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真似と開閉と世界旅行

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救えない命〜

 
前書き
題名が不穏?気のせいです。ではどうぞ! 

 
俺達はザレッホ火山に到着する。

「・・・暑いな。息苦しい」

「当然ですわ。魔界に降りてからのザレッホ火山は、今まで以上に活性化しているそうですし・・・」

「そりゃ、モロに大地の力通してるからな・・・」

「とにかくパッセージリングのある方を目指せばいいんだよな」

「ボク、セフィロトの場所を感じるですの」

「迷ったら頼むぜ、ミュウ」

「はいですの!」

足元に注意しながら俺達は奥に進んでいく。

「しかし・・・暑いな・・・」

ガイが頭を掻く。

「火山の中ですからねぇ。息を吸うだけでも喉や肺が焼かれるようです」

「なんでジェイドは涼しそうなんだよ・・・」

ルークはジト目でジェイドを見る。

「いえいえ。暑くて死にそうですよ」

「・・・どの口が言ってんだか」

「・・・前に来たとき暑くなってる気がするわ」

「ミュウ。セフィロトはまだですの?」


「う~ん、もうちょっとですの~」

「辿り着く前にこの暑さにやられそうね」

「アニスの狙いはそれかもしれませんねぇ。私達を一気に始末する・・・」

「ジェイドッ!!」

「冗談です」

怒るルークを流すジェイド。さすがにルークもそれに毒気を抜かれたようだ。

「ったく・・・」


「ーーー半分は」

『・・・』

不意に真顔になるジェイドに一同は沈黙する。

「皆さ~ん、こっちですの~!」

「ご苦労様です。ミュウ」

「はいですの!」

「アイツ、無駄に元気だな・・・」

「ジェイドといいミュウといい、余計に疲れるな・・・」

「まったくだ・・・」

男性陣はため息を吐く。

「これじゃあケセドニアの砂漠が涼しく感じるぜ・・・」

「まったくだな・・・っ!?ルーク!」

ガイがルークに呼び掛けると、ルークの真横を火の玉が通った。

「うわっ!?何なんだ、一体・・・」

「あれだわ・・・」

遠くにいたのは・・・

「まあ!ドラゴンですわ!」

「火山の中に住んでいるとは、大した生命力だねぇ」

「このまま進んでいくと、彼との対決は避けられませんね。いや、彼女かな」

「あら、大佐。ドラゴンの性別がお分かりになるの?」

「ブレスの吐き出し方で・・・」

「すげぇ。ジェイドって何でも知ってるなー」

「・・・わかると面白いなーと思っただけです」


「・・・だと思ったよ・・・」

俺はまたため息を吐きながら進む。そして、ドラゴンに近づき・・・

「気をつけて!来るわ!」

「グオオオオオ!!」


「くっ!・・・隙を見て攻め込むぞ!」

ドラゴンがブレスを吐くのを止める。

「今だ!行くぞ!」

「リパル!いいな!?」

『もちろんッス!』

俺は空間から方天画戟を取り出し、構える。

「ビアシスライン!」

ナタリアが放った矢は・・・ドラゴンの鱗に弾かれる。

「・・・っ!」

「ナタリアは援護に回ってくれ!」

「・・・わかりましたわ!」

ナタリアが退き、ガイがそれを守る形で下がり、俺とルークが前、ティアとジェイドが後ろという陣形が完成する。

「瞬迅剣!」

ガキィン!

ルークが隙を狙うように高速で突きを放つが・・・

「かっ、てぇ!?」

「だったら・・・ウォラァァァァ!!」

飛び上がり、力を籠めて方天画戟を振り降ろす。

ガィィ・・・ィン・・・


「ッ・・・!?」

衝撃が体を突き抜ける。ば、バッカじゃねぇの!?どんだけ堅いんだよ!?

『咲さん!』

気づくとドラゴンが尻尾を振り回していた。・・・これは避けられない。

バァァン!

「くぅ・・・!?」

空中で勢いを殺せずに吹っ飛ぶ。

「サキ!」

ルークが叫ぶ。・・・俺は咄嗟に闇を籠め・・・

「・・・上等、だったら・・・」

闇を解放。Aモードを発動する。

「全力でぶちかます!!!」

俺は勢いよく飛び込む。

「リパル!鎌ぁ!」

『了解ッス!』

闇を限界まで鎌に溜め、鎌全体が漆黒に染まる。

「ーーーー♪ホーリーソング!」

そこにティアの身体強化がプラスされ、身体を捻り、バネのように全てを解放する。

「デス・・・サイズ!!」


ズバァァァン!!

「グォォォン!?」

ドラゴンの巨体が揺れる。

「ジェイド!」

「激しき水壊よ・・・スプラッシュ!」

弱点の水属性がドラゴンを襲う。

「止めだ!絶破烈氷撃!!」

音素の欠片を集めたルークの一撃で、ドラゴンが沈黙、そのまま溶岩に姿を消した。

「ちょっと可哀想ですの・・・」

「そうだな。・・・俺達が勝手にあいつの家へ侵入してるんだもんな」

「・・・イオン様が心配です。この先へ行ってみましょう」


「サキ、平気か?」

ガイがAモードを解除した俺に話しかけてくる。

「あ・・・ああ・・・大、丈夫・・・」

相変わらずの倦怠感。だが今はそれよりもイオンだ。

「俺はいい。・・・早く行こう」

俺達は走る。そして・・・声が聞こえてきた。

「・・・・・・やがてそれが、オールドラントの死滅を招くことになる。ND2019、キムラスカ・ランバルディアの陣営はルグニカ平野を北上するだろう。軍は近隣の村を蹂躙し、要塞の都市を囲む。やがて半月を要して、これを陥落したキムラスカ軍は玉座を最後の皇帝の血で汚し、高々と勝利の雄叫びをあげるだろうND2020要塞の街はうず高く死体が積まれ、死臭と疫病に包まれる。ここで発生する病は新たな毒を生み、人々はことごとく死に至るだろう。これこそがマルクトの最後なり」

これは・・・イオンの声!?

「以後数十年に渡り、栄光に包まれるキムラスカであるが、マルクトの病は勢いを増し、やがて、一人の男によって国内に持ち込まれるであろう」

そこで俺達が到着し、イオンがルークを支える。

「お、お前達・・・」

「やめろ、イオン!やめるんだ!」



イオンは倒れ込みながらも預言を読み続ける。

「・・・聖なる焔の光は、穢れし気の浄化を求め、キムラスカの音機関都市へ向う。そこで咎とされた力を用い、救いの術を見いだすだろう・・・」

奥を見るとアニスの両親が牢屋に閉じ込められていた。俺は素早くベルヴェルクを構え、撃つ。

「オプティックバレル!」

的確に牢屋だけを破壊し、ジェイドとナタリアに任せ、ガイはモースを睨み付ける。

「イオン!しっかりしろ!」

「ルーク・・・今のは僕があなたに送る預言・・・数あるあなたの未来の・・・一つの選択肢です・・・頼るのは不本意かもしれませんが・・・僕にはこれぐらいしかあなたに協力できない・・・」

「馬鹿野郎!今までだってたくさん協力してくれただろ!これからだって・・・」

「・・・ルーク。そんな顔をしないで下さい。僕の代わりはたくさんいます・・・」

「そんなことない!他のレプリカは俺のこと何も知らないじゃないか!」

ルークの瞳に涙が溜まる。


「一緒にチーグルの森にいったイオンはお前だけだ・・・」

「そうだ・・・アリエッタはどうするんだよ。アリエッタは、お前を・・・」

「彼女が慕っていたのは被験者イオンです・・・僕ではありません」

「でも・・・!」

イオンは首を横に振る。

「ティア、こちらに・・・」

イオンが差し出した手をティアが掴む。

「僕が・・・あなたの障気を受けとります」

「そんなことしたら導師が・・・」

「言ったでしょう。一つだけあなたを助ける方法があるって・・・第七音素は互いに引き合う。僕の第七音素の解離に合わせて、あなたの汚染された第七音素も貰っていきますよ」

「イオン!」

イオンの身体を光が包む。

「・・・いいんです。ほら・・・これでもう・・・ティアは・・・大丈夫・・・」

イオンが俺を見る。

「サキ・・・アリエッタに伝えてくれませんか・・・“騙していて、すみませんでした”・・・と」

「・・・!」

拳を握り締める。その一言に・・・どんな意味が籠められているか・・・!

「・・・イオン・・・さま・・・」

アニスが呟く。

「もう・・・僕を監視しなくていいんですよ・・・アニス・・・」

「ごめんなさい、イオン様!私・・・私・・・」

「今まで・・・ありがとう・・・僕の一番・・・大切な・・・」

・・・その言葉を言う前に、伸ばしたイオンの手が落ち、イオンの身体から力が抜ける。

「・・・イオン様っ!」

そして・・・無数の光となって・・・消えていった。


「く・・・一番出来のいいレプリカだったが、やはり正しい預言は詠めなかったか・・・」

その言葉に・・・ルークがキレた。

「預言預言預言!!馬鹿の一つ覚えみたいに!そんなものがなんだって言うんだ!」

「馬鹿を言うな。人類が存続するためには預言が必要なのだ」

「そんなものがなくたって、人は生きていける!!」

「預言の通りに生きれば繁栄が約束されているのだ!それを無視する必要があるのか!」

大量のレプリカ兵がやってくる。

「私は監視者だ!人類を守り抜く義務があるのだ!」

・・・今度は、俺が我慢の限界を越えた。

「いい加減にしやがれ・・・繁栄の為ならなんだってして言い訳じゃねえだろうが!!そんな繁栄くそくらえだ!決められたレールなんていらない!俺は・・・俺達は自分の力で生きていくんだ!!」


「ふん。愚か者が。貴様のような奴が人類を破滅に導くのだ」

そう言うとモースはレプリカを盾にして逃げ出す。・・・咄嗟にレプリカを倒すことが出来ず、モースを逃してしまう。俺達は取り敢えずアニスの両親を送り届けるが・・・

「アリエッタ様!動いては傷に障ります!」

アリエッタの目に・・・怒りと悲しみがあった。そのままアリエッタは近づき・・・アニスの頬を全力で叩いた。

「・・・イオン様を殺した!アニスがイオン様を殺したんだ!」

「お待ちください!アニスは、私どもがモース様に捕らわれたため・・・」

「パパは黙ってて!」

アニスは息を大きく吸い、アリエッタに言い放った。

「そうだよ。・・・だから何?根暗ッタ!」

「イオン様はアリエッタの恩人。ママの仇だけじゃない。アニスはイオン様の仇!アリエッタはアニスに決闘を申し込む!」

「お、おい!」

「・・・受けてたってあげるよ!」

「アニス!」

「いいの!こいつとは決着をつけなきゃいけないんだから」

「場所は後で立会人から知らせる。逃げたら許さないから!!」

そう言ってアリエッタは部屋から出ようとした時・・・俺とアリエッタの目があった。

「・・・ごめん・・・イオンを、助けられなかった・・・」

「・・・サキは悪くない。悪いのはイオン様を裏切っていたアニスだよ!!」

「それは・・・!」

「アリエッタは絶対にアニスを許さない!・・・絶対に・・・!!」

そう言ってアリエッタは走り去ってしまう。・・・今のアリエッタに、真実を伝える覚悟が・・・なかった。その時、

「待てよ、アニス!」

俺の横を通ってアニスも走り去る。

「サキ!アニスを追ってくれ!」

「あ、ああ!」


アニスを追いかけ、途中見失いながらも教会の隅で座り込むアニスを見つけることができた。

「アニス・・・」

「・・・イオン様は」

「え?」

「イオン様は・・・ある日アリエッタを導師守護役から解任して、何故か私を導師守護役に選んだ。・・・子供で大した実績もなかった私はいじめにあったりもした・・・」

「・・・うん」

アニスの隣に座る。

「それをどこかで聞いたイオン様はみんなの前で私のことで怒ってくれた。私が失敗しても、イオン様は笑って何も気にしなかった。私のやること全部に、イオン様は興味を持ってくれた」

「・・・そうなのか。でも、仕方ないよ・・・親を人質にされてたんだ」


「違うの!私は・・・私は最初からイオン様を裏切ってたの!モースに全部教えるように言われて・・・戦争を止めようとしたことも、ルークたちといたことも!モースは信じなかったけど、サキのことも・・・!」

「・・・そうだったのか」

じゃあ、ジゼル達は闇のことを知っているのか・・・詠のことも・・・

「だからっ!タルタロスが襲われたのも、六神将が待ち伏せしてたのも私のせいなんだよ!」

「・・・まさか、それも両親を?」

アニスは小さく頷いた。

「・・・パパ達、人がいいでしょ?私がうんと小さい頃、騙されてものすごい借金作っちゃったんだ。それをモースが肩代わりしたの。だからパパ達は教会でタダ働き同然で暮らしてたし、私も・・・モースの命令に逆らえなかった・・・」

「・・・」

ふとアニスと愛依が重なる。・・・愛依も、嫌なのに逆らえなくて・・・

「ずっと嫌だったよ・・・イオン様ってちょっと天然って感じで、騙すの辛かった・・・」

「・・・ああ」

俺ができるのは、アニスの言葉を聞いて、受け入れてやること。

「だけど私・・・パパもママも大好きだったから・・・だから・・・」

「・・・でも、我慢してたんだろ?・・・偉かったな」

遂にアニスは泣き出してしまう。

「偉くない!全然偉くない!私・・・私・・・イオン様を殺しちゃった・・・!イオン様・・・私のせいで・・・死んじゃった・・・!」

アニスが俺に飛び付いてきて、ひたすら、泣く。

「・・・アニス・・・そうだ。ルークから、これ」


俺はあの間にルークから預かった物を渡す。

「・・・これ」

「イオンが詠んでた譜石の欠片・・・」

「イオン様の・・・」

「・・・これから、どうする?」

「・・・一緒に行く。イオン様が生きてたら・・・きっとみんなに協力するから・・・」

「・・・ああ。イオンの分も・・・頑張らなきゃな」

「うん・・・」

俺は落ち着いたアニスを連れてみんなのところに戻る。

「・・・落ち着いたようですね」

ジェイドが優しく話しかける。

「はい、大佐。私、もう少しみんなと一緒にいて、考えたいんです。私がこれからどうしたらいいのか」

「アニス。気をしっかりね」

ナタリアがアニスを気遣う。

「これからどうしたらいいのかしら?預言の件は、教団内が再編されるまで難しいと思うし・・・アッシュを捜すにもどこを捜したらいいのか・・・」

「私・・・イオン様の最期の預言を活用してほしい」

「ベルケンドに・・・って奴か」

「それがいいと思います」

振り返ると撫子達がいた。

「・・・すみません。もっと早く到着していれば・・・」

「撫子達は悪くないよ。・・・悪いのは・・・」

アニスはそこまで言って首を振る。

「ううん。こんな考え方は駄目だよね。今は前に進まなきゃ・・・」

だけど、アニスの目には・・・深い哀しみだけがあった。いや、イオンだけじゃない。ルークや、障気を受け取らせてしまったティア。パーティー全体が暗くなっていた。

「(俺は・・・また救えなかったのか・・・畜生・・・なんど、なんど目の前で・・・)」

『咲さん・・・』

「・・・今回ばっかりは・・・」

『わかってるッス・・・でも、あまり自分を責めないでほしいッス・・・』

「ああ・・・善処するよ・・・」

俺達はイオンが残してくれた言葉を無駄にしないためにも、ベルケンドに向かった・・・ 
 

 
後書き
サキ
「・・・」

アニス
「私・・・イオン様を・・・」

サキ
「アニス・・・気にするな・・・とは言えないけど、間違っても自殺願望は止めてくれよ」

アニス
「うん・・・そんなことしたらイオン様に怒られちゃうから・・・」

サキ
「ああ。・・・それじゃ、次回の真似と開閉と世界旅行もよろしく!」 
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