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八条学園怪異譚

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第四十六話 秋のプールその十

 それで実際にだ、結構な勢いで飲んでいる。そのうえでこう言うのだ。
「ウォッカに比べたら弱いですね」
「流石にあれと比べたら」
「ウォッカは劇薬よ」
 そこまでだとだ、茉莉也も言う。
「私もボトル一本ね」
「普通ウォッカボトル一本一気に飲むなんてしないよ」
「人間技じゃないよ」
 河童達もキジムナー達も突っ込みを入れる。
「ちょっと以上にね」
「有り得ないよ」
「そうかしら」
「うん、そうだから」
「有り得ないから」
 また言う彼等だった、そして。
 二人はそのビンガを飲んでだ、また言うのだった。
「甘いしかなり癖があるけれど」
「美味しいよね」
「これならね」
「飲めるわよね」
「氷いる?」
 茉莉也は二人にこれも勧めた。
「ロックにする?」
「あっ、別にそこまでは」
「ストレートでいけます」
 そのままでいいというのだ。
「氷もいいですけれどね」
「とりあえず今は」
「そうなのね、じゃあいいけれど」
「はい、じゃあどんどん飲んでいきましょう」
「是非」
「ふむ、確かに飲むな」
 半魚人は二人を見ながら呟いた、その間も頭にはネクタイがある。
「これは将来が楽しみだ」
「うん、いい酒飲みになるよね」
「このままいくとね」
 河童とキジムナー達も言う。
「というかもうそうじゃないの?」
「毎日みたいに飲んでるから」
「来年には私みたいになるわね」
 茉莉也もこう言って笑顔を見せている。
「いや、楽しみだわ」
「確かにお酒は好きですけれど」
「先輩みたいにはなれないですから」
 二人は嫌そうな顔で茉莉也の今の言葉に返した。
「普通にうわばみさんと飲み比べされてますよね」
「普通有り得ないですから」
「何言ってるのよ、お酒は飲めば飲む程ね」
 どうなるかというのだ。
「強くなるのよ」
「耐性が出来るからな」
 半魚人もここでこう言う。
「アルコールにな」
「私の肝臓は鋼鉄よ」
 こんなことも言う茉莉也だった。
「ちょっとやそっとじゃ壊れないから」
「そのちょっとやそっと以上ですよね」
「無茶苦茶飲んでますから、毎日」
「目指せ達磨さんよ」
「何でそこで達磨さんが出るんですか?」
「今のはわからないです」
 二人は茉莉也の今の言葉には首を傾げさせてしまった、一体どういった意味なのか全くわからなかったのだ。聖花でもだ。 
 その二人にだ、茉莉也は笑ってこう話した。
「高橋是清さんのことよ」
「あっ、明治の政治家の」
「総理大臣にもなった」
「そう、あの人のことよ」
「何でその人なんですか?」
「その人と達磨さんにどういう関係が」
「これがあるのよ、あの人は外見が丸々としてたからね」 
 その体型からだというのだ。
「達磨さんって言われてたのよ」
「それはわかりました」
「そうだったんですね」
 二人はまずはこのことは納得した、高橋是清は実際にこの仇名だった。そう呼ばれて国民から親しまれていたのだ。 
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