ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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二部:絶世傾世イケメン美女青年期
百十五話:調査と疑惑
「……なんか、気に入らねーなー。なんてーの?いちいち、ちょっと失礼じゃね?こっちは頼まれてきてやってんのにさー」
「うむ。特に、故意にドーラ様にぶつかろうとした輩。ヘンリー殿がドーラ様を庇っておらなんだら、拙者がその場で斬り捨てておったやも知れぬ」
「ピキー……」
宿に向かおうと、村長さんの家を出た途端。
仲間たちが、一斉に不満を吐き出します。
みんな、私のために怒ってくれてるわけですが。
「まあ、まあ。私は、気にして無いからさ。あの人たちも村が大切なだけで、悪気は無いんだろうし。長く付き合う相手じゃ無いんだから、イライラするだけ損だよ」
みんな、自分のためならそこまで怒ってないだろうし。
私のためにイライラさせてしまうなんて、なんだか申し訳ない。
「……まー、おいらだって、あんなヤツらにどう思われても、どーでもいーけど。ドーラちゃんに妙な態度取るのが、気に入らないだけで」
「左様。片田舎の村人風情が、ドーラ様のお慈悲に縋る分際で、あのような態度とは。無礼も極まってござります。拙者らはどう扱われようと構いませぬが、ドーラ様だけは」
「なら、もういいね。私が、気にして無いんだから。私も、みんながいてくれるから、大丈夫だから。悪い魔物が人に迷惑をかけてるなら退治したいし、本当はいい子なのにそうしないと生きていけないなら、その子を助けてあげたいし。村の人のことは置いといて、仕事はちゃんとしよう。用が済めばすぐ出ていくんだから、もうこの話は終わりにしよう」
「んー。ドーラちゃんが、そう言うなら」
「……御意」
「ピキー」
納得はしてないながらもなんとか了承してくれたところで、宿にたどり着いて女将さんに迎えられ、部屋に案内されます。
「お客さんなんて珍しいから、驚いただよ!今は化け物に畑が荒らされて節約してっから、たいしたものは出せないけども。あるもので、なんとか奮発すっから!」
「それなら。町で食材を買ってきたので、それを使ってくれませんか?使った残りは、そちらで引き取ってもらって構いませんから」
ひもじい思いをしてる村だというのは知ってたので、それは準備してきたんですよ。
ただでさえ足りてない食糧を私たちのために出させるのは、なんだか申し訳ないので。
こういう気のいいおばちゃんとか、子供なんかもいるわけだから。
「あれまあ。そりゃ、助かるけども。お客さんにそんなの出させたら、悪いべさ」
「客と言っても、お世話になる身ですから。宿代だとでも思って、受け取ってください」
「そうかい?なら、ありがたく。腕によりをかけて、おいしいもん作っからね!腹減らして、待っててな!」
「期待してます」
おばちゃんに食材を渡して、荷物を置いて。
「さて。ちょっと、散歩してくるね。村の様子も、もう少し見たいし」
「そうか。なら、俺も」
「一人で大丈夫。村の人たちも、もうほとんど家に帰ってるみたいだったし。私だってこんな格好なんだから、絡まれることも無いだろうし。男同士でそんなにべったりくっついてたら、おかしいって」
さっきもちょっと、妙な目で見られてたし。
都会は色んな人がいるし、他人のことなんてそこまで気にしないけど。
こういう田舎だから余計に目立つってことも、あると思う。
「いや、だけど」
「大丈夫だから!行ってくるね!」
「……あんまり、遅くなるなよ」
「うん!」
さっきの警戒の余韻でか、またやたら心配してくるヘンリーを振り切って、一人で宿を出ます。
モモが畑を荒らすという話は、ゲーム通りなんですけれども。
あのモモが、考えも無く人に迷惑をかける行動を取るとは、どうも考えにくいので。
キラーパンサーは基本は肉食だろうとは言え、野生の獣と違って、内臓まで含めて生食させるわけにもいかなかったので。
加熱した肉だけではビタミンが十分に取れないから、栄養を考えて野菜も与えてたし、モモも喜んで食べてたからそこもおかしくないんですけど、実際の被害状況をちゃんと確認しておきたい。
というわけで、荒らされた畑に近付いて、様子を観察します。
モモにかじられたらしい野菜の残骸が、まだそこに残されていますが。
……キレイに食べてますね。
おいしいところだけかじって後は残すとか、そんなことはなくて。
食べられない部分だけ残して、ひとつの野菜をキレイにたべてます。
足跡も残されてますが、他の野菜を踏みつけないように、気を使って歩いた様子が見て取れる。
うん、さすがモモ!
お行儀の良い、賢い良い子ですね!
正直、そんな大騒ぎして大金かけて退治するような状況には思えないのですが。
あんな大型の魔物らしい生き物が、人の目に付くような形でこんな小さな村に出入りするのでは、危機感が高まるのも無理は無いのか。
今はこの程度の被害でも、放置すればもっと大胆に荒らされるようになるとか、仲間を連れてこられるとか。
事情を知らなければ考えてしまっても、おかしくは無いからね。
ともかく、モモは相変わらず賢い良い子であるらしいことが確認できたところで、畑から目を離して立ち上がると。
「ドーラさん!ここにいただか!」
遠くから私の姿を認めたカールさんが、声をかけながら駆け寄ってきました。
「カールさん。何か、ご用でしたか?何か問題でも?」
「んだ。おら、ドーラさんにちょっくら、話があって。探してただが、一人ならちょうど良かっただ」
「探させてしまっていましたか。すみませんでした、話とはなんですか?」
「……ヘンリーさんのことだ」
はて。
ヘンリーのことで、わざわざ私を探してまで、一体何の話があるというのか。
さっきの乱暴な扱いに、実は結構怒ってたんだろうか。
「……先程はヘンリーが、失礼しました。悪気は無いのですが、どうにも過保護なところがありまして」
「いや、おらのことはいいんだ。そうか、過保護……だか……」
怒っているわけでは無いんですね。
それは良かったが、なら何なのか。
なんだか言いにくそうな感じで、こっちをチラチラ見てるんですけれども。
え、カールさん、そんなキャラじゃ無いよね?
遠慮して言い淀むとか、そんなキャラじゃ無いよね?
遠慮?なにそれおいしいの?って感じで、ガンガンくるキャラだよね、むしろ。
「カールさん?どうかしましたか?」
「……いや、都会には、色んな人間がいるって言うだし。おらには信じられねえが、あれはどう見ても……」
「カールさん?……気になることがあるなら、はっきり言ってくれませんか?」
意味がわからないし、あまり引っ張られてもめんどくさいんで。
「あ、ああ!……んだな!……ヘンリーさんだが、……だ、男色の、気が、あるんだべか!?」
「はい?」
え、ヘンリーが?
男色?
いわゆる、BLですか?
……なんで??
……踊り子さんに全く反応しなかったから、それだけ見てたらそう思ったかもしれないけど。
美少女ドーラちゃんにはちゃんと反応してたし、他の男性に興味を示すなんてことも全く無いし、それは無いと思うんですけど。
何故に、そんな疑惑が……。
……はっ!まさか
「……カールさん、まさか……。ヘンリーに、何かそれらしいことを、されたりなんか」
「ま、まさか!!そんなわけねえべ!!」
「……ですよね」
見たところ、私に近付く害虫みたいな扱いでしたもんね。
普通に無いよね、それは。
「でも。それなら何故、そんな」
「……ドーラさんだ!ヘンリーさんのドーラさんを見る目は、普通でねえ!あれは、男が男を見る目でねえだ!まるで……まるで、好いた娘っ子を見るような、そんな目だった!!」
ああ。
そういう。
「……そう、見えましたか?」
「んだ!!あれは、そうとしか……男が、男をなんて、おらには信じられねえけんども!!そうとしか、見えねかっただ!!」
「そうですか……」
好意の種類は、知らないが。
何らかの好意があることだけは、間違いないだろうから。
それはそれで、間違いではないんだろう。
……しかし意外と鋭いな、カールさん。
思い込みが激しいし、あんまり話を聞いてくれないし。
もっと、鈍いかと思ってた。
「……ドーラさん。その、……大丈夫だか?ドーラさんもそうなら……おらが、口を挟むようなことでねえけど。ドーラさんも、その、……だ、男色の!気が!!」
「いえ。無いですから、それは。男色とか、私もヘンリーも。違いますから、全く」
「だ、だども!!ドーラさんはともかく、ヘンリーさんは、そうとしか!!気付かねえままで、む、無理矢理……!お、襲われるようなことにでも、なったら!!」
噛みすぎだろう、カールさん。
どんだけ動揺してるんだ。
そんなに衝撃的だったのか、男色疑惑が。
……しかし、これは心配してくれてるんだよね。
色々と、方向が明後日だが。
「大丈夫ですよ。ご心配はありがたいですが、そんなことはありません」
「だども!!なら、なして、あんな……!!」
「私が、女だから」
「そうだ、まるでドーラさんが、女みてえな!!そうだ、男色でねえ、まるでドーラさんが」
「ですから、女なので。私が」
「……なんだべ?」
「女なんですよ、私は」
「……女?……ドーラさんが?」
「はい。私は、女です」
先程までの激しい動揺から一転、きょとんとして私を見詰めるカールさん。
うん、やはり思い込みが激しいね!
ここまでたどり着くのに、何回言わせるんだ!
別に男色疑惑のままでも実害が無ければいいんだが、この心配ぶりでは実害がありそうだからなあ。
私の男設定を押し通す必要は特に無いし、さらっとバラしてみたが、どうだろうか。
しばしまじまじと私を見詰めていたカールさんが、突然吹き出します。
「……ぶはっ!ドーラさんも、なかなか冗談が上手いだな!さすが、都会もんは違うだ!ははは、おらで無かったら、信じっちまうところだよ!はは、あはははは!」
「……はあ。信じなかったんですか?カールさんは」
言っても信じてもらえないとは、予想外です。
さすがの思い込みの強さと言うべきか。
「当たり前だ!あんな、腕っぷしの強えとこさ見せられて!あれが女だって、それはねえべ!そんなら、おらたち男の立場がねえ!」
「はあ。見てなければ、信じてくれたんですか?」
男にするように、バンバンと私の肩を叩きながら言い募るカールさん。
確かに、あんな強い女性は、そうはいないと思いますけれども。
ましてこんな田舎では、生涯お目にかかる機会は無いのが普通だと思いますけれども。
でも実際、ここにいるのになあ。
「んだ!確かに、ドーラさんは娘っ子みてえな綺麗な顔さしてっから!ヘンリーさんが、娘っ子にするみてえに惚れちまっても、無理もねえと思うだども!でも、まさか!ドーラさんが、女だとか!!あっはははは!!」
「はあ。……そんなに、おかしいですか」
なおもバンバンと私を叩き続けながら、笑い続けるカールさん。
……思い込みが激しいにも、程が無いですかね?
そこまで、笑うところか?
と、思ってると。
「大体!年頃の娘っ子が、男に見せかけるなんて、できるわけがねえべさ!ほれ、胸だって、この通り」
私の肩を叩いていた手が突然狙いを変え、パンパンと胸を叩きます。
……って、……はい?
「この通り、……この、通、り……?」
数回叩いたところでカールさんの手が動きを止め、私の胸の上で固定されます。
そのまま無言で形を確かめるように、撫でさすり。
さらに感触を確かめるように、指が、動いて
…………え?
何?
何、されてるの、私?
叩かれて、触られて、撫でられて、揉まれて……
…………揉まれてるんですけど!!
停止していた思考が動き出して我に返ったところでバッと身を引くと、カールさんがそのままの状態で固まってます。
……指だけは、まだ微妙に動いてますけれども!!
「……カールさん?」
「…………え?…………まさか…………本当に、だか?」
「……!!」
…………あれだけ揉んでおいて、言うことがそれか!!
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