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八条学園怪異譚

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第四十七話 洋館ではその十一

「そこでそう言えるのはね」
「いや、常識じゃないんですか?」
「ここでこう言うのは」
「いやいや、そこでそう言える人ってあまりいないからね」
 ビクトルが言うにはである、そうだというのだ。
「そういえば二人共商業科だったね」
「はい、それでお家は食堂です」
「私はパン屋さんです」
「だからだね、礼儀作法がしっかりしているのは」
 ビクトルはそこまで聞いてあらためて納得して頷いた。そのうえでこう言うのだった。
「いいことだよ、じゃあね」
「はい、それじゃあ」
「今から」
「どうぞ」
 こう話してそしてだった、二人はビクトルのいるカウンターに客席のあるホールから入った、そして来たところはというと。
 カウンター、ビクトルの傍だった。そこであったことにまず愛実が言った。
「じゃあ次ね」
「そうね、また次の場所ね」
 聖花もすぐに応える。
「行こうね」
「そうしよう」
「何だ、落ち込まないのか」
 ミイラ男が泉でないとわかってすぐに次の場所に行こうと話す二人を見て彼女達に問うた。
「すぐにそう言うとは」
「ううん、もう何十と巡ってるし」
「それに泉は絶対にあるからね」
「だからそれで落ち込んでもね」
「何にもならないからね」 
 二人はミイラ男にすぐに答えた。
「落ち込まないの」
「それに元々前向きだしね」
「だから特に」
「これといってね」
「そうか、ならいいがな」
「ええ、まあ最近泉っていうか扉ばかりだからね」
「部屋とかね」
 二人は客席、カウンターの席に戻って座ったうえでこれまで巡ってきた泉のことも話す。どうだったかというのだ。
「門とかの感じだけれど」
「泉というよりは」
「ああ、そう思うんだ」
 ビクトルがカウンターから二人に応えてきた、彼は今もカウンターの中にいてそこから二人に応えたのである。
「成程ね」
「実際にそうですよね」
「そんな感じですよね」
「まあね、泉と言うよりもね」
「やっぱり門ですよね」
「そんな感じですよね」
「うん、ただ泉と呼ばれている理由はね」
 ビクトルもこのことについて知っている、それで言うのだった。
「妖怪さんや幽霊さん達が別の場所から行き来する、即ちね」
「学園と別の世界をつなぐ、ですね」
「言うなら水の世界と陸の世界をつなぐ場所だからですね」
「そうだよ、そう言われているよ」
 だからだというのだ。
「それでなんだよ」
「確かに。泉はそうですよね」
「飲んだり手を洗ったりする場所で」
 二人も言われて納得する。
「そうした場所だから」
「だからなんですね」
「他にも色々と言われているけれどね」
 ビイクトルが言うにはそうだった、そして。
 その話が終わってからだ、ビクトルは二人にこうも話した。 
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