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万華鏡

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第四十六話 ゆるキャラリレーその二

「巫女とか歌舞伎役者とか一杯いるけれどな」
「ヨーロッパの貴族までな」
「どの部も気合入ってるけれどな」
「特撮の怪人までな」
 今にも火を吹いて叫びそうな連中もいた、巨大化した三分しか戦えないヒーローがそこにいても不思議ではない。
「傾奇者もいるしな」
「鎧武者もいるな」
「その中でだからな」
 そのゆるキャラなのだ。
「目立つな、あの中でも」
「今の部長結構気合入ってるからな」
「身体は小さくても肝っ玉があるからな」
「やってくれたな」
「あんた達も見ていなさいよ」
 競技に参加する為にグラウンドに入場する行進の中からだ、部長はその彼等にプロレスラーの様に指差して言った。
「うちの部をね」
「ってあんた鹿かよ」
「鹿三郎になってるのかよ」
「ええ、そうよ」
 まさにその通りだとだ、部長も言う。
「この通りね」
「自分も参加してるのかよ」
「部長自ら」
「そうよ、こうしてね」
 着ぐるみを着て競技に参加するというのだ。
「見てなさい、凄い走り見せるから」
「はいはい、そこまでね」
「後は競技でね」
 歩きながら宣言する部長を左右から馬と牛が囲む、二年の同級生達だ。馬は赤馬で牛はホルスタインだ。
「そこで見せようね」
「場外パフォーマンスはそこまでよ」
「わかったわ、じゃあね」 
 部長は馬と牛に応えて言う。
「赤兎馬さんとホルスタ仮面」
「副部長でしょ」
「書記よ」
 馬と牛はそれぞれむっとした声で部長に返した。
「それが今の私達でしょ」
「間違えないでしょ」
「どっちも宮崎の八条馬牧場と北海道の八条牛乳のゆるキャラじゃない」
 だからそう呼んだというのだ、部長は。
「だからいいじゃない」
「よくないわよ」
「そんなこと言ったら誰が誰かわからないでしょ」
 二人は部長に即座に突っ込みを入れる。
「全くあんたは」
「どうしていつもそうなのよ」
「いつもっていつもかしら」
「そうじゃない、どう考えても」
「誰が見てもね」
 二人も負けずに部長に言う。
「全く、普通にやってればいい部長なのに」
「歌も演奏もいいのに」
「それで何でその性格なのよ」
「困った性格してるから」
「まあまあ、今から走るするってことでね」
 部長は全くへこたれてはいない、まさに不沈戦艦である。
 その狐の姿をした不沈戦艦がだ、堂々と言うのだった。
「とにかくいいわね」
「全く、何言ってもびくともしないんだから」
「鉄の心臓よね」
「鉄じゃないわよ、防弾ガラスよ」
 それだとだ、部長は自分で言うのだった。 
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