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万華鏡

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第四十五話 運動会当日その三

「やれやれだな」
「生の下着なんて願ってないのにな」
「何でスパッツなんだよ」
「あんな色気無いものなんだよ」
「何処がいいんだよ、あんなの」
「只の半ズボンだろ」
「そこには萌えなんて何もないだろ」
 萌え、即ち浪漫の話にもなる。
「あれじゃあ絶対にめくれない鋼鉄のスカートと一緒だろ」
「ああ、最近のアニメそればかりだよな」
「アングルも厳しいからな」
 見えそうなアングルも隠れる、三角座りの時の足でそこを隠すのだ。
「全くなあ」
「スパッツってトランクスとかボクサーと一緒だろ」
 つまり男ものの下着とだというのだ。
「何の色気もないよな」
「あるのは絶望だけでな」
「最低限の浪漫もない」
「この世の終わりだよ」
「我が人生の無限の悔いあり、か」
「その通りだね」
 こうした話を嘆きつつしていた、琴乃はその彼等を横目に見て自分のクラスメイト達に話した。
「まだあんなこと言ってるのね」
「全く、うちの男子連中はねえ」
「煩悩が強いから」
「お陰で文化祭うちのクラス萌えになったわよ」
「その路線でね」
 決まってしまったというのだ、その時のことが。
「何でもね、メイド喫茶か何かするってね」
「あれっ、何時決まったの?」
「男連中が勝手に決めたのよ」
 まだ学級会で正式に話されていないがそれはもうだというのだ。
「既にね」
「何か強引ね」
 琴乃もその話を聞いてこう言った。
「ちょっとね」
「まあね、ブルマもアンスコも駄目ならってね」
「萌え路線にしろっていうのはね、文化祭は」
「うちの男連中は煩悩強いから」
「それを萌えだの浪漫とか言うからね」
「タチ悪いのよ」
「そうよね、何ていうかね」
 琴乃も困った様な苦笑いを浮かべて言う。
「困るわよね」
「他にないのかって思うでしょ、琴乃ちゃんも」
「ええ、そう思うわ」
 実際にそう思うとだ、琴乃は背の高い眼鏡のクラスメイトの問いに答えた。
「萌えとか浪漫とかって」
「男はそれで生きてるとか言ってね」
「黙って立ってればルックスはいいのに」
 このクラスの男子全員だ、見れば悪い外見の人間はいない。人相もである。
 しかしだ、それでもだったのだ。
「性格もね」
「悪くないわよね」
「特に」
「けれどなのね」
 煩悩はある、それもかなり強くだ。
「それはどうしようもないのね」
「私達と同じっていうのよ」
 その眼鏡の娘がまた言ってきた。
「これがね」
「一緒って?」
「私達も腐女子の娘いるじゃない」
 この言葉を挙げての話だった。
「ほら、ボーイズラブとか百合とかね」
「何かそういう漫画とか本もあるわよね」
「そういうのが好きな娘がいるからね、というか私もね」
 彼女自身もだというのだ。 
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