八条学園怪異譚
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第四十六話 秋のプールその十二
「もう少し欲しいって思ってるけれど」
「あと三センチ位よね」
「五センチとはいかないけれどね」
こう聖花に返す。
「三センチはね」
「つまり一五八センチね」
「そう、それ位欲しかった、いや欲しいけれど」
言葉を過去形にしようとするところで慌てて現在系に訂正した。
「一五五ってぎりぎり小柄なのよね」
「あれっ、そうなの?」
「小柄でしょ、一五五だと」
こう聖花に返す。
「私子供の頃から小さいって言われてたし」
「ううん、そのことはね」
幼馴染みだからだ、聖花もそのことはよく知っている、何しろ愛実がそれでいじめられていた時に助けたことも多いからだ。
しかしだ、それでもこう彼女に言うのだった。
「一五五だとね」
「気にすることないとか?」
「別にね。そこまでは」
「そうかしら」
「そうよ、小柄なことの何処が悪いのよ」
気にする愛実に茉莉也も言う。
「私を見なさい、私を」
「先輩ですか」
「一五一あるかどうかよ」
一五〇かも知れない、その愛実より小さいことは間違いない。
「というかかえってね」
「小柄な方が人気あるんですね」
「そうよ、何度も言うけれど」
「だといいんですけれど」
「大丈夫、女の子は小さくてもね」
背が高くともよいが小柄ならそれはそれでだというのだ。
「そういうことなのよ」
「だといいですけれど」
「胸も大きいし」
茉莉也はここで杯を持っていない左手をそっと出してきた、出してきたのは愛実の胸の方だ。愛実もそれを見てすぐにだった。
その胸を自分の手ですぐに守る、ガードの姿勢を取ったのだ。そのうえでこう言うのだった。
「あの、またですか」
「いいじゃない、減るものじゃないでしょ」
「その言葉完全にセクハラ親父のものじゃないですか」
「細かいこと言わないの」
「言います、ちょっと油断したら」
「女の子同士だからいいでしょ」
「よくないですよ、本当に先輩は」
困った顔で言う愛実だった、やはり茉莉也の方が一枚上手だ。
その茉莉也は愛実だけでなく聖花も見ている、そのうえでこうも言った。
「チャンスは幾らでもあるからね」
「幾らでもって」
「またそんなこと言われるんですから」
「まあまあ、とにかく今日のことはこれで終わりでね」
へこたれない茉莉也だった、そして。
酒も飲む、そのうえで今度は半魚人に言う。
「今回は残念会、けれど次があるから」
「うむ、今は飲もうぞ」
「そうしましょう」
言いながら和食でビンガを飲んでいくのだった、愛実と聖花もそれを飲みつつそのうえで楽しむのであった。
第四十六話 完
2013・8・5
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