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八条学園怪異譚

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第四十七話 洋館ではその十

 そして彼も愛実と聖花を見てだ、こう言うのだった。
「可愛い娘達だね、高一かな」
「はい、八条学園高等部商業科です」
「そこに通っています」
「そうなんだ、僕はビクトル=ジョシュワっていうんだ」
 彼はこう名乗った。
「フランソワ=ジョシュワの孫の孫で八条大学文学部の二回生だよ」
「大学の方ですか」
「そうなんですか」
「うん、国文学を学んでいるんだ」
 日本のだというのだ。
「それでこの店でも働いているんだ」
「さっき若旦那って呼ばれてましたけれど」
「将来はこのお店を」
「継ぐことになってるよ」
 二人にこのことも話した。
「やがてはね」
「そうなんですか、だからですか」
「ドラキュラさん達とも」
「子供の頃からの付き合いだよ」
 ビクトルは四人を見つつ二人に答えた。
「友達っていうか家族っていうかね」
「仲良く暮らしている」
「いつも一緒にな」
「それとフィリップさんともね」
 ビクトルはこの人物の名前も出した。
「まああの人はもう生身じゃないけれどね」
「幽霊なんですよね、今は」
「そう聞いてますけれど」
「そうだよ、ところで泉のことだけれど」
 ここでだ、ビクトルは彼からこの話を出した。
「そうだね」
「はい、そうです」
「このお店がそうかも知れないって聞きました」
「お客の場所からカウンターに入れば」
「それで」
「まあカウンターから客席も別世界への出入りだからね」
 ビクトルの方も頷いて応える。
「有り得るね、けれどね」
「けれど?」
「けれどっていいますと」
 二人はビクトルの今の言葉に怪訝な顔になって返した。
「何かあるんですか?」
「カウンターに」
「何もないよ」
 ビクトルは二人の怪訝な言葉にあっさりとした感じで返した。
「何もね」
「何も、ですか」
「ないんですか」
「そう、僕は毎日何度もカウンターと客席があるホールを行き来してるけれど」
 客席は何十人も入られる、結構な大きさだ。
「何もないからね」
「じゃあここは」
「泉じゃないんですか?」
「どうかな、僕は妖怪の人達とずっといてね」
 それでだというのだ。
「半分妖怪化してるかも知れないしね」
「それじゃあ博士ですけれど」
「ジョシュワさんもですか?」
「まあね、自分でjはそう思ったりもしてるから」
 自分では泉かどうかはわからないというのだ、カウンターからホールに向かうその出入り口はというと。
「とはいっても普通に出入りしているだけだから」
「じゃあそこは」
「泉じゃないんですか」
「そうかも知れないね」
 こう二人に話すのだった。
「けれど実際に確かめたらいいよ」
「私達の場合は、ですか」
「どうかわからないから」
「うん、じゃあどうぞ」
 確かめてもいいと言うのだった、二人に。
「入って来てね」
「はい、じゃあ今からカウンターに」
「失礼します」
「礼儀正しいね」
 ビクトルは二人が一礼してからあらためて言って中に入ろうとするのを見てこう述べた。 
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