問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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短編 あるお盆の物語 ⑩
では、再び第一部隊のところへ戻るとしよう。
「砕け、貫け、叩き潰せ!」
「剣よ、病魔の化身を斬り捨てよ!」
「あたりはせぬよ、その程度!」
殺女が金剛力の拳を振るい、匁が日本刀二振りを振るうも、崇徳は軽々とかわし、自らの刀で防ぐ。
そして、その隙を狙って美羽が猫操りをしようとするが、さすがに崇徳には効かない。
「やっぱり・・・いつも通りじゃ駄目だよね・・・」
「去年私達の攻撃が効いたのも、一輝さんたちが弱らせてくれたからですし・・・」
「だが、泣き言を言っても始まらん。今ここには、私達しかいないのだからな。」
「話している暇などないぞ!」
崇徳はそう言って病魔を広げていく。
が、美羽がそれを操り霧散させるので、その攻撃も当たらない。
「ただ・・・向こうのあれも、私なら防げるみたいですし・・・」
「どうにかして一太刀浴びせる事ができれば、勝機はありそうだな。」
「それが一番難しいんだけど、っと!」
そして、その間にも崇徳は攻撃を重ねる。
刀を振るい、けりを放ち、拳を振るうが、全て刀か金剛力によって防ぐ。
「ああ、もう!我らが神たる金剛力士よ!今一時、その力を分け与えたまえ!」
そして、そんな状況に業を煮やした殺女は、すぐに放てる中では最大の一撃を放ち、崇徳にあてる。
崇徳はそのまま吹っ飛び、結界にぶち当たる。
「よっし!このまま、」
「今のはよい一撃であった!」
それを隙と見た殺女は近づこうとするが、崇徳はたいしたダメージを負っておらず、返り討ちにあう。
「きゃあ!」
「すまん、殺女!」
「人を踏み台にしないでっ!」
「刀よ、切り裂け!」
そして、吹っ飛んでいく殺女を使って崇徳の元までとんだ匁は、天之尾羽張を崇徳に振るい、そのまま連続できり付ける。
「その刀、神すらを殺すものか。」
「そうだ!これならば貴様も、」
「だが、当たらなければ問題はあるまい!」
「な・・・!」
が、神すらを殺すその刃は一切崇徳に届いておらず、逆に匁が一太刀浴びてしまう。
「匁さん!大丈夫ですか!?」
「美羽が声を張り上げるとは、珍しいものだな。なに、後ろに飛んだから傷は深くはない。それより、何故あいつは傷を負っていない・・・?」
美羽はそうは言っても傷の深い匁の傷に治癒札を貼り付け、殺女と打ち合っている崇徳を見ながら説明をする。
「崇徳さんは・・・自らの体に病魔を貼り付けて、盾のようにしていました。」
「無限に出てくる盾か・・・当たらないわけだよ。」
治癒札による応急処置が済むと、匁は両手に三振りずつ刀を握り、立ち上がる。
「太刀数を増やしたら、どうにかなると思うか?」
「多分・・・無理、です。」
「そうだろうな・・・まあ、手がない以上はそうするしかない訳だが!」
「はい!」
美羽が猫操りで操って匁を空に投げ、匁は近くにいる崇徳を斬り、出来た隙を突いて殺女が踵落としで地に叩き落す。
その瞬間に美羽が簡易結界を張り、崇徳が空に逃げるのを邪魔する。
「その程度の結界では、」
「逃げる暇を与えなければよい!」
「だね!」
当然、崇徳は結界を破壊して空に向かおうとするが、殺女と匁が絶え間なく攻撃を放つことでそれを妨害する。
「ええい、うっとうしい!」
崇徳は匁が持つ刀を全て蹴り飛ばし、匁を別方向に投げ飛ばす。
「貴様も、何!?」
が、刀とは逆方向に飛ばしたはずの匁が刀を持って背後から切りかかるので、崇徳は慌てて避ける。
「上手く隙を突いたと思ったんだがな!」
「確かに、危ないところであった!褒めてつかわす!!」
「何も嬉しくはない!」
そして、崇徳の正面から切りかかっていた匁は一瞬で姿を消し、崇徳の背後から切りかかる。
「二度も同じ手は効かぬぞ!」
崇徳はそれに気付き、後ろを振り向くが、
「背後ががら空きだよ!」
「な、」
「そして、正面もな!」
「おまけで・・・上も、です!」
その瞬間に殺女に背中を殴られ、気を取られた一瞬の間に匁が袈裟切りをし、美羽の猫操りで地面に落ちたままの五本の刀が串刺しにする。
「ふう・・・私の意図に気付いてくれたこと、感謝する。」
「私は、体が動くままに任せたんだけどね。みーちゃんは?」
「私は、匁さんが一振りしか使わなかったので、もしかしたらと思いまして・・・」
さて、一つ種明かしをしよう。
まず、今回の作戦の目的は予定通りに成功している。
では、匁はどのようにして自分とは逆方向に飛ばされた刀を持っていたのか、一瞬での移動を可能にしたのか、という疑問が残る。
それは、匁が瞬間移動をしたり、瞬間移動をさせたりしたからだ。
匁には、自分が刀の元に飛ぶ奥義と、刀を自分の元に飛ばす能力がある。
一度目には自分の元にに刀を飛ばすことで奇襲をし、二度目には袖口に隠していた残りの二振りの片方を崇徳の背後に落とすことで崇徳の背後に移動し、連携攻撃へと移ったのだ。
「さて、これで倒せていれば万事解決なんだが、」
「・・・もう、手加減はせぬぞ!」
「そうも行かないみたいだね~。」
「どうしましょう・・・?」
「そもそも!」
三人が悩んでいると、本格的にキレたらしい崇徳は、口調を荒げ、
「あのような貧相な男に仕えているものどもが、我に傷をつけるなどあってはならぬことだ!人を見る目もない、ガキどもになぞ!」
「「「・・・・・・」」」
そして、その一言が種火となってしまった。
火薬を爆発させる、種火に。
「我らが神たる仁王よ、今、わが身にその力の全てを分け与えたまえ。わが身は砕けることなく、その全てを受け止めん。」
「刀よ、今我が名の下に集い、一振りの刀とならん。八つの頭は集い、新なる九の頭となる。」
まず、二人が危険なために使わないでいた奥義を使う。
結果として、殺女はその身に仁王と同じだけの力を宿し、匁は神をも殺す八つの刀を統合してより強力な、凶悪な刀を作り出す。
「人の子が、今更何をしようと、」
「うっさい。」
そして、一瞬で崇徳の正面へと移動した殺女が本気でその顔を殴り、結界へと叩きつける。
そこに打ち付けられた崇徳の顔は、もはや原形をとどめていないほどに、たった一撃でなっていた。
「今のは、一体・・・」
「死ね、このクズが。」
そして、立ち上がった崇徳に匁が二太刀を浴びせ、両腕を、病魔の化身ごと切断する。
「が・・・我が腕が、切り落とされるだと!?」
「我らが一族の祖たる猫多羅天女よ。我らが血の一部開放を、我は望む。我は一時人の身を捨て、化生となる。我が願いを聞き入れ、我が血を開放せん。」
そして、親指の皮膚を噛み千切り血を流した美羽は、血で両腕に一筋の線を入れながらそう唱え、先祖の血を開放する。
そうして十の尾を持つ巨大な化け猫となった美羽は、崇徳を殴り、殴り、殴り、止めを刺した。
今回の教訓、女性は怒らせると怖いです。
こうして、一つ目の戦いは、断末魔の声を上げることすらできずに終わった。
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