問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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短編 一輝と安倍晴明 ⑤
一輝が張った結界の中、一輝は四人の鬼と対峙していた。
「さあ、こないのか?それならそれで簡単に葬れるから楽でいいんだけど。」
そう言い放つ一輝に、四人の鬼は恐怖を抱いていた。
あっさりと四天王の一人を葬り、さらに四天王と副首領である自分達が目の前にいても一切自信を失わない、そんな人間は今までにいなかったのだ。
だが、それでも彼らは誇り高い鬼である。
「・・・恐怖を捨てろ!今はこの人間を・・・寺西一輝を葬るのだ!」
茨木童子の言葉で三人の鬼もまた武器を取り始める。
そして、一輝に向かってくる。
「・・・やっぱり、お前たちは誇りを持った鬼だな。ここに、敬意を示す。」
一輝はその言葉と共に形無いものを漂わせていく。
そして、まず一輝に襲い掛かってきた星熊童子の刀に水の刃をぶつけ、次にきた金熊童子の鎌に炎の刃を、虎熊童子の棍棒を空気の楯でガードする。
「お、意外。まさか武器全部使ってようやくガードできるなんて。」
「覚悟を持つ一撃は強大な一撃をえる!これで終わりだ!」
そして、全ての形無いものを使ったところに茨木童子が二振りの長刀で襲い掛かるが、
「な・・・!?」
「まあ、無くなったなら増やせばいいだけなんだけど。」
一輝が取り出した日本刀とバタフライナイフによって防がれる。
もちろん、晴明の木刀と違って何の変哲もない、ただの武器で、である。
「我が刀を、そのような武器で・・・だと!?」
「まあ、驚くのは仕方ないけど、隙を見せちゃだめだよ?」
一輝はそのままバタフライナイフのソードブレイカーを使って一振りを破壊すると、そのまま水を抑えるのに精一杯な星熊童子にバタフライナイフを投げる。
軽くその場にある空気をまとわせたその刃は、星熊童子を貫き、その命を奪った。
「さあ、これで水は使えるようになったよ?」
「な、キサマ・・・!」
茨木童子が感情に任せて襲い掛かるが、一輝の操る水によってその攻撃は失敗に終わる。
「さあどうするの?俺の手には武器が一個戻ったよ?そして、君のお仲間はそれぞれ俺の武器に苦戦中。」
「ならば、俺が一人で倒せばいいだけだ!」
そういって茨木童子は一輝に刃を向けるが、一輝の操る水によって一瞬で弾き飛ばされる。
「な・・・」
「悪いけど、君程度の妖怪一人で俺は・・・伝説殺しは倒せないよ。」
一輝はそう言いながら、水や火、空気を霧散させ刀とバタフライナイフのみを構える。
「何のつもりだ?」
「たいした意味はないよ。ただ、これ以上頭痛が酷くなるとこの後がつらそうだと思っただけ。」
「それが、その技の代償か?」
「そうだよ。でも、お前ら相手になら、これは使わなくても勝てる。」
「ずいぶんとなめてくれるな?」
「ああ。俺は、一人で妖怪軍団を相手に出来るからな。」
実際、一輝は白澤との対戦の際にこの鬼レベル達相手に無双している。
残り三体程度ならば、ギフトを使うまでもないのだ。
「ならば、容赦はしないぞ!」
三体の鬼が本気の一撃を一輝に放つ。
それは命を懸けた、自らの生命力すらをもこめた一撃だった。
だが、その攻撃は、
「鬼道流剣術、返し!」
一輝の剣術によって絡み取られ、そのまま打ち返される。
「これで終わり。まあ、楽しめたよ。」
「ふん、我らからしてみれば楽しむ要素などなかった。」
「が、いくつか学ぶこともあったな。」
「ああ。次はこれをいかして大暴れするとしよう。」
「あっそ。今回はしないけど、次に殺されて、封印されたら一生復活は出来ないものだと思えよ。」
「そうか。覚えておこう。」
そういって、三体の鬼の命は散った。
「そっちも終わったみたいやな。」
一輝が散っていく命に手を合わせてると、後ろから晴明が来てそういった。
「ああ。なんとも面倒な一対五は無事に終わったよ。もってことはそっちも?」
「うん、終わったで。とは言っても君とは違っていくつか攻撃を受けたんやけど。」
そういう晴明の体には、確かにいくつかの傷がある。
「んなこと知るか。お前の力不足だ。」
「うん、それは間違いないな。」
「で?もう終わったんだから帰らせてもらっても?」
「え、なんで?帰すと思ってたん?」
「だよなあ・・・あの狐の息子が、そんな気前がいいとは思えん。」
元々、一輝は晴明のことを信じていなかった。
だから、一輝は戦いの途中で無形物を統べるものを使うのを止めたのだ。
「なら、ボクが言いたい事も分かるんやな?」
「ああ。式神になれ、とでも言うつもりなんだろ?お断りだよこの野郎。」
「そんなことを言ってええんか?ボクはこの時代に干渉するからこのころの力しか使ってへんけど、神としての力を使ってもええんやで?」
その瞬間、晴明の霊格が一気に上がる。
だが、それでも一輝はひるまず、自分の周りに武器を漂わせる。
「・・・本気か?」
「ああ、本気だ。勝算はあるしな。」
一輝はそう言いながら、少し倉庫の入り口を開く。
「そうか・・・ならば、我も手加減はせぬ。」
一輝の覚悟を理解したのか、晴明の口調が神のそれになる。
そして、一輝は一瞬息をのむと、
「全弾掃射!」
「な、ちょっと待て!」
手元にある操れるもの全てを操り、晴明の目から見えないようにする。
そうして出来た隙に倉庫の入口を思いっきり開け、住人に声をかける。
「いまだ、寒戸!俺をもといた時代に連れてけ!」
「な、おい!ちょっと待て!」
「待たん!」
そして、一輝はそのまま寒戸に送ってもらい、もといた時代に帰った。
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「・・・戻ってこれたか。」
一輝はもといた神社で目を覚まし、急いで本殿の中に入る。
「えっと・・・この封印が解けてたのか。」
一輝はそう言いながら、晴明が出て来れた原因であろう封印の綻びを見つけ、そこに倉庫の中に突っ込んだ式神を無理矢理に突っ込み封印をしなおす。
もちろん、今までの封印の何倍もある強度で、だ。
「よし・・・後は専門家でも呼ばせて封印をさらに書き足してもらえばいいか。」
一輝は作業を終えると、仕事用の携帯を取り出してここまで送ってきたやつに連絡をする。
「終わったぞ。再発しないように封印が得意なものを何人か送ってくれ。」
『分かりました。すぐにそちらに送ります。』
「あと、報酬のほう、金は振込みで。後から要求したことは今すぐに始めろ。」
『・・・今指示を出しました。では、これで全て終了ということで?』
「ああ。依頼は完遂した。全部終わりだ。」
一輝は電話を切り、すぐそばの水道から水を出してペットボトル一本分を補充すると、さらに水を出してそれに乗り、学校へと向かうのだった。
もちろん、授業を受けるためではなく、睡眠をとるためだ。
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