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久遠の神話

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第五十九話 三人の戦いその六

「百億位は手に入れられる程の」
「戦いそして生き残り」
「なるよ」
 必ず、だというのだ。
「この世に生まれたからにはね」
「富豪になってこそですか」
「世の中色々な夢があるだろうけれど」
「貴方はですね」
「そうだよ、何度も言うけれどね」
 金持ちになる、それこそがだというのだ。
「私の夢だからね」
「出来れば私はです」
 スペンサーは強い光をその目にたたえて話す王に対して決意はあるがそれでも残念さもあるその目で語ったのである。
「戦うことなくです」
「目的を達したいんだね」
「戦わずに目的を達することが出来れば」
 それでだというのだ。
「私は満足です」
「戦いたくはないんだ」
「軍人は戦いを好むものではありません」
 このことははっきりと否定する。
「少なくとも私はです」
「戦わずして勝つ、かな」
「そうです」
 まさにそうだというのだ。
「そうあることが最高ですので」
「アメリカ人らしくない言葉かな」
「戦いを避けるということがですか」
「うん、そう思うけれどね」
「それは先入観です」
 スペンサーは穏やかな微笑みで王の問いを否定してみせた。
「合衆国は必要な戦争は戦います」
「それでもなんだね」
「不要な、意味のない戦いは避けます」
「イラクのあれはどうなるのかな」
「当時のプレジデントが必要と思った戦争です」
 話のテクニックだった、スペンサーはアメリカ市民ともアメリカという国とも言わなかった。その国と国民、そして政府は別なのだ。
「ですから」
「必要な戦争以外はというんだね」
「アメリカ人でも。そして」 
 さらに言うスペンサーだった。
「軍人でもです」
「成程ね、そういうことだね」
「その通りです」
「わかったよ、貴方は決して攻撃的ではないですね」
「戦わずして目的を達することが理想です」
「そういう剣士が多いみたいだね、この戦いでは」
 王自身もそうであるのでよくわかることだった。
「いいね。ただ」
「ただとは」
「確かに私も戦いを避けたいよ」
 出来るなら、王もこう考えてはいる。
 だがそれでも、それだからこそとだ。ここでスペンサーに言ったのである。
「けれどこのままじゃ何時までも終わらないからね」
「だからですか」
「一度今いる剣士が全て集まってね」
 そのうえでだというのだ。
「総当りでもして決めないかな」
「十二人全員が一同に会し」
「そこでお互いに戦ってね」
「最後に残った剣士が願いを適える」
「まだ一人残ってるみたいだけれど」
「それでもですね」
「こうしたらどうかな」
 王は話をしてからスペンサーにその是非を問うた。
「悪いとは思わないけれどね」
「確かに悪くないですね」
 スペンサーもこう王に返した。
「賛成とさせてもらいます」
「大尉さんもそう思ってくれるんだ」
「長期戦は趣味ではありませんので」
「よし、じゃあ皆に伝えようか」
『そのことでしたらお任せ下さい』
 二人の耳にあの声が入って来た、ここで。 
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