この明るい星空の下で。
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水上家の謎とクッキー。
「そう、この消えた先輩は・・・・私のお兄さんだよ。」
「っ!?」
俺は驚愕した。
夜空にこんな負い目があったなんて。
しかもその思いを持ちながらこの天文部に入り、
天体観測もやっていたなんて。
「ああっ、そんな顔しないで!私ももう気にしてないから。」
「だ、だけれど・・・・」
「もうそれはいいの。」
夜空の目は真剣で、どこか儚げだった。
「わかった。」
「それで相談なんだけどね。」
「ああ、」
「私のお父さんが私たちに残したもの、伝えたかったことを
知りたいんだよ!お願い奏くん!!」
「・・・それは出来ない。」
俺は夜空が持ち続けてきた思いを、そんな無責任に解説することは出来ない。
しかもこのことで夜空が傷付いたことは確かだ。
「そう言うと思った。だって奏くんは私のことを
よくわかっていて、今回も私が傷つかないようにしてるんでしょ?」
いや違う俺は全くお前のことはわかっていない。
そんな簡単に解ってしまってはいけないような深い傷なのだろう。
「・・・・・・・俺はお前の傷を癒すことは出来ない。
だけど俺がお前のお父さんの謎を解き明かして
お前の傷が癒えるんなら、それはお前が勝手に助かっただけだ。
それでもいいなら手伝う。」
「・・・・・・ありがとう奏くん!!」
「うおっ!」
夜空は、いつもどうりの笑顔で、俺に抱きついてきた。
「えへへ・・・奏くん~♪」
「お、おいっ離れろよ!」
「良いじゃん♪良いじゃん♪」
そして日が落ちる頃、俺は夜空のお母さんに車で送っていただいた。
「・・・事情はわかってもらった?」
「はい・」
「あの子は中学生のときから天文部に所属していたわ。」
そして・・・いやここからは言うのはやめておきましょう。
これはあなたたち天文部が判らなければいけないことよ。
はいこれ」
夜空のお母さんは俺に一枚の紙を渡してきた。
「これは?」
「これはあの子に関わったあなたたちの先輩の名簿よ。」
「ありがとうございます。」
「夜空は真相を知ったらどうなるか判らないけど、
そのときは奏くんがいるものね。」
「?」
そのとき車は家に着いた。
「じゃあね奏くん。お姉さんによろしくね♪」
「はい。」
「じゃ、」
車はUターンして家へ帰っていった。
「ただいま」
「お帰りなさい弟くん。」
「飯、いま作るから。」
「よろしくね♪」
俺は野菜炒めと味噌汁、唐揚げを振る舞った。
「さすが弟くん!とっても美味しいッス」
「たまには姉貴が作れよ。」
「やーだね♪」
「ちっ」
「あ~今舌打ちしたでしょ。ひどーい酷いぞ弟くん!!」
「ごちそうさま。」
俺は姉を無視して二階に上がっていった。
自室のベッドに座ると名簿を確認した。
高三
水上司
神条悟
高一
筒野佑香
????
????
「このクエスチョンマークはなんだ?」
「・・・・・まあいい寝るか。」
俺は強烈な筋肉痛と戦いながら寝た。
翌日
「おはようイザヨイ!」
「おう、」
「奏くん、おっハロー」
「なんだ?それは」
「まあなんでもいいじゃない。」
俺はクッキーの缶を出して一口食べた。
「ん?なにそれ?」
「今日の天文部の差し入れだ。
まあいい、俺はまだ宿題やってないからな。」
「え~やってないの?イザヨイ」
宿題を済ませて俺は放課後まで睡眠に走った。
キーンコーンカーンコーン
「ん・・・」
3時半
みんなは先に行ったのか教室には人はまばらだ。
俺は地学室へ向かった。
ガラガラ、
「やあイザヨイ、起きたのかい?」
「ああ、望月と夜空はどうした?」
「なんか勝負するとかいって出てったよ」
「そうか、三咲と相手するのは疲れるだろう。」
「なんでですか!?」
「うん、見てるだけで疲れて来るね。」
「だからなんで!?」
「よく頑張ったな。」
「ひどいですぅなんかいじめてきますぅ」
「まあ、今日は俺から差し入れだ。」
俺はクッキーの缶を取り出そうと思ったが、
「ん?・・・な、ない・・・」
「えぇぇ!?」
「せっかく楽しみにしてたのに残念だね。」
「なんでだ?絶対に入れていたはずなのに。」
「ひどいです!絶対に全部食べてやろうと
思っていたのに!」
「全部食うつもりだったのか!」
「でもおかしいね・・・絶対に入れたはずなんだろう?」
「ああ、俺が寝る前に確認していた」
「だったら寝てる間に取られたのかな」
「判らない・・少し考えて見るか。」
「腕のみせどころだね?」
「ふん」
まず、俺は朝来たときにちゃんと確認してバックに入っていたはずだ。
・・・クッキーのことを知ってるやつは・・・
「わかった。」
「えっもう?」
「ああ、こうするんだ・・ゴニョゴニョ・・・」
(それはいいね♪)
(やってやります!)
「まあいい、もう一個缶があるから食べるか?」
「はい!」
「貰うよ♪」
俺はもう一個の缶を取り出して封を開けた。
「うわぁぁぁ♪♪♪♪」
「大きいね♪」
「「「いただきまーす」」」
「うまいな。」
「最高です。」
「さすがだね♪どこのお店だい?」
ガタガタ・・・・
(来たか・・・)
「私にも食べさせて~」
「もう我慢できない!」
「やっぱりお前らか・・・」
「まあ妥当だね。」
「ずるいですよ先輩方。」
「えっ・・・」
「そうだ、もうクッキーは一缶しか持ってきてないからな。。」
「あはは・・・じゃあ私達はこれで・・・・」
「ちょっと待ちなさい?チミタチ・・・これで終わると思っていないよね。」
「ひぃっ!!」
「じゃ、お前らの驕りで。」
「よっしゃー奢りだぜ♪」
「そんなにお金無いよ~」
「待てっ逃げるな!」
夜空は、もうダッシュでバックを取り教室から出ていった。
「待てっ私は先輩たちにおごって貰うんだ!!」
「強烈だな。」
「頑張るね♪でもあの二人の足の早さは神が降臨してるよ♪」
「ああ、あいつらの足の早さは凄い。だが、俺は近道をする。」
あいつらが行きそうな道は予想できる。
俺は隣のフェンスを超え、山道に入った。
「食べ物の恨みは恐ろしいね。」
「はい、先輩をここまで本気にさせるとは・・・」
「はぁ、はぁ、降りきったかな?」
「ど、どうだろう。」
「甘いな。」
「えっ?」
「逃げるよ!夜空!」
「逃がしません!先輩には絶対に奢ってもらいます!」
「囲まれた!」
「もう、降参だね。」
「まだだよ!」
夜空はフェンスの上を飛び越え、走っていった。
「あそこまでするか?普通。」
「しないね・・・」
「要はアホですね」
「私でもそこまではしないよ。」
・・・・落ちかかっている夕日は、夜空の得意気な顔が浮かんでいるようだった。
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