久遠の神話
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第五十九話 三人の戦いその三
「そうなってるよ」
「広東料理は、ですか」
「そうなんですね」
「中国は本当に地域で料理が変わるんだ」
北と南だけではない、北京と上海に四川、そしてこの店であり王が作っている広東料理もそれに入るのだ。
「広東料理は点心にね」
「御飯ですね」
「それに海産ものに」
「中華料理の中で最も豪勢と呼ばれる」
王はにやりと笑った。餃子を収めた後は海鼠の干物を出していた。
それを包丁で切りつつ言うのである。
「私達の作っている料理だよ」
「ですね、そうしたことも頭に入れてですね」
「料理を作っていく」
「そうあるべきですね」
「そうだよ、あと注意するのは」
王は海鼠の干物を切りながら言っていく。
「御飯は冷やすな」
「中国ではですね」
「それは絶対にですね」
「だから炒飯もあるんだ」
これを餡かけにしても構わない。
「中国人は冷えた御飯は食べないよ」
「出されたら怒るんですよね」
「それは食べられないって」
「冷や飯を食べる人間にはなるな」
この言葉の意味はというと。
「罪を犯すなってことだよ」
「それだけ中国では冷えた御飯は嫌われるんですね」
「そうなんですね」
「そう、嫌われるよ」
実際にそうだというのだ。
「中国ではね」
「そこも日本と違いますね」
「それもかなり」
「うん、違うよ」
王の包丁は止まらない。他の面々もそれぞれ仕込みなり調理なりをしている。
今蒸し餃子を作り終えた彼も言う。
「熱い、これがですね」
「いいんだよ」
「火の料理だからですね」
「お刺身もあるけれどね」
刺身は元々中華料理である。水滸伝でも主人公である宋江が鯉の刺身を食べる場面がある。
「大体は火を通すね」
「そうですよね」
「それも火力はかなり強い」
「蒸す場合でも」
「そう、とにかく火を通す」
王は言う。
「それが中華だからね」
「だから熱くてもですね」
「それでも」
「そう、それでもしないとね」
はじまらないというのだ。こうした話をしてだった。
王は料理を仕込み作っていく、その店にだった。
今度はスペンサーが来た、彼は王が作った料理を食べる。
広東の五目海鮮麺に炒飯、それと点心系が幾つかだ。その中でピータンを食べてそしてこう言ったのである。
「家鴨の卵というものは」
「アメリカにもあるよね」
ここでその王が出て来てスペンサーに応える。
「そうだね」
「あります、中華街では何処でも」
「アメリカにも中華街があるね。私も言ったことがあるよ」
「そうですか。何処の中華街ですか?」
「ニューヨークにね」
まずはここだった。
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