気まぐれな吹雪
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第一章 平凡な日常
18、アポとれやアポ
「なぁ、ツナ」
「なんだよ」
「霜月って奴の家、知ってるか?」
「知ってるもなにも、隣の家だよ」
「! ………そうか」
「お前、家に乗り込んでまで霜月さんのこと勧誘する気か?」
「ピンポーン」
「お前なぁ!」
†‡†‡†‡†‡†‡
ピピピピピピカチッ
「ふぁ~」
現在朝の4:00。
半ば寝ぼけ状態でベットから降りる要。
その目の前に、銀がいた。
「要、武器できたぞ!」
かなりのドヤ顔である。
がしかし、1秒後にはその顔に要の拳がめり込んでいた。
「ぐはっ」
「銀、オレは昨日のうちに終わらせろと言ったはずだぜ? どうして今になってんだ?」
「いや、でも、できたのは昨日だったんだ! ただ、お前が寝ていただけで……」
ボクゥッ
「ぐはっ」
「そんなのが理由になるとでも? オレが寝てたんなら、あの世界に呼びだしゃよかったんじゃねぇのか?」
「いや、でも、その……」
「あ?」
凍てつくような目で銀を見据える要。
この視線に耐えられるものはそういないだろう。
銀はどちらかと言うと……どちらでもない。
TPOとやらである。
「できたんならさっさと出せ」
「……はい」
こいつ鬼だ、とか思いながらも、銀は恐る恐る短刀を差し出した。
要はそれを受けとると、まじまじと見つめる。
銀は、その様子を静かに見守った。
気に入ってもらえなかった場合、どうなるかを予想しながら。
「パーフェクトだな」
「すみません! ……って、え?」
思わず謝ったが、それがお咎めではないと気づき、驚く。
すると要は、短刀をそれぞれ両手で逆手持ちすると、大きく息を吸った。
「吹き抜けろ 霜天氷龍」
刹那、二本の短刀は、柄に氷の龍がついた、一対の短剣となった。
「ざっとこんなもんだろ」
(お前、転生する世界間違ってるだろ)
思わず、要がやちるに突っ込んだ台詞と同じことを思った銀であった。
要は、リボーンの世界で斬魄刀とは随分と噛み合わない組み合わせであると自分で思いつつも、やりたくて仕方がなかったのだ。
だがしかし、実はこれ霊圧霊力云々は全くの無関係である。
もちろんのことブレスレットの力を借りてではあるが、簡単に説明すると以下の通り。
自分の中にもあるであろう死ぬ気の炎を短刀の中に流し込む。
あとは、匣兵器の要領で自分にあった力を持つ斬魄刀と化させたのだ。
ちなみに、ここで使われているブレスの力は、要が頭に思い描いたこの図案(?)を可能にしたこと。
さらにちなみに、要はここで使った自分の死ぬ気の炎の属性が何なのか、分かっていない。
軽く振ると、短剣はもとの短刀へと姿を戻した。
ピンポーン
「お客様が来たみたいだな。オレは帰るぜ、じゃあな」
「ああ」
すると銀は、突然現れた白い靄に紛れるようにして消えていった。
残された要は、玄関のドアを開ける。
「やあ」
そこにいたのは、山本とツナ、そしてリボーンの三人だった。
「よっ、要」
「あの、こんな朝早くにすみません。リボーンがどうしても会いたいって言うので……」
「ちゃおっス。お前が霜月要だな。オレはリボーン。ツナの家庭教師だ」
「お前なら見たことあるぜ。いつも沢田の近くにいる赤ん坊だろ? こいつの家庭教師とは、ご苦労なこったな」
「まあな。それより、家に上がってもいいか?」
笑顔で言うリボーンだが、山本とツナは心配そうに二人を見比べた。
山本はともかく、ツナからしたら要はある意味危険人物でもあるのだ。
と言っても、入学式の騒動をいまだに引きずっているだけなのだが。
要はというと、静かに目を閉じて、口には不気味な笑みを浮かべていた。
「何ももてなさねぇがな、それでもいいなら上がれよ」
それを聞いて二人はホッとする。
しかし実際のところ、要はリボーンにのみ殺気を送っていた。
ごく僅かに、普通では気づけないほどごく微量に。
無論、一流の殺し屋である彼は気づいていた。
気づいていながらも、わざと気づかない振りをしていた。
「で、何のようだ? こんな朝っぱらから」
「お前、マフィアに興味はねーか?」
遠慮と言うものは知らないのか、最初から本題にはいるリボーン。
しかし、
「ない」
要はキッパリと言い放った。
「なんだ、マフィアを知ってんのか」
「おあいにく様。用はそれだけか? なら帰れ」
「なぁ、要。オレも入ってるんだけど」
「知ってるよ。屋上から見てたし」
「え!? あの日見てたんですか!?」
三人は驚きを隠せない。
まさかあの日の出来事を知ってる人がいるなんて。
しかしまぁ、普通に考えれば、あんだけドンパチやっていればむしろ気づかない方がおかしいだろ。
「そうか。んじゃ、今じゃなくてもいいから、気が変わったらいつでも言え」
「嫌だね。気なんて絶対に変わらない。マ
フィアなんて関わったところでどうせロクなことないだろ」
「そうですよね、マフィアなんていだだだ!」
台詞の途中でリボーンにつねられるツナ。
ボスとしての自覚を持て、ということである。
「んじゃあな、邪魔したな」
「お邪魔しました!」
「要、また学校でな」
結局、リボーンとしてしっくり来ないまま、彼らは家に帰ることにした。
三人が家を出た瞬間に要がガッツポーズをしたのは、本人だけの秘密。
†‡†‡†‡†‡†‡
「な、言っただろ? そう簡単には折れないぜ」
「確かにな。だからこそ折ってみてーな」
「て言うかリボーン! あんまりクラスメイトまで巻き込むなよ!」
「ツナ、あいつと仲良くなれ」
「はあ!?」
「仲良くなるのもファミリー勧誘の近道だぞ」
「ハハッ、ナイスアイディアなのなそれ」
「ちょっ、山本まで……。て言うか、何で霜月さんに拘るんだよ」
「普通の奴は、マフィアなんて知らねーぞツナ。お前にしろ山本にしろ、始めは知らなかっただろ?」
「だからって……」
「あいつが何者であれ、マフ ィアのことを知っている奴はやちるのように有力なファミリーになる」
「て言うかそこだよ! 何か霜月さん、やちるちゃんと相性悪いみたいだし、そもそも生徒会と風紀委員って昔から対立関係みたいだし!」
「確かに、先輩たちのそのまた前とかから対立してたらしいぜ。やっぱ、校内の秩序云々があるんじゃねーの?」
「て言うか、何でよりにもよってあの人が風紀委員になっちゃったのー!?」
「なんか、雲雀に無理やり入れられたって話だぜ?」
「嘘ー!? それってつまり雲雀さんのお気に入りってことじゃん! 余計無理だって!」
「ん? その雲雀って誰だ?」
「並中の風紀委員長で、最強の不良だよ」
「なるほどな。ま、それはともかく、友達になっとけ」
「話戻ったー!?」
とまぁ賑やかなツナご一行でした。
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