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八条学園怪異譚

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第四十七話 洋館ではその八

「じゃあその幽霊さんは」
「うむ、ジョシュワさんの縁戚の方でフィリップ=ジョシュワさんといってな」
 姓は一緒だった。
「やはり大学で、この人は理学の先生じゃったが」
「その人がですか」
「その白い幽霊さんなんですね」
「生前から気さくな人でのう」
 博士はその明治の頃から話した。
「幽霊になってからも明るくてな」
「それでなんですか」
「今も学園に残っておられて」
「そういうことじゃ、日々を楽しく過ごされておる」
「じゃあフィリップさんの幽霊はですね」
「悪い人じゃないんですね」
「悪戯好きじゃがな」
 それでも悪人ではないというのだ、この学園にいる他の妖怪や幽霊の様に。
「面白い人じゃよ」
「まあ少し過ぎるがな」
 ミイラ男は腕を組んで述べた。
「それでも面白い人じゃな」
「じゃあその人にお会いする為にも」
「今から」
 ドラキュラ達に案内してもらって洋館に行く、そうした話になってだった。
 二人は四人のハリウッド系の妖怪達と共に洋館に向かった、夕方の道中だったが誰も一向に平気である。ここで聖花がドラキュラを見て言うのだった。
「そういえば吸血鬼カーミラも」
「小説を読んだのだな」
「夕方歩いてたしね」
「さっきも話したがハリウッドと実際は違う」
 ドラキュラはこのことを話す。
「しかも私達の性格はどちらかというと顔を自由自在に変えられる少年の漫画のそれに近い」
「さっきも言ったけれど料理は出来ないけれどね」
 狼男はここでもこのことを話す。
「それでもそっちだね、僕達は」
「うむ、のどかで騒がず暴れず」
「そうして生きている」
 フランケンとミイラ男も言う、普通に夕方のまだ生徒も多い学園の中を進むが妖怪達は気配を消しているので二人以外には石ころの様なものと思われている。
「我々はな」
「いい日々だ」
「ううん、本当にハリウッドとかと実際は違うわね」
「また別なのね」
「そういうことだ、映画だから色々迫力を付けているがな」
 ドラキュラは素顔から話す。
「実際は違うのだ」
「そういうことね、じゃあそのフィリップさんもなの」
「悪戯好きにしても」
「うむ、普通の人だ」
 そうだというのだ。
「ではいいな」
「見えてきたわね」
 聖花が言った、丁度その洋館が見えてきた。左右対称で赤煉瓦の壁に紅の三角の屋根と煙突がる。ガラスは円柱型であり鉄の囲みがある。
 その洋館を見てだ、聖花は愛実に言った。
「あのお店行ったことある?」
「いえ、ないけれど」
「そうよね。どういうお店かしらね」
「独特の雰囲気があるわね」
 洋館の壁には緑の蔦が絡まっている、かつての甲子園球場のそれの様に。庭には薔薇が咲き緑の中に紅を見せている。
 それを見てだ、聖花は愛実に話すのだ。
「何か如何にもっていうか」
「薔薇の精がいてもね」
「不思議じゃないでしょ」
「ええ」
 愛実は聖花の問いに頷いて答えた。 
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