ヘタリア大帝国
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TURN106 ウラル星域会戦その三
「お父さん、御免なさい」
「感じたんだな」
「お母さん、来てるのよね」
「ああ、そうだ」
やはり感じ取っていた、父も嘘は言わなかった。
「敵としてな」
「お父さんとお母さんは戦うの?」
「そうなる、しかしだ」
「しかし?」
「安心してくれ、お父さんは絶対にお母さんを傷つけない」
娘への約束だ、そして東郷はこれまで真希との約束を破ったことはない。
「絶対に助け出すからな」
「そうしてくれるの?」
「約束する、お母さんは絶対に戻って来るからな」
「うん、お父さん御願い」
真希はここでやっと顔を上げて父に言った。
「お母さんを助けてあげて」
「折角生きていたんだからな」
「事故でも生きていたのね」
「そうだ、けれどな」
「悪い人に操られてるの?」
「悪い人じゃないと思うがそうなっているな」
実は東郷はカテーリンを悪人だと思っていない、生真面目なだけで世間知らずの子供だと思っている。そしてそれはその通りなのだ。
「だから絶対に助け出すからな」
「うん、じゃあ」
「真希はお父さんの部屋で大人しくしているんだ」
娘に優しい声で言う。
「ここはお父さんの仕事場だからな」
「うん、それじゃあね」
真希は東郷の言葉に素直に頷いた、そしてだった。
司令室に案内されてそこで落ち着いた、東郷は大和の甲板士官に案内される娘を見送ってから秋山にあらためて言った。
「よし、今からだ」
「奥様をですね」
「助け出すぞ、いいな」
「はい、何としてもやりましょう」
「親は子供に嘘を吐いてはいけない」
東郷の教育方針の一つだ。
「そして約束を破ってもいけない」
「だからこそですね」
「スカーレットを助け出すぞ、いいな」
「了解です」
東郷は娘にスカーレットを助け出すことを約束した、そのうえでだった。
ウラルに来た、ウラルには連合軍とレッドファランクスが展開していた。それを見てだった。
東郷は先に立てていた作戦通り軍を二つに分けた、そのうえで。
彼は精鋭艦隊を率いてレッドファランクスに向かう、そこには彼女がいた。
スカーレットは不敵な笑みで東郷にモニターから言って来た。
「それではいいわね」
「ああ、君を取り戻す」
東郷は余裕の笑顔でスカーレットに返した。
「そうしよう」
「生憎だけれど私は今はソビエトの海賊よ」
共有主義者であるというのだ、ただしヒムラーに雇われてもいるのでこの辺りは複雑な事情があったりする。
「貴方の妻でなくね」
「生憎籍はまだある」
「離婚はしていないというのね」
「最初からそのつもりはない」
こう妻に返す。
「まあ見ていろ、君はもう一度俺のところに戻って来る」
「そうなる夢を見て敗れるのね」
「それに共有主義はだ」
今度はスカーレットが今信じているこのイデオロギーについても言う。
「先はない」
「おかしなことを言うわね」
「おかしなことじゃない、共有主義は破綻する思想だ」
こう言うのだ。
「一見すると完璧だがな」
「人類を幸福にする完璧な思想よ」
「この世に完璧なものなぞない」
これは東郷の持論でもある。
「何一つとしてな」
「だからだというのね」
「そうだ、経済も社会も生き物だ、全てを管理し動かせるものではない」
東郷はスカーレットに対して言うのだ。
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