万華鏡

「駄目？」
「あのマスコットも怖過ぎるから」
　これまた一目見れば忘れられない、怖いものは怖いのだ。
「刺激としてはね」
「強過ぎるのね」
「だから止めない？」
「その強いのがいいのに」
「インパクトはいいけれどあんたの提案はあんまりでしょ」
　パーマ将軍様なり奈良県の妖怪なりというのだ。
「もっと弱いものでね」
「そうなの、じゃあ」
「まあホームルームの時に提案しよう」
　具体的に何をするかは、というのだ。
「お化け屋敷にしてもね」
「そうね、まだ先ね」
「もう少し先よね」
　クラスメイト達も琴乃の言葉に応える。
「何かするにしても」
「ホームルームからだから」
「とりあえず私がお化け屋敷を提案するから」
　琴乃からだ、そうするというのだ。
「それでいい？」
「ええ、それじゃあね」
「お願いするわね」
「そういうことでね」
　こう話してだ、そのうえでまずは提案することにした。　　
　琴乃はこの話をだ、クラウンの面々に話すとだった。たまたまそこを通りがかった話を聞いた部長はこう言ったのだった。
「それ面白いじゃない」
「お化け屋敷ですか？」
「違うわよ、先代将軍様のことよ」
　面白いのはこちらだというのだ、小柄な身体を琴乃の横に腰掛けさせてそのうえで言った言葉である。
「l奇抜でね」
「確かに奇抜ですけれど」
「怖いわね、本当に」
　部長もこう言うのだった、見れば顔に少し暗いカーテンがかかっている。
「それは」
「そう思いますよね、やっぱり」
「誰でも、男女問わずあんなのが裸で集団で迫ってきたらね」
「精神衛生的によくない顔ですからね」
「身体つきもね」
　だらしなく肥満しきっている、尚且つ誰がどう見てもという顔である。
「かなりあれだからね」
「ですよね、刺激が強過ぎますよね」
「夢に出るわね」
　そこまで強烈だというのだ。
「一回見たらね」
「ですから、酷過ぎるので」
　インパクトがあり過ぎる、だからだというのだ。
「私どうかって言ったんですけれど」
「それがいいんじゃない」
　部長は琴乃の横に完全に腰を下ろしている、そのうえで彼女に寄り添う様にしてそのうえで言うのである。
「それ位でないと目立てないわよ」
「まずは目立つことだからですね」
「目立つことよ」
　何につけてもだというのだ。
「それもレベルは自分が思っているより上でね」
「それで目立つことですか」
「そうよ、それがコツだから」
　目立つコツ、それもあるというのである。部長はこのことを前提としてそのうえで琴乃に話すのだ。
「それ位しないとね」
「あんなのが集団で裸で来るんですよ」
「若しくは奈良県のマスコットの軍団よね」
「お化け屋敷にはなりますけれど」
　あまりもの不気味さ故にだ、どちらでもそうなるというのだ。
「本当にトラウマになりますから」
「私だったら顔中髭だらけ、胸毛も腹毛も脛毛ももじゃもじゃのガチムキ白ブリーフ男が出て来てもいいわね」
「それ何ですか？」
「田亀な世界よ」
　名前を出しての言葉だった。
「そういう腐女子が見たらボーイズラブの世界を根本から破壊する様な強烈なのが出て来る様なのがいいと思うけれど」
「それも強烈過ぎますよ」
「だから、そういうのがいいのよ」
　あくまでインパクト、目立つことを前提として言う部長だった。ある意味においてぶれない。