問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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短編 あるお盆の物語 ①
これは、一輝の高校一年の夏休み、マヤの一件よりも後に有ったお盆の話である。
一輝は一族の墓参りをしていた。
一輝が白澤を殺した後、自分の一族がどれだけ生き残っているかを調べると、全く同じ日に全て妖怪の群れに殺されていた。
それゆえ、一輝は一族全員の墓を回らねばならず、割と大変なのだが一切口を言わずに行っている。
死者への敬意は、しっかりと持っているのだ。
そうして、鬼道、贄殿、そのほかいくつもある分家を合計十三件回り、墓参りは・・・一輝のお盆の重要イベントの一つは終わる。
一輝はそのまま、もう一つのイベントのために東京にある陰陽師課の本拠地へと向かった。
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「さて、第一席から第十席まで全員そろいましたか?」
「第一席、『降神師』夜刀神白夜、います。」
「第二席、『犬神使い』犬神慈吾朗。すでにおる。」
「第三席、『型破り』寺西一輝。寝てもいいか?」
「第四席、『化け狐』稲葉前、既にいますわ。人を呼び出すのなら茶ぐらい出しなさい。」
「第五席、『白澤図』粂神豊。そこ二人、ふざけたことをぬかすな。」
「第六席、『化け猫交じり』匂宮美羽。あの・・・すいません。」
「第七席、『刀使い』九頭原匁。匂宮、何を謝っている?」
「第八席、『式神使い』星御門鈴女も既に。大方、何も言うことがなかったのだろう。」
「第九席、『金剛力』土御門殺女。別に何も言わなくていいのにね~。」
「第十席、『雷撃』雷剛拳。うむ、全員おるな!」
途中からふざけだすものもいたが、これが日本の陰陽師のトップ十人である。
性別としては、上から男、男、男、女、男、女、女、女、女、男。
年齢は第二席がご老人。第十席が三十代。第一席、三席、六席、七席、八席、九席が十代後半。第四席、五席は二十代だ。
性格については台詞から考えてください。
そして実力についてだが、上三人が抜き出ている。
実際の序列では一輝と前の間には一つしか違わないが、実力面では本当に、桁が違う。
その違いは、霊獣クラスか、それ以上の存在を単独で撃破できるか否か、にある。
「はい、大丈夫ですね。この後、皆さんを食事お連れしますので、稲葉さんはもうしばらくお待ちください。後、寺西さんは寝ないでください。」
そして、この全体の進行を担当している人は陰陽師課のトップ、闇口光也。一応、陰陽師である。
座っている席は
殺女 匁 豊 一輝 白夜
光
也
拳 鈴女 美羽 前 慈吾朗
といった席順となっている。
「さて・・・今回集まっていただいた理由については、説明する必要がありますか?」
「ないな。毎年のことだ。」
「そうだね~いつものごとく、お盆のイベント。」
「妖怪の大量発生について、だな?」
「その通りです。今年は、明後日に彼岸の扉が開きます。」
お盆といえば、霊が帰ってくる日としても有名だ。
それゆえ、過去に退治された妖怪の霊が帰ってきて再び顕現したり、妖怪の妖力が高まったりして世界中に大量の妖怪、魔物が発生する。
中には大物もいるため、迷惑極まりないイベントだ。
「あら、結構遅いですわね。」
「去年はいつもよりも強めに封印をかけましたから・・・」
「まあ、多少前後しようと関係あるまい!我々のやることに変わりはないのだからな!!」
「拳殿の言うとおりだな。むしろ、準備期間が長いことを喜ぶべきだ。」
「個人的には、さっさと終わらせてゆっくりしたかったんだけど。」
「これもまた、我ら十人の仕事じゃ。受け入れよ。」
ちなみに、一輝が第三席についたのは一年前、中学三年生のときのことなので、このイベントに参加するのは二回目である。
「で、今年はどの手で行くのだ?去年と同じか?」
この質問は、白夜によるものだ。
一応、第一席がこういったことを聞くという流れになっている。
「あれかー。時間はかかる方法だったけど、楽しかったよね~」
「確かに、あれだけすっきりとする方法ならば、文句は言いません。まあ、気に入らなければ容赦なく言いますが。」
「だが、あれはやりすぎだ。冷静に考えれば分かることだろう、この戦闘狂どもが。」
「あの・・・去年は豊さんも楽しそうでしたよ?」
「そんな事実はない。訂正しろ、『化け猫交じり』。」
「ひぅ・・・すいませ」
「謝ることはない。去年の豊殿は確かに楽しそうにしていたのだからな。」
「うむ!あのような第五席は見たこともないくらいに楽しんでおった!」
ちなみに、その作戦とは一輝の提案に賛成七、反対二、中立一で決まったもので、とても単純なものだった。
本当に単純で、同時に負けがありえない陣形。
つまり・・・十人が全員共に動き、目に付いた妖怪を消していくというもの。
ザコの妖怪は何もできずに消え、最後に現れた霊獣、夜刀神でさえ、完全なオーバーキルとなった。
「いえ、さすがにもう一度あれをやろうとは思いません。確かに被害は少なかったですが、」
少なかった理由は、強い力がお互いにぶつかることによって相殺されたからだ。
「何が起こるかとひやひやする羽目になりましたから。あんな心臓に悪い作戦、もう二度としたくありません。」
「「「えーーーーーーー。」」」
「そこ三人、我慢してください。」
文句を言ったのは、一輝、前、殺女の三人だ。
「で、どのような手で行くのじゃ?」
「複雑なのは・・・やめてください・・・」
「大丈夫ですよ。去年ほどではありませんが単純です。」
そう言いながら、十人にプリントを配る。
そこには
『第一部隊』リーダー『降神師』メンバー『式神使い』『雷撃』
『第二部隊』リーダー『犬神使い』メンバー『化け狐』『白澤図』
『第三部隊』リーダー『型破り』メンバー『化け猫交じり』『刀使い』『金剛力』
と書かれており、約三人が小さくガッツポーズを取った。
「この三部隊に分かれていただき、各担当地域の妖怪を殲滅。霊獣クラス以上が出た場合には、担当が終わったものからそこに直行していただきます。」
「メンバーはこれだけでか?」
「殲滅は基本このメンバーで、避難などには地域の陰陽師にも参加してもらいます。」
「俺のところの男女比がおかしいのは?」
「人数が多いのは、貴方を取り押さえる必要が出た時用です。この中で一番の問題児は、間違いなく貴方ですから。男女比は、上二人に貴方のところにいる女性を入れると、その二人がコミュニケーションを取れるとは思えません。」
第一席、二席、弱点は女性である。
それぞれの部隊にいる女性は、そいつらが唯一まともに話せる女性だ。
そして、一輝の部隊にいる三人は、ガッツポーズを取ったメンバーだ。理由は・・・まあ、ご想像いただきたい。
一年の間に一輝に助けられた、などのイベントがあった、とだけ言っておこう。
「ああ・・・そういうことか。了解。情けない上司達のためにも受け入れましょう。
まあ、特に文句もないし。」
約二名文句をいいたそうにしているが、事実であるために何もいわない。
「では、担当地域を指定させていただきます。第一部隊には北海道から新潟辺りを。第二部隊には兵庫県あたりから沖縄県までを。第三部隊は残り全てです。何か質問はありますか?」
場所割り、かなりテキトーである。
「では、質問は無いようなので、これで終わりとします。現地入りは明後日の朝までにしてくださればいつでも。宿泊費など費用が出た場合にはすべてこちらに請求するようにしてください。
そのあたりの話し合いも含めて、只今よりお食事に行きましょう。」
そうして全体としての話し合いは終わり、食事で部隊ごとの話し合いをすることになった。
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