久遠の神話
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第五十七話 北の国からその二
「私は料理人だよ、刺客ではないよ」
「料理に毒は、ですか」
「何の為の料理か」
笑顔で上城に話す。
「我が国では医食同源という言葉があることは知ってるかな」
「はい」
実際に聞いている、それで答えた上城だった。
「食べて味を楽しみ」
「健康も保つんだよ」
「滋養、若しくはより健康に」
「それが中華料理だからね」
「毒は入れないんですか」
「料理は人が生き人を活かす為のもの」
それ故にだというのだ。
「死に殺す為のものではないからね」
「それ故にですか」
「私は自分の料理で人を生かし活かすんだよ」
二つの意味がここで一つになる。
「だからこそね」
「この料理では絶対に」
「君達は殺さないよ」
「そうですか」
「むしろ生かすんだよ」
中華料理の考えでは必然的にそうなることだった。
「ではいいかな」
「注文しろっていうんだな」
「そう、好きなものを頼んでいいよ」
中田に笑顔で告げる、無論上城にも話している。
「腕によりをかけて普段通り作るよ」
「それじゃあな」
中田はここまで聞いて頷いた、そうしてだった。
中田も上城もメニューを見た、当然樹里も。樹里はそのメニューの中であるものに気付いて二人に対して言った。
「あのね」
「あのねって?」
「いい企画があるけれど」
「企画?」
「コースっていうかね」
二人とメニューを交互に見ながら話していく。
「飲茶だけれど」
「ああ、これだね」
「食べ放題があるけれど」
「一九八〇円でだね」
「これよくない?」
樹里は上城に対して言う。
「メニューも飲茶以外にも一杯あるし」
「そうだね。麺類に炒飯とかもね」
「これどうかしら」
「そうだね」
上城も樹里の言葉に頷く、中田はまだ二人の傍に立っている王に顔を向けてそのうえで彼tにこの飲茶のことを尋ねた。
「このコースもかい?」
「ああ、飲茶だね」
「あんたが作ってるのかい?」
「勿論だよ。この店の料理人は私だけじゃないけれど」
それでもだというのだ。
「今日の飲茶の担当は私だよ」
「それじゃあか」
「飲茶コース三人だね」
「ああ、俺もだよ」
中田もだというのだ。
「飲み放題はプラス五百円か」
「お酒でも何でも出るよ」
「まあそっちは今はいいさ」
「いいんだね」
「昼だからな」
時間から考慮しての言葉だった。
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