IS ~インフィニット・ストラトス~ 日常を奪い去られた少年
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第14話
前書き
またまた、更新が遅れて申し訳ないです。
色々あったんです、すいません。
高校最後のテストとか友達が推薦落ちたとかPCの調子が激しく悪いとかPS3が壊れたり。
とりあえず、前置きはこれくらいにしといて。
本編は林間学校初日です。一話丸々初日です。
では、どうぞ。
買い物から早数日。今日は臨海学校の日になりました。空には雲一つなく快晴という言葉がピッタリだと思います。初日は自由行動なのでとてもいい海水浴日和だと思います。
以上、感想終わり。
……とまぁ、何故こんな事をしているかといえば現状が原因だったりする。
「あ、俊吾君。これもおいしいわよ」
「そうですか。俺、お腹一杯なんでいりませんよ、楯無さん」
「そう?美味しいのになぁ、これ」
うん、そうなんだ。バスの隣の席が楯無さんなんだ。いや、最初は一夏と座ろうと思ったよ?けど、俺が座ったらいきなり楯無さんが座ってきまして、今の至るってわけですよ。学年内で一番少ない(と言っても、他のクラスよりもひとり少ないだけ)のA組のバスに楯無さんが乗るのは分かっていた。けど、これは予想外かな……。
それに、一夏が一人席になったことで一夏ヒロインズが隣の席を誰が座るかという論争が始まり、結果ジャンケンで決まったんですけど。正直あれが無いように一夏の隣に座ろうと思ったんだけどな。まぁ、仕方ない。
と言うか、楯無さんが隣に座るのは俺が気まずかったりする。この前、あんなこと言われたし……。まぁ、気にしないようにしてはいるけど気になるのは仕方ないよね。何気ない顔で隣に座る楯無さんを見てると、この葛藤がアホらしくも感じられるけど、気になるものは気になる。だって、男の子だもの。だって、今まであんなこと言われなかったもの。
何だかんだ、俊吾がそんな風に悩んでいると窓から海が見えた。バス内はさらに浮き足立つ。
海、ね。結構見慣れてるはずなんだけど、やっぱり場所が違うと印象も変わるものやね。というか、あんまり海って来たくなかったんだよな…………。来るならもうしばらく後が良かったかな。まぁ、そんなことも言ってられないか。
「さて、宿までもう少し時間がかかるが、あともうすぐだ。降りる準備をしておけ」
千冬がバス内の生徒に向けてそう言った。みんながお菓子やらトランプやらを片付け始める。そんな中、俊吾は海をずっと見つめていた。それに気づいた楯無は俊吾に話しかける。
「俊吾君?どうかしたの?」
「いえ……何でもありませんよ」
俊吾は弱々しく笑った。
「もしかして……優君のこと?」
「いえ、違いますよ。気にしないでください」
「俊吾君……出来る限り、私を頼って欲しいな」
「え……?」
「一人で抱えると潰れちゃうわよ?何事も適度に吐き出すのがいいって言うじゃない。私が言うのはおかしいけど、事情知ってるわけだし、頼って欲しいな」
楯無は優しそうな暖かい笑みを浮かべながらそう言った。やはり、その笑みには心が落ち着かされる。何故だろう?と心の中で反復するが答えは出てこない。けれど、やっぱり心が軽くなる感覚を俊吾は感じていた。
「……思い出してたんです。昔、優と一緒に海水浴来たなぁ、って。ただ、それだけです」
「そう……。じゃあ、今年の思い出話を聞かせてあげたら?」
「そうですね。楽しませるような思いで作らないとですね」
宿に着くまでの間、二人は雑談をした。
◇ ◆ ◇ ◆
数分すると、今日泊まる宿についた。木造建築の平屋建てで、結構年季が入っている。風情があり、ザ・旅館と言った感じだ。
「それでは、これから三日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員に仕事を増やさせないよう注意しろ」
「「「よろしくおねがいしまーす」」」
「はい、こちらこそ。今年の一年生も元気があってよろしいですね」
女将さんが周りをぐるりと見渡し、一夏に目が止まった。
「あら、こちらが噂の……?」
「ええ、今年は2名ほど男子がいるせいで浴槽分けが難しくなってすいません。ほら、あいさつしろ。それと大海。お前も来い」
「は~い」
俊吾が気の抜けた返事をすると、千冬が俊吾を睨んだ。俊吾はいつものように、シャキッとした。
「これから三日間、よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
最初に俊吾が言って、その後に一夏が復唱した。真面目モードの俊吾はいつもよりも凛々しさ2割増しで動いています。
「はい、こちらこそお願いしますね」
男子二人の挨拶も終わり、もう一度女将さんがみんなを見渡す。
「それじゃあみなさん、お部屋にどうぞ。海に行かれる方は別館で着替えができるようになっていますのでそちらをお使いください。場所が分からない場合は従業員に気軽に聞いてくださいまし」
みんなは返事をして旅館に向かった。一旦荷物を置いてから海に行くのだろう。俊吾はとりあえずその波に乗っていった。
「そういえば、一夏。俺たちの部屋ってどうなってるんだ?」
旅館の中に来たものの、部屋割りが分からなく俊吾はとりあえず一夏に聞いた。最初からまともな答えは期待していないが。
「確か、千冬姉が案内するとか言ってたけど」
マジか…………。俺、そんなこと聞いてないんだが。
「お前たち、何をしている。さっさとせんか」
俊吾が地味にダメージを受けていると、後ろから千冬にそう言われた。千冬が勝手に歩き出すので、二人はそれについていった。そして、着いた場所が意外と言ってはなんだが、意外な場所だった。
「あれ、ここって教員用の宿泊スペースですよね?」
「そうだ。お前たちはここの二部屋で寝泊まりしてもらう」
千冬が言ったように、部屋が二つある。だが、どちらがどちらなのだろう。
「あの、俺はどっちなんですか?」
「ああ、すまない。織斑が右、大海が左だ」
言われたとおり、部屋に入る。俊吾は、入ってすぐにドアを閉めた。
「あの…………織斑先生」
「どうした、大海」
「俺、ここであってるんですよね?」
「ああ」
ってことは、そういうことなのか……。仕方ないって言ったら仕方ない、のか?まぁ、いいや。部屋に入ろう。
俊吾はもう一度部屋に入る。そして、中には先客がいた。
「やっほ~俊吾君、さっきぶり~」
そこには楯無がいた。さっき、確認したから相部屋になるのは楯無のようだ。
「これでいいのか、本当に……」
「何が?」
「いえ、こっちの問題です。そういえば、一夏は誰と一緒なんですか?」
「確か、織斑先生よ」
…………ああ、何か納得。楯無さんは特別枠で来たから普通の部屋になるわけはないし、俺と一夏も普通部屋にすれば問題の元だもんな……。それに、安全性から考えても丁度いいか。ロシア国家代表にブリュンヒルデ。最強すぎるだろ、これ。
「何というか、全部仕組まれてたのかな……」
「あ、でも、私が来なかったら、俊吾君も織斑ファミリーに仲間入りすることになるわよ」
それって…………あの、姉弟と同じに部屋にぶっ込まれるとかそういうこと?
「それって、そういうこと……?」
俊吾は恐る恐る楯無に聞いた。
「そういうこと」
楯無はにっこりと笑った。もし、楯無が来ていなかったら俊吾は胃に穴が空いていたか、ぼっちになっていただろう。
「楯無さんが来てくれてよかったです。今、本当にそう思いました」
「そうそう、お姉さんに感謝しなさい」
ふふん、と軽くドヤ顔しながら楯無はそう言った。何だかんだで、そういう仕草が可愛いのがこの人、更識楯無である。
「じゃ、そろそろ海行きましょ?」
「そうですね、行きますか」
二人は荷物を持って脱衣所に向かった。
◇ ◆ ◇ ◆
「え~と、男子の着替えスペースは……」
旅のしおりを見ながら渡り廊下を歩いていると、外の砂利にパネルが立ててあった。
「…………『引き抜かないで下さい』?」
しかも何か手書きで書いてあるし……。これはあれだよね、構って欲しいんだよね。だが、俺はスルーします。だって、引き抜かないでって書いてあるんだ。この言葉の通りにすればいいんだ。
俊吾はそのまま進んでいった。そのまま少し行くと、男子の更衣室があった。
「今更だけど、何も部屋で着替えればよかったような気がする……」
どうせ男の着替えなんて服脱いで水着をさっさと履くだけだし、わざわざここまでくる必要あったのか?女子更衣室は部屋から近いから楯無さんとは早々に別れたし……。ま、今更だよな、うん。さっさと着替えて外出よう。
俊吾は更衣室に入ってパパッと水着に着替え、外に向かった。ここの更衣室は外に直接つながっているので、すぐに出れる。外に出ると、女子で浜辺が一杯だった。
「……こう見ると、IS学園ってレベル高いよなぁ。色んな意味で」
何とは言わない。言ったら変態になるんで。
「あ、俊吾君やっと来た~」
楯無の声がしたので、俊吾は声のした方向を向くと、全員が揃っていた。一夏はいつ出てきたのか分からんがちゃっかりいる。
「もう、遅いよ~。置いてっちゃおうって思ったくらい」
いっそ、置いていって欲しかったような……。嘘です嘘です。だから、睨まないでください楯無さん。
「で、みんな揃って何してるんですか?」
「みんなでビーチバレーしようって話になったんだ」
俊吾の質問にシャルロットが答えた。俊吾は人数を数える。自分を含め、8人いた。
……8人?え~と、今いるのはシャルにセシリアさんに鈴さんにラウラさん、楯無さんに簪に一夏、そして俺。あ、箒さんがいないのか。どうしたんだろう?
「なぁ、箒さんはどうしたんだ?」
「箒さんは調子があまりよろしくない様で、部屋で休んでいますわ」
「そっか。残念だな」
「仕方ないよ。色々あるしね、女の子には」
…………ああ、そういう。つまるところ、そういうことか。じゃあ、言及も何もしない。
一夏は一人でどういう事だ?みたいな顔をしている。多分、だからデリカシーが無いとかそういう事言われるんだろうな。まぁ、変なこと言ったらフォローしとくか。
「よ~し、じゃあさっさとチーム決めちゃいましょ!」
「そうだな。偶数だし、綺麗に分かれるな。どういう風に分かれる?」
あれじゃね、一夏&一夏ヒロインズ対それ以外で良くない?そしたら綺麗に分かれるだろ?でも、それを言う勇気は俺にはありません。
「私は一夏と一緒だ。嫁だからな」
「だから、それはおかしいって言ってるじゃない!」
「そうですわ!一夏さんは私の未来の旦那様ですのよ…………」
最後の方は小さくなって聞き取れなかったが、予想はできる。だから、何も言わない。
「というか、それでいいじゃないの?三人が一夏チームに入れば綺麗に分かれるし」
そう、今綺麗にグループが分かれている。三人の口論に巻き込まれる一夏とそれを傍観する俊吾、雑談をしている三人。これでいいじゃないんだろうか。協調性がないとかそういうことは言わない。
「あ、確かに、綺麗に分かれてるな。じゃあ、これでやろう」
……こういう時、一夏の単純さに救われるんだよな。有り難や有り難や。
「あの……俊吾くん……」
「ん、どうした、簪?」
「私、運動苦手で……足引っ張っちゃうから……私休むね……?」
「そんなの気にすんなって。迷惑かけるとかそんなのはいいんだよ。どうせお遊びなんだし」
「そうよ。俊吾君ならいくらでも迷惑かけていいから」
「それはおかしいでしょう、楯無さん」
「だって、俊吾君だから別にいいわよね?」
「俺だからって変でしょう。俺の人権はどこにいったんですか。……いやまぁ、問題ないですけどね」
「ほら、そうやって俊吾君は許しちゃうんだから口答えしないの」
口答え……なのか?まぁ、いっか。
「最後の抵抗みたいなものですよ。こうでもしないと、便利屋になっちゃいますから」
「僕はもうなってると思うけどね」
「え、マジで?」
言われてみれば、そんな気もするようなしないような。
「そういうことだから、簪ちゃん。一緒にやりましょ?」
「そうだよ。そんなの気にしたら僕だって同じようなものだし」
「……え?」
「あんまりビーチバレーって得意じゃないんだよね。バレーなら何とかなるんだけど」
「俺なんてバレーすら出来ないかもしれないぞ。丸一年やってないし」
中学の頃、二年はやったんだけど三年はやらなかったんだよな。代わりにバスケとか外でサッカーとかソフトボールとかやったからいいんだけどね。
「なら……やろう、かな…………」
「よし、じゃあ、試合やるか!」
画して、一夏&一夏ヒロインズVSそれ以外が始まったのだった。
◇ ◆ ◇ ◆
結果。
「なんだよ、あれ…………卑怯すぎるだろ……」
25対10で一夏&一夏ヒロインズの大勝である。そうなった理由は、代表候補生のスペックの高さだ。最初こそ、ラウラはバレーに慣れていなかったようだが、数回ラリーをするだけで要領をつかみ、何でもするようになる。他の代表候補生は元から上手くてバレー部顔負けの実力だった。そして、一夏も中々上手い方である。
対し、それ以外チームも楯無、シャルルの二人は善戦した。だが、2対4では勝ち目はないだろう。俊吾と簪は足でまといでしかなかった。
つーか、これってお遊びじゃなかったのかよ…………。何で、みんな途中でエンジンかかってるんだよ。全く……。
ちなみに、只今俊吾は海をプカプカと浮いている。試合のあと、周りの女子が参戦し俊吾の居場所が消えた。一夏を中心にみんなでバレーでもしているのではないだろうか。俊吾は溢れたので、一人でのんびり海水浴中だ。
「あ~、冷たいけど、丁度いいや。結構、暑いし」
本日の気温は29度。絶好の海水浴日和だ。それなのに、みんなは浜辺でビーチバレーに精を出している。俊吾もさっきまでその一員だったが。
そのまま、俊吾は十数分プカプカと浮いていたが、ふと浜辺の方向を見る。
「あれ……結構、離れてね?」
距離にして、50m強。知らぬ間に流れていたようだ。海流とかに乗ってしまったのだろう。このままでは、また離れてしまうだろう。
「取り敢えず、岸まで泳ぐか……」
少し、周りを見渡すと浜辺の十数メートル横に行ったところに岩場があった。距離も浜辺よりも岩場の方が近いので俊吾はそちらに向かった。
◇ ◆ ◇ ◆
「ふぅ~、ここまで来れば安心だな」
俊吾は岩場まで数メートルのところまで来ていた。すると、岩場に誰かいることに気づいた。
「あれは…………箒さん?」
白いビキニタイプの水着を着て、岩場に座って足だけを海につけていた。
何でここに……?調子が悪いんじゃなかったのか?……あぁ、あれか。今日は誰にも邪魔されないでゆっくりしたかったとかか。じゃあ、軽く声かける程度にしとくか。周り誰もいないし、目立つし、ここで声かけないわけにもいかないとおかしいし。
俊吾は岩場まで数メートルのところに来て、浅瀬まで到達し立った。
「箒さん?ここで、何してるの?」
一瞬、箒はビクッとしてこちらを見る。
「俊吾か……一体、ここで何してるんだ」
「いやぁ、いつの間にか流されてて急いでここまで来たんだよ」
「そうか……」
「まぁ、俺はそういうことだから戻るよ。そろそろ、お昼も近いし」
俊吾は体を浜辺に向ける。
「…………何も聞かないのか?」
俊吾が歩き始めると、箒から弱々しく声を掛けられた。俊吾は少しだけ後ろを向きながら言った。
「……聞いて欲しいなら聞くけど?それで悩みとかが解消されるならね」
「…………」
俊吾のセリフに箒は少し考えるように黙る。そして、口を開いた。
「いや……いい。これは私の問題だからな」
そういう箒の声には先程までの弱さはなかった。
「そっか…………。じゃあ、適当な時間に戻ってきてね。多分、居ないの分かったらみんな心配するから」
「分かった」
俊吾は今度こそ、浜辺に向かった。
◇ ◆ ◇ ◆
「はぁ~、流石国立のIS学園の臨海学校先の旅館だな。すげえや」
ただいまの時刻は、午後7時半を過ぎたあたりだ。夕飯を終え、皆は風呂に入っている。男子の一夏と俊吾は9時過ぎに風呂割りがくる。結構時間があるが、何だかんだでIS学園の生徒は多いのだ。仕方ないと俊吾は思い、部屋に向かっていた。
いや~、この調子だと風呂も期待できそうだな。昼夕共にご飯は凄かった。どっちも刺身なんだもの、本マグロなんだもの。夜に至っては一人一人に鍋が付いてるし、味も凄く良かった。素材の味が出るってのは、ああいうことなんだろうな。
ご満悦な様子で俊吾は部屋に入る。そこにはいつの間に戻ったのか楯無がいた。楯無は中央のテーブルに資料らしきものを広げて、何かしているようだった。
「あれ、楯無さん。もう戻ってたんですね」
「ん~、まぁ、色々やることあるからね。明日のこととか」
「あ~、明日といえば、試験稼動ですか」
林間学校の二日目は全生徒がISの稼動実験を行う。色々な会社から試作品が送られてきていて、それを生徒に使ってもらい生の声を集めるといったことをする。代表候補生にも色々と送られてくる。武器であったり、アタッチメントであったり、パッケージであったり。
「そ。結構、特殊な物で覚えることが多いから確認してるの」
「大変ですね。あ、お茶でも煎れますか?」
「ん~、じゃあ、お願いしようかしら」
「了解です」
俊吾は部屋に備え付けられている電子ポッドと茶葉を出す。コップに必要な量だけ先にポッドからお湯を入れる。そして、それを急須にいれる。お湯を無駄にしない為の技術である。あと、お湯がお茶を飲むのに適度な温度になるとか言われてる。
自分用と楯無用に二つお茶を煎れ、お茶請けと一緒に資料の邪魔にならないように出す。
「どうぞ。あと、一応お茶請けも出しときますね。疲れてるだろうから、甘いの選んどきましたから」
「ありがと。それよりも……」
楯無はじっと俊吾のことを見る。
「何ですか?」
内心、少し俊吾は楯無に見つめられ焦っていたがそれを出さないようにそう言った。
「こう言う所って、俊吾君気が回るわよね」
「……それはどう言う意味でですか?」
一瞬考えてもわからないので、そう言った。
「お茶も飲みやすように先にコップにお湯通してから急須に入れてるし、置く場所も私の邪魔にならないように置いてくれたし、お茶請けだって今の状態を見て選んでくれたじゃない」
「ん~、そうは言われましても、気を使ってるって感じはしないです。それが普通といいますか、自然といいますか。まぁ、癖と言ったほうがしっくりくるかもしれませんね」
「それだと、俊吾君が損しちゃうじゃない。それでいいの?」
一瞬、そう言われて俊吾は思った。損というのはどういうことなのだろうと。自分の中では損したな、という感情はある。けれど、それが前面に出てくることはないのだ。何故なら、俊吾は他人を前に出して、自分は後ろに下がり、他人に花を持たせるのが自分の役割だと思っているからだ。自分は普通。どれだけ頑張っても、その領域から出ることはない。そのように卑下にしているから、そういう思考になるのである、
「損してるとは思ってないですよ。理由は自分でも分かってないですけど、今は楯無さんに頑張ってもらいたいなって思ったらそうなった感じです」
俊吾は優しげに微笑みながら言った。自分の思っていることを口に出すと、自然と微笑みが出たのだ。
「…………まぁ、何というか、俊吾君らしいっちゃらしいのよね、その台詞」
それはどう言う意味だ?と思っていると楯無は続けた。
「でも、その台詞に魅力を感じちゃうのはどうしてかしら……。やっぱり、私が―――」
コンコン、とノックが聞こえた。
「は~い」
楯無が何も言わないので、俊吾が返事をする。
「俊吾~、みんなで人生ゲームでもしようって話してるんだけど来る?」
部屋に入りながらシャルロットがそう言った。
「ん~、じゃ、行こうかな」
今、この部屋に楯無と一緒にいるのが少し気まずく感じたので、俊吾はシャルロットの誘いに乗った。
「あ、先輩も一緒にどうですか?」
ここはみんなのムードメーカーシャルロットが楯無も誘う。だが、今回は俊吾だけには間違った選択だった。
「私は遠慮しとくわ。色々やることあるし」
「あ、明日のことですか?大変ですね」
「まぁ、一応国を背負ってるから、そんなことは言えないわよ」
「じゃあ、お邪魔しちゃ悪いので先に行きますね。頑張ってくださいね」
そう言って、シャルロットは先に部屋を出た。
「え~と、さっきの話の続きは何ですか?楯無さん」
それを口にするには気が引けたが言っておかないとダメな気がしたのでそう言った。
「ううん、別に何でもないわ。ほら、早く行かないとシャルロットちゃん待たせちゃうわよ」
どこか悲しげに楯無は言った。それが気になったが、俊吾は言葉の通りにすることにした。
「あ、楯無さん。仕事もいいですけど、お風呂も入ってくださいね。そうすれば、効率も良くなると思いますよ」
俊吾はそう言い残し、部屋を出ていった。
「…………そうやって、人のこと気遣うの止めた方が良いわよ、俊吾君。だって……」
楯無は俊吾が出ていったドアを見つめながら呟いた。
「勘違い…………しちゃうじゃない」
◇ ◆ ◇ ◆
一方、そのころ、衛星軌道上に人参の形を型どった何かが漂っていた。
「しくしくしくしく、いっくんもちーちゃんも箒ちゃんも引っ張ってくれなかったよ~」
一人、その中で静かに泣いていた。
後書き
途中で最初に考えてた構成を忘れたりとか色々ありましたが、何とかなりました。
途中で話おかしいだろ!となるところもあるかもですが、すいません。
えと、一応解説を…………と思ったけど解説する場所ないっすね。
あ、楯無さんだけしときます。この小説の中ではお姉さんキャラだけど、乙女です。あんまり男子に耐性なかったりします。だから、最後あんなことになってます。
あと、以外に一夏の評価が低いです。一夏の本領はここからですけどね。
では、また次回会いましょう。
…………………そいや、ISの新刊っていつ出るんだろう。8巻酷かったし、また酷いのかなぁ。
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