問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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短編 一輝と湖札の物語 ②
さて、前回決定した修行内容の確認といこう。
①一輝&湖札vs鬼道父で行う。
②使っていいのは式神のみ、数などに制限はなし。
③一輝&湖札ペアが負けた場合、二日間修行漬け。
④鬼道父が負けた場合、修行メニューを五倍。
⑤勝利条件は先に相手の式神を破壊し尽くすこと。
⑥一度破壊された式神は、今回の勝負で使うことが出来ない。
以上である。まあ、有利不利は火の目を見るよりも明らかだ。
「お母さん!開始の合図お願い!!」
「はあ・・・どうなっても知らないわよ。・・・始め!」
鬼道母が合図を出すと、三人の親子は同時に式神を取り出し、
「「「式神展開、“攻”!」」」
式神を召喚する。
今回展開したのは三人が三人揃って鎧武者。
数は、鬼道父が三十体、一輝が五体、湖札が五体だ。
「それだけしか展開できんか!」
「いや、できるけど。」
「あっさり終わってもつまらないでしょ?」
この二人は、もうこのころには式神を同時に百体は操れる。
この場でそれをしないのは、単につまらないからである。
「この・・・何が何でも全力を出させてやる・・・!」
そう言いながら鬼道父は式神を一輝たちに向ける。
「さて、一人十五体でいい?」
「うん、競争ね!」
そう言いながら、二人は自分のほうに向かってくる十五体に自分の式神を向かわせ、一気に破壊しつくす。
「終わったけど、同時だったかな?」
「そうだね。やっぱりこうなったかー・・・」
ここで、二人の式神についての適正について記しておこう。
まず、一輝は操作もそこそこに高いが、それ以上に攻撃特化である。
一輝の式神は攻撃力がかなり高くなり、一撃で鬼道父の式神を破壊して見せた。
次に、湖札は攻撃力もそこそこに高いが、それ以上に操作特化である。
操作技術がかなり高いため、スピードが高く、攻撃の的中率は100%だ。必ず狙ったところに攻撃があたり、鬼道父の式神の弱点に正確に攻撃して見せた。
「さて、もう終わり?それならそれでいいんだけど。」
「そんなわけないだろう・・・式神展開、“攻”“防”“封”!!!!」
もう半分やけくそである。この場合、封は役に立たんだろ。
とはいえ、同時に百体以上展開して見せたのはすごいことである。そこまで怒りが高いのか・・・
「これで・・・どうだ・・・」
「いや~凄いんだけど・・・息切れてるぞ?」
「それに、これで父さんが持ってる式神全部じゃない?もう少し戦いに工夫を混ぜようとは思わないの?」
自分の限界を超えて見せた父に対して、もの凄い言いようである。
「さて・・・こんなんでも父さんは新しいものを見せてくれたわけだし、こっちも別のやり方でいこうか?」
「うん、父さんにはまだ見せてない方向でね。」
そう言いながら、一輝は三枚の式神を取り出し、湖札は手持ち全てを取り出す。
そして、まずは一輝が力を見せる。
「式神展開、“武”!」
そう、本編では使ったことがあるが、このころ、一輝以外にこの式神を得た人間はいない。
式神を武器の形で展開したものは過去にいたが、武器そのものが式神であることは初なのだ。
今回作り出したのは、自分の身の丈にあった日本刀と、短刀を二振りだ。
次に、湖札が力を。
「式神統合。形状、和弓。」
そうつぶやくと、湖札の持つ式神が宙を舞い、一つに混ざっていく。
そして、その渦の中心に手を突っ込み、引き抜くと湖札の手には立派な和弓が握られていた。
これが、湖札が自ら作り出した技、式神統合。
名前の通り、式神を統合して一つの武器を作る技である。
余談だが、ペスト戦で一輝が作った機尋の弓矢は、今湖札が作り出した和弓のビジュアルを参考にした。
「な、何だ、それは・・・見たことも聞いたこともないぞ・・・」
「まあ、昨日朝起きたら急に手元に来てたやつだからな。うちの神様の機嫌でもよかったんじゃないか?」
「私のも、お兄ちゃん以外には教えてなかったやつだしね。まあ、こんなお披露目になるとは思ってなかったけど。」
そう言いながら、一輝は日本刀を、湖札は和弓を構える。
「待て!今回のルールでお前達が戦うことは禁止されている!」
「何言ってるの?今回禁止されてるのは、式神以外を使うことだぞ?」
「そして、今私たちが使ってるのは式神でしかないんだよ?」
「「そうである以上、これは一切ルールに触れていないぞ!」よ!」
まあ、この兄妹の言っていることは一切間違っていないのだが、普通今までになかった力を使ってくるとは想像しないだろう。
「この、そんな技を・・・」
「持っていたんですな、これが。」
「それに、ルールには触れてないんだからこのまま戦ってもいいよね。」
「というわけで、一気に行くぞ!」
そこからの戦いは、もはや戦いと呼ぶことさえもはばかられた。
鬼道父が式神を向ければ、一輝が先行して切り裂き、援護として位置する湖札が切り残しを貫く。
一輝の日本刀を振りにくいようにと大量に近距離に送ると、一輝は獲物を小刀に変え、小回りを利かせて切り裂いていく。
ならばと遠距離から二人を狙わせてみれば、湖札がそれを正確に穿ち、意味を成さない。
最後の手段とばかりに二人を分断し一輝には遠距離、湖札には近距離で攻めてみれば、一輝は小刀を投げて攻撃を出来そうなものを潰し、動きを阻害すると一気に近づいて切り裂く。
湖札はもはや矢を矢として使わず、両手に握って突き刺していく。
それから、三分とかからずに鬼道父の式神は全滅し、鬼道兄妹の圧勝で幕が下りた。
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