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久遠の神話

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第五十七話 北の国からその五

「もう戦わないよ」
「そうするんだな」
「まあ剣士と戦わなくても怪物と戦ってると」
「金は入るな」
「かなりね」
「あの、それでなんですけれど」 
 上城は中田と話を続ける王に対してここで問うた。
「王さんはどれだけ欲しいんですか?」
「お金の額だね」
「はい、それだけ欲しいんですか?」
「屋敷を立てていい車を数台買って見事なお店も幾つも持って」
 王は具体的に話していく。
「後は一生遊んで暮らせる位にね」
「だったら一体」
「まあ百億だね」
 日本の円にしてだ。
「それだけかな」
「百億ですか」
「うん、百億だよ」
 これだけの額が欲しいというのだ。
「それだけあれば充分過ぎるね」
「百億ですか」
「かなりの額だね」
「かなりっていうかそれだけだと」
「そうよね」
 上城だけでなく樹里も言う、二人で顔を向けて話した。
「普通にやったら絶対に」
「宝くじでも無理だし」
「それこそ戦いに勝ち残って願うしか」
「それしかないわよね」
「言っておくけれど私は博打の類はやらないよ」
 これまで笑っていた王の顔から笑顔が消えた、そのうえで嫌悪を見せてそのうえで三人に話したのである。
「あれは無駄だよ」
「無駄ですか」
「負けるかも知れないし」
 それにだというのだ。
「あれが儲かるのは禄でもない人間だけだしね」
「だからお嫌いなんですね」
「うん、博打は人間の生活に不要だよ」
 こうまで言う王だった。
「あんなものはこの世からなければいいんだよ」
「変なところで真面目だな」
 中田はそんな王の言葉を聞いて言った。
「剣士は全員そうだけれどな」
「私も真面目かな」
「博打はしないしポリシーがあるからな」
 これもどの剣士にも共通している、もっと言えば加藤以外は戦い自体については避けられれば、と思っていることも共通している。 
 中田はそうしたことも踏まえて王に言うのである、
「あんたも真面目だよ」
「自分でそう思ってはいないけれどね」
「自分のことはわからないさ。それで百億か」
「それ位だよ」
「あんたが誰も倒すことなくそれだけ手に入れることを祈るさ」
「祈ってくれるんだね」
「あんたがいないとそれだけ倒さないといけない相手が減るからな」
 だからだというのだ。
「祈らせてもらうさ」
「謝々、じゃあね」
「百億、早くね」
「手に入れてくれよ」
 二人は今は笑みになっていた、そうした話をしてだった。
 三人は王の料理を最後まで楽しんだ、デザートのタピオカや杏仁豆腐といったものまで堪能してそれからだった。
 中田は満足している顔で二人に言った。
「やっぱり中華料理はあれだよな」
「広東料理ですか」
「それなんですね」
「まあ広東料理かどうかわからないのも食ったけれどな」
 頼んだメニューの中にはそうしたものもあったのだ。
「それでもな」
「美味しかったですね」
「本当に」
「あの腕ならな」
 中田はしみじみとして二人に話す。 
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