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八条学園怪異譚

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第四十五話 美術室その十一

「しかしな」
「これが本当の芸術家でしょうか」
「先生は」
「そうなのだろうな、とにかくだ」
「はい、これからですね」
「泉を」
 二人もそのことに考えを移した、そうしてだった。
 まだ七生子の絵を観ているコキイネンに対してだ、こう言った。
「あの、それでなんですけれど」
「いいですか?」
「泉ですね、それなら」
 コキイネンもすぐに応える、そしてだった。
 彼から見て左手の部室から準備室に向かう扉を指差してだ、二人に対して言った。
「あそこでしょうか」
「あの扉がですか」
「泉かも知れないんですね」
「そうです」
 その通りだというのだ。
「あそこがそうなりますね」
「ううん、ここも扉なんですね」
「そこが泉かも知れないんですね」
「そうですね、どうしても扉は別の場所に出入りする境目ですので」
 それでだというのだ。
「あそこもです」
「泉かもしれないんですか」
「あの扉が」
「そうかも知れません、ですから」
「はい、わかりました」
「じゃあ今から」
 二人もコキイネンの言葉に応えた、そうして。
 その扉の方に向かおうとする、だがその前にコキイネンに尋ねた。
「それでなんですけれど」
「普通に行けばですね」
「はい、あの扉の向こうはです」
 泉でなければだ、どうした場所かというと。
「普段は只の準備室でして」
「特に何もないんですね」
「これといって」
「そうです」 
 まさにその通りだというのだ。
「別に何もないですが」
「もうすぐ十二時ですから」
「その時になればですね」
「そうです、若しかしたらですが」
 その十二時にだ、扉を越えればというのだ。
「その時にはです」
「泉である可能性がですね」
「それがあるんですね」
「そうです、ではですね」
「じゃあ今から扉開いてみます」
「それで中に入ってみます」
 その泉の中にだというのだ。
「そうしてみますので」
「今から」
「はい、行ってみて下さい」
「ではな」
 コキイネンだけでなく日下部も二人を見送る、とはいってそぐ傍に行くのだが。
 そうして二人は扉を開いて中に入ってみた、そのうえで着いた場所は。
 これといって何もなかった、何の変哲もないごく普通の美術部の準備室だった、石やキャンバス、それに水彩や油絵の絵の具等が置かれている。
 パレットや筆もある、そこには芸術への想いは感じられたが。
 準備室だ、ここも泉ではなかった。
 それでだ、愛実はこう聖花に言ったのだった。
「じゃあ次ね」
「そうね、次ね」
 聖花もあっさりと頷いて返す、そして。 
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