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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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SAO編
  第51話 リュウキの伝説



――………リュウキの話しは半ば伝説になりつつある。

 様々な層を闊歩している事事態は、広範囲で活動しているだけで、そこまで特質する様な事ではないが、このアインクラッドは常に死と隣り合わせとなっている。
 幾ら安全マージンを取っているとは言え、想定外の事態は何時も発生している。その想定外と言う事態から、死に直結する事態に見舞われる事も少なくない。

 そんな場面に不運にも遭遇した時、颯爽と助けてくれた。

 と言う情報が異常なまでに多いのだ。そして、それが誰なのかは、言うまでもないだろう。中堅プレイヤーに特に多いが、経験した と言うなら上層 下層と全範囲だ。
 そして、更に広がったのには理由がある。とあるプレイヤーがリュウキに助けられ、何とか情報を……と、言う事で《鼠のアルゴ》に接触をするのだ。
 勿論アルゴは、リュウキに関する情報は殆ど扱っていない。以前の勇者伝説の情報の中にあった通り、『ラッキーダったネ!』で終わらせているのだ。

 そこからが、アルゴの独壇場。

 何があったのかを悉に聞くと、その《情報を売る》のだ。リュウキに助けられた、即ち《白銀の剣士》に命を救われた。と。
 これに関しては、リュウキの情報を事細かに発信している訳じゃないから、リュウキ自身は何も言えないだろう。……別に気に求めていない様子だったが。

 そんな感じで、情報が出回れば 当然の如く『私も……助けてくれた』と言う他のプレイヤーからの声も上がる。

 SAO最大のギルド、血盟騎士団でもその話は、異性間で結構話題になっているのだ。

 全体の絶対数の女性プレイヤーは少ないが、ギルドに所属している女性プレイヤーはそこそこはいる。デス・ゲームとなっているこの世界だが、元々は若い女の子。

 その中でも、リュウキのその情報が一番だった。
 
 勿論、鼠のアルゴ情報だけではない。こと、この世界、アインクラッドの攻略においては、その実力は無類の強さを誇る。前線で戦っているプレイヤー達、血盟騎士団でもそれは知っている。
 アルゴの情報にあった通り、迷宮区などで、危機に陥ったとき、彼が助けてくれた。と言う話もアルゴ情報以外でもよく聞く。

 戦って、そして助けてくれる。そんなのを魅せられたら、彼の事を感謝するし 何よりも《恰好良い》と強く思っている。最初の頃は、可愛いと言う印象が多かった。でも、それはもう随分昔の様な気がする。
 最前線で戦っている姿を見れば、もう……薄れている。だったら、お話してみたい!と思う女の子も多い。

 当然、ビーターと言う名はまだ蔓延っているし、異性達には印象が良いのだが、同性間ではそうもいかないのも、仕方が無い事である。 この件に関してはリュウキは完全にスルーをしている為、別段気にした様子は無かった。

 そして、ここからは、女の子の間では色々と厄介な問題。
 
 何よりも厄介なのが、リュウキとコンタクトの取る方法が極端に少ない事。誰かリュウキとフレンド登録をしていれば、親しくしている者が居れば間接的に、と思うのだけど、『フレンド登録をしている人いないんじゃないかな?』とも思える。

 彼は常に、ソロ。

 唯一、よくパーティを組んでいるのが、キリトだった。よく(・・)と言っても、片手で数えられる程度の数だ。基本的に、リュウキは誰とも組んでいないから、情報が無いに等しい。だから、こんな感じで出会う確立は非常に低いのだ。それに、フードで顔を隠している事も拍車をかけている。


 レイナは、そんな彼に会えた事を、幸運に思う。

――……ずっと、会いたかった。会議とかそう言う名目じゃなく、プライベートな時間で会いたかった。

 その想いが叶ったのだから。



「……じゃあ、行こっ!」

 レイナが指をさした先にあるのは転移門。つまり、行き先はこの層じゃない、と言う事。

「ん? ……この層じゃないのか? 確かに飲食関係の店は少ないが、無い事はないだろう?」

 リュウキは別の層へ飛ぶのであろうレイナを見てそう聞いた。鉄の都と呼ばれている所以なのか そう言った類の店は極端に少ないのである。そして、グレードも決して良いものじゃない。
 リュウキにとって、それは別に気にしていないから、何処でも良いと思っていた様だ。

「んー……私は、ここの層あまり好きじゃないの。なんだか、冷たい感じがするから」

 リュウキの問いに、レイナはそう返していた。
 この層に対する印象はリュウキも同じであり、理解出来る事だったから、それ以上は何も言わず、頷いていた。

 レイナは、勿論その理由もあるが、それ以上に そもそも、リュウキと一緒に食事に行くんだからこんな味気ない、殺風景な風景の場所でなんて絶対に嫌と思ってもいたのだ。

 ならば、47層の……≪フラワーガーデン≫とかどうだろうか?とも思う。確かに、その場所には彼女自身は行ってみたいけれど、流石にまだ、ハードルが高い様だ。あの場所はデートスポットとして有名だから。

 それに何よりも。

「一方通行……だし……」

 レイナは、自分でそう思ってしまい、少し落胆してしまった。頑張ってアプローチをしようとしても、本当に暖簾に腕押し。
 自分だけじゃなく、殆ど全員。そして まだ希望が0と言う訳じゃない事があるから良いものの……、ダメージは高く、常に高威力だ。

「ん? 一方通行? ……別にこちらから飛んで、此処へ帰ってこられないようなトラップは各層のそれも主街区には無いと思うが。フィールド上のワープトラップの類ならまだしも」

 リュウキは、勿論、レイナが言う『一方通行』の真意をはき違えて答えていた。確かに意味的には、間違えてはいない事だが……。

「そ……そう言う意味じゃなくて……。あぁぁっ……もうっ!」

 レイナは頑張って説明をしよう、と思ったのだが直ぐにそれを止める。

 とても、貴重な時間が減っていく、早く減っていくと感じたから。
 レイナにとって、どんな宝石よりも、ダイヤモンドよりも貴重な時間が無くなっていくのが怖い。レイナだってギルドに所属している、副団長補佐を勤めているのだ。
 だから、私事で規律を乱すわけにもいかない。勝手な行動をとって休みを入れる訳にもいかないから。

「りゅ、リュウキくんっ! いこうっっ!」

 レイナは、手を差し出した。思い切りの勇気をもって。

「………ああ」

 リュウキは、半ば観念する様に、そのレイナの手をとった。

 こう言ったシチュエーション、無いわけじゃない。以前に会った少女、ビーストテイマーのシリカの時もそうだった。
 その差し出された手を拒否しても喰らいついてくるようで、大抵拒否できずに最後は握るんだからと。この時、拒否をしたら、レイナは『まだ、早かったのかな……』と落ち込みつつ、諦めていただろう。

 今回のこれは又々偶然にも、リュウキが答えてくれたのだ。それはレイナにとって僥倖であると言える。

「さぁ、ど……どこいっか??」
「……全て任せる。何処でも良い」

 レイナは、手を握れた事に、喜びを隠せられず、そしてリュウキは、顔を背けていた。

 そんな姿を見たら、あのリュウキの戦闘の時の姿が嘘の様に感じる。他人の好意にぜんっぜん気づいてないのに、恥かしがり屋って言うのがまた一段と高威力で、レイナの(ハート)に、ずきゅんっ! と来るのだ。
 シャイなのがやっぱり凄く可愛らしい。

「ッ……///」

 レイナは、リュウキを見て思わず顔を赤らめた。

「………」

 リュウキも顔を背けているからそんなレイナには気づかない。傍から見れば、2人のその姿はとてもぎこちない。でも、しっかりと手は繋がっているから、とても初々しく見える事だろう。
 恋人同士になったばかりの2人。そう連想もしやすい。

 そんな時だ。

「あれ……? レイ?」

 2人の傍に近づいてくるプレイヤーがいた。それは、NPCでは無かった。
 そのプレイヤーは、2人ともよく知っている人物だ。……いや、知っている所じゃない。 レイナの事を《レイ》と呼ぶのは、この世界では、かなり少ない。
 レイナは、その声がした瞬間、振り返った。
 
「お、おっ! お姉ちゃんっ!? 何で、どうして此処にっ? 今日の朝、別の層に行くって……」
 
 そう、ここに来たのはレイナの姉。

 《血盟騎士団 副団長アスナ》だった。

「うん……。確かに出かける予定だったけど、ちょっと団長に報告があってね? でも それより、レイは何をしてるの……ッ!」

 アスナは、そう聞いてしまったのが失言だったと直ぐに思った。
 レイナと手を繋いでいるプレイヤー、彼の姿を見て。
 
 そもそもレイナが誰かと手を繋ぐ……なんてことこれまでに一度も無かった事だから……驚いていなかったら嘘になる。それに、その姿はフードで頭をすっぽり覆っていたから、不審にだって思うだろう。でも、よくよく見てみるとその人が誰なのか判ったのだ。

「久しぶりね。リュウキ君」

 アスナは確信が言ったようにそう言う。それは間違いなかった、フードの中に見えたその銀色の髪。そして、彼の雰囲気もそうだ。今は白銀のコートは羽織ってないようだが。それだけの情報で十分だった。

「………ああ、そうだな。だが、レイナにも言ったが攻略会議で何度か会っているだろう? 一ヶ月前にも会っているし、さほど 久しぶりと言うわけでもないだろう」

 アスナが来た事に、勿論リュウキも気づいていて。見知ったアスナ以外だったら、もっと恥ずかしくなってしまっているだろう。だから、リュウキにとっては良かったのだろう。
 
「まぁ、そうだね。……ん~、でもリュウキ君はさ? 会議終わったらいつの間にかいなくなってるから。あまり話してないし、……そう思っちゃうのも無理ないんじゃないかな? レイだってそう思ったと思うよ」

 アスナは、そう言い終えると、レイナの方を見る。その顔はとても赤く染まっていた。アスナは一歩レイナに近づくと。

「ふふっ……頑張ってね? レイっ」

 レイナの肩を叩き、耳元でそう囁いた。アスナはどうやら、大体の事を把握したようだ。

「う……///」

 レイナは、それを聞いて真っ赤っ赤になってしまう。でも、最後には赤いなりに必死に笑顔を作って。

「うんっ……///」

 レイナはこくりと頷いた。応援をしてくれているのはとても嬉しかったから。それに、姉とライバルにならなかった事も嬉しかったのだ。

「……ん?」

 リュウキは、何の事か? と2人を見たが。

「さっ、いってらっしゃい」

 アスナは笑顔でレイナの背中とリュウキを押した。

「うんっ!行ってきます!」
「……ああ」

 レイナとリュウキは頷く。そして、レイナは再びリュウキの手を握ろうと伸ばすがその手は空を切ってしまった。何故なら、リュウキは先に歩いていってしまっていたから。

「ああっ!リュウキ君、待ってよっ!」
「……ああ、そうだったな。」

 最後はレイナが半ば強引にリュウキの手を握った。
 リュウキは……頭をかきながらも、決して邪険したり、振りほどこうとかはせず顔は背けてはいたが、しっかりとレイナの手を握っていた。

 そんな2人を見送るアスナ。

「ふふふ………」

 アスナは、その姿を見て自然に表情が綻ぶ。
 2人を見ていて、とても和む。確かに……こうしている間にも、自分達の現実での貴重な時間は失われてるのは事実だ。正にこの瞬間もそうだった。
 でも、こう言うのは必要だって思える。
 誰かに寄り添う事って、心の安息だって必要なんだと。

「でも、相手があのリュウキ君じゃ……かーなりきつそうだなぁ……レイ」

 アスナは、レイナの事は凄く可愛いって思っていて、自分にとって自慢の妹だ。
 自分よりずっと可愛いと思っているのだ。レイナは、明るい性格だし、……それに比べて現実世界での自分は誰かの背中に隠れて生きてきた。ずっとそうなんだって思った時だって あったけれど。
妹の存在があったからこそ、強い姉でいられた。とも思えるのだ。

 一歩勇気を出せた時だってあるって。

 そんな自慢の妹なんだけれど、リュウキは、いかなアプローチをも華麗にスルーしてしまいそうなのだ。彼は他人から好意を受ける。恋愛の感情、男女における、異性間の感情。
 そう言ったものが判らない、と思えるから。

「あぁ~、ほんと。上手くいってほしいな……やっぱり。でも……」

 妹の事も大事だけど、自分だって……そう言うのがあったら、と思わないといったらウソになる。幸せそうな妹を、まだ一方通行な感じだけど、必死に向かう姿見ていると、そのやっぱり……。

「妬けちゃうかなぁ……。私も……」

 アスナは、思ってる事をつい口に出して、言ってしまっていた。
 そして、同時に『誰かいないかな?』とも思ってしまった。

 アスナは、これまでに求愛、結婚は何度か男性プレイヤーに迫られたけれど、そんなんじゃない。
いつかちゃんと恋して……本当に好きって思える相手。
 自分も、相手も、お互い好きって思えあえる……そんな相手と巡り会えればと。

「んー………。んっ!?」

 この時ふとアスナの頭に一瞬浮かんだ。
 それは、リュウキと真逆のコスチュームの姿を纏っている者で、2つ名が《黒の剣士》の……。

「……な~んてね? ……さっ、団長のところに行かないと。」

 アスナは苦笑いをしながら、そのイメージを一蹴すると そのままKoB本部へと入っていった。
 
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