少年と女神の物語
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第十七話
さて・・・まずは挨拶代わりに一発入れるか。
「じゃあ・・・いくぞ!」
俺はそう言って走り、一瞬で槍の間合いに入り、
「龍槍砕牙!」
槍を大きく振り、石突きを使って全力で殴りつける。
が、護堂には槍があたらず、気がつけば護堂は前方にいた。
「へえ、直感で後ろに跳んだのか?」
「おまえもドニみたいなことをするのかよ・・・」
「いや、俺はトトとは全然違う。俺のは、魔術ありきの槍術だからな」
さすがに、アイツの剣に魔術なしの槍術で勝てる自信はない。
俺が槍を始めた理由は、神代に来てから使えるようになった魔術との相性がよかったからだし。
「まあ、それならこんな槍で戦うのは心ともないか。飛べ、穿て、我が手の槍よ!」
俺は言霊を唱えながら槍を投げ、距離を置く。
「クオレ・ディ・レオーネ!」
その槍はエリカが弾いたので護堂には当たらなかったが、気にしなくてもいいだろう。
元々、当たるとは思っていない。
「我は全ての武具を作りし者である。我はここに我が武を生み出し、使役せん!」
俺は蚩尤の権能を使い、手に鋼の属性を持つ槍を二槍生み出す。
俺が蚩尤から簒奪した権能でできることは、主に三つ。
一つ目に、どんな武器でも作り出すことができる。
二つ目に、金属を食べて、その金属でできたものを作り出す。
三つ目に、金属を食べて栄養にすることができる。
今回は、一つ目のどんな武器でも作れる、を使って槍を作り出した。
家の家族は、この権能のことを『即席工場』と呼んでいる。
「護堂。今の言霊から考えて、あの槍はただの槍じゃないわ。十分に気を付けて」
「分かってるよ、エリカ」
「へえ・・・やっぱり、二人は力を合わせて戦うのか」
護堂が拳を構え、エリカは剣・・・先ほどの言霊から、名はクオレ・ディ・レオーネだろう、を構えてこちらを向く。
さて、そっちがそう来るなら、こっちも人数を準備しよう。
「翠刃と紅刃の双剣よ。戦の女神が振るいしイガリマとシュルシャガナの双剣よ。今、我が親族にその力を貸し与えよ」
「我らは汝を纏い、汝を振るう」
「女神の双剣よ。我らにその力を!」
俺の言霊で切歌の手に翠の剣、調の手に紅の剣が現れ、二人が俺に続けて言霊を唱えると、二振りの剣がほどけ、二人の体を覆い、二人の武装になる。
結果として、切歌は緑色の大鎌を、調はツインテールにかぶせるようにパーツがついており、二人とも服装まで変わっていた(要するに、戦姫絶唱シンフォギアGのイガリマとシュルシャガナ)。
この二振りの刀は、俺が女神ザババから簒奪した力。
『獄鎌・イガリマ 』に『鏖鋸・シュルシャガナ』だ。基本的に、相性のいい切歌と調が使う。
「悪いデスが、エリカの相手はあたしたちデス!」
「兄さんの邪魔はさせない」
そして、二人は自分の獲物を使ってエリカに攻撃を仕掛け、二人を分離する。
「エリカ!」
「仲間の心配をしてる暇はないぞ!」
そして、一瞬エリカのほうに気を取られた隙をつき、護堂に攻撃を仕掛ける。
十連撃くらい加えたのだが、初撃以外は一発も当たらなかった。
「今のタイミングで避けるか。護堂、おまえもう人間止めてるな」
「それはお互い様だろ!なんで一撃しか喰らってないのにこんなに抉れてるんだよ・・・!」
護堂は傷を抑えながら苦しそうにうめき、言霊を唱える。
「全ての敵よ、我を畏れよ」
「それは・・・いやな予感がするなあ!」
そして、その予感にしたがって走り、槍を振るう。
「全ての悪しき者よ、我が力を畏れよ。今こそ我は、十の山の強さを、百の大河の強さを、千の駱駝の強さを得ん!雄強なる我が掲げしは、猛る駱駝の印なり!」
「な・・・!」
護堂は言霊を唱え終わると同時に足を蹴り上げ、槍を砕いてきた。
そして、そのまま蹴りを放ち続けてくる。
「なるほど・・・そういや、護堂はウルスラグナから十の化身を簒奪したんだったな!」
「そのことは知ってるのかよ!」
「当然だ!で、さっきの言霊から考えて、これは駱駝の化身!効果は・・・格闘センスの向上にキック力強化、痛みに鈍感になる、か!」
「細かく知ってるな!」
護堂は蹴りを撃ち続けているので、俺は蚩尤の権能を使って盾を作って防ぎつつ、ダグザから簒奪した権能を使って、護堂の権能を見抜いていく。
へえ・・・一つ、面白い権能があるな。
「我は盗人である。天上より民に火を与え、進化を支えたものである」
護堂に聞こえないよう小声で言霊をつぶやき、護堂の蹴りを避けてその腹を殴る。
が、もちろんたいしたダメージはなかったようで、懐に入り込んだ俺を蹴り飛ばす。
「イッツー・・・骨が折れたな、これは!」
「そう言いながら槍を振るうのはどうかと思うぞ!」
で、普通に痛かったので、怒りに任せて槍を振るうことにした。
「わが内にありしは天空の雷撃。社会を守る、秩序の一撃である!今ここに、我が身に宿れ!」
俺はゼウスの権能を使い、槍に雷を纏わせる。
「焼けろ!感電しろ!」
「危険なもんをヤケクソ気味に振り回すな!」
護堂はそう言いながら靴の裏で俺の槍を弾き、回し蹴りを放つが、その一点の雷の密度を上げ、蹴りを殺し、
「雷槍斬刃!」
雷を纏った槍二振りを交差するように振り、雷を流し込む。
が、護堂は気にせず蹴り込んでくるので、慌てて盾を作り、防ぐ。
「そういえば、痛みに鈍感になるんだったな!」
「さすがに今のはきつかったよ!」
この様子だと、こっちが不利だな・・・さて、どうしよう・・・
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