
画面を見ると、通話の主は上条だ。
麻生は通話ボタンを押す。

「何だ?」

「もう少しだけ、探すのを手伝ってくれないか?」

先程、麻生が手伝わないと言ったのを聞いて、電話してきたのだろう。
インデックスと上条だけでは、捜索範囲は限られてくる。
なので、一人でも頭数が欲しいのだろう。
それを聞いて、麻生はチラリと少女に視線を向け、言う。

「ああ、その事だが、見つけたぞ。」

「ほ、本当か!?
 今、どこにいる!?」

「少し説明しづらいな。
 さっき、俺達が集まっていた場所で落ち合おう。」

「分かった!
 すぐに向かう!」

そう言って通話が切れる。
少女は黙って麻生を睨んでいる。

「もちろん、ついて来てもらうぞ。」

麻生はそう言って、少女に背を向け、路地裏を出て行く。
少女は一瞬、逃げようかと考えたが、無駄だと考えたのか黙って麻生について行くのだった。 
 

 
後書き
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