Element Magic Trinity
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1番のギルド
幽鬼の支配者最強の女、シュランを今度こそ倒したクロスは、真っ直ぐナツ達に向かって歩いていく。
足場はかなり悪いが、さすがはティアの弟、身体能力はかなり良いらしく全くふらつかない。
「大丈夫か?」
「おうっ!サンキューな、クロス!」
「あい!さすがクロスです!」
ナツとハッピーが感謝と称賛の声を上げるが、クロスは少し俯き・・・頭を下げた。
「・・・すまない」
「え!?」
「何が!?」
「謝る事なんてないですよ。だってクロスさんはシュランを・・・」
「そういう事じゃない」
そう言うと、クロスはギルドに目を向けた。
無残にも崩れ去り、ほぼ瓦礫と化した仕事を仲介してくれる場所であり、彼等の帰る場所。
「俺達はギルドを守りきれなかった。お前達はこれ程までに頑張ってくれたというのに・・・すまない」
申し訳なさそうな表情をするクロスに、ティアが溜息をついた。
「バッカじゃないの?」
「ティア!」
ルーシィが声を掛けるが、ティアは見事なまでにスルーする。
「アンタは精一杯、己の力を全て出し切ってギルドを守ったのでしょう?」
「・・・あぁ。だが」
「ならそれでいいじゃない」
「は?」
双子の姉の意味不明な言葉に、クロスはどこかマヌケな声を出す。
近くの瓦礫を机代わりに頬杖をつき、ティアは続けた。
「過ぎた事をどうこう言ったって、意味なんてないでしょ。アンタは精一杯頑張った。それでいいじゃない」
「・・・姉さん。だけど」
尚もクロスは謝罪の言葉を口にしようとするが、その口は開かなかった。
もう何も言うなというように、ティアがクロスの頭に手を乗せたのだ。
「よくやってくれたわ。さすが私の双子の弟ね、クロス」
口元を緩めるだけの、いつもの笑みともそうでないとも取れる表情に、クロスはぎゅっと唇を噛みしめる。
そして、口を開いた。
「・・・姉さんがそう言ってくれるのなら、嬉しいよ」
「クク・・・よく暴れる竜だ」
一方、ここはナツ達のいる場所とは別の場所。
そこでは幽鬼の支配者のギルドマスター・ジョゼとエルザが対峙していた。
その近くには気を失っているグレイ、エルフマン、アルカ、ミラ、ルーがいる。
「ナツの戦闘力を計算出来てなかったようだな・・・わ、私と同等か、それ以上の力を持っているという事を・・・」
そう言いながら剣を構えるエルザ。
今の彼女は一撃の攻撃力を上げる、黒羽の鎧を身に纏っていた。
「フン、謙遜はよしたまえ妖精女王。君の魔力は素晴らしい。現にこの私と戦い・・・ここまで持ちこたえた魔導士は初めてだ。ジュピターのダメージさえなければ、もう少しいい勝負をしていた可能性もある」
ジョゼは不気味に微笑む。
「そんな強大な魔導士がねぇ・・・」
そして、右手をエルザに向け、かざした。
「マカロフのギルドに他にもいたとあっては気にくわんのですよ!」
「うあああっ!」
ジョゼの魔法が直撃し、エルザは悲鳴を上げる。
ドカッと壁に直撃するエルザ。
「なぜ私がマカロフを殺さなかったかお解りです?」
バッとジョゼが右腕を横に広げると同時に、エルザの左の地面からマグマのように魔力が溢れ出る。
それは至る所で起き始めた。
「絶望。絶望を与える為です。目が覚めた時、愛するギルドと愛する仲間が全滅していたらどうでしょう。くくく・・・悲しむでしょうねぇ」
そう言いながら、ジョゼは笑みを浮かべた。
「あの男には絶望と悲しみを与えてから殺す!ただでは殺さん!苦しんで苦しんで苦しませてから殺すのだァ!」
「下劣な・・・」
そう呟いて、溢れ出る魔力を避ける。
「幽鬼の支配者はずっと1番だった・・・この国で1番の魔力と1番の人材と1番の金があった」
攻撃を仕掛けながら、ジョゼは語り出す。
「・・・が、ここ数年で妖精の尻尾は急激に力をつけてきた」
ジョゼは目を見開く。
「エルザやラクサス、ミストガンやギルダーツ、ティアの名は我が町にまで届き、火竜の噂は国中に広まった。いつしか幽鬼の支配者と妖精の尻尾はこの国を代表する2つのギルドとなった。気に入らんのだよ。元々クソみてーに弱っちいギルドだったくせにィ!」
「この戦争はそのくだらん妬みが引き起こしたというのか?」
エルザは剣を振るいながらジョゼにそう問いかける。
ジョゼはそれを軽々と避け、言葉を続けた。
「妬み?違うなぁ、我々はものの優劣をハッキリさせたいのだよ」
「そんな・・・そんな下らん理由で!」
エルザが怒りの叫びをあげた瞬間、エルザはジョゼの魔法に捕らわれる。
「前々から気にくわんギルドだったが、戦争の引き金は些細な事だった。ハートフィリア財閥のお嬢様を連れ戻してくれという依頼だ」
「う・・・く・・・」
ジョゼの言葉に呻き声をあげながら、エルザはルーシィを思い浮かべる。
「この国有数の資産家の娘が妖精の尻尾にいるだと!?貴様等はどこまで大きくなれば気が済むんだ!」
ギ、ギギ・・・と音を立て、エルザを捕らえるジョゼの魔力が強くなっていく。
「ハートフィリアの金を貴様等が自由に使えたとしたら・・・間違いなく我々よりも強大な力を手に入れる!それだけは許しておけんのだァ!」
「がっ!」
ジョゼが魔力を上げると、エルザの拘束が強くなる。
・・・が、エルザは苦しそうな呻き声とは対照的な、挑発的な笑みを浮かべた。
「どっちが上だ下だの騒いでる事自体が嘆かわしい、が、貴様等の情報収集力の無さ、にも・・・呆れる、な・・・」
「何だと?」
「ルーシィは家出、して来た、んだ・・・家の金など、使えるものか・・・」
それを聞いたジョゼは目を見開いた。
「家賃7万の家に住み、私達と同じ、ように、仕事をして・・・共に戦い、共に笑い、共に泣く・・・同じギルドの魔導士だ・・・」
そう言うエルザの脳裏には、ナツ、ハッピー、グレイ、ルー、アルカと笑い合うルーシィの姿が思い浮かぶ。
それをエルザは遠くから眺め、ティアは興味ないと言いたげに頬杖をついて魔法書を読んでいる。
「戦争の引き金だと?ハートフィリアの娘だと?花が咲く場所を選べない様に、子だって親を選べない。貴様に涙を流すルーシィの何が解る!」
エルザの怒りの叫びに対し、ジョゼはうっすらと笑みを浮かべる。
「これから知っていくさ」
シレっと言ってのけるジョゼを、エルザが睨みつける。
「ただで父親に引き渡すと思うか?金がなくなるまで飼い続けてやる。ハートフィリアの財産全ては私の手に渡るのだ」
「おのれぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「力まん方がいい・・・余計に苦しむぞ」
怒りの叫びをあげるエルザに向かって、左手をぐっと握りしめるジョゼ。
「ぐああああああああああっ!」
その握りしめられた左手から、強力な魔力がエルザを襲う。
その空間に彼女の断末魔の叫びが響いた、その時!
「!」
エルザを拘束していた魔法が・・・何の前触れもなく、誰かが触れた訳でもなく、消えた。
ドサッと床に落ちるエルザ。
「魔法が・・・!?誰だ!?」
突然魔法が消えた事に、エルザだけでなくジョゼも驚愕する。
土煙に、1つの人影。
「いくつもの血が流れた・・・子供の血じゃ」
その人物は、ゆっくりと口を開く。
「出来の悪ィ親のせいで、子は痛み涙を流した」
その声を聞いたジョゼは驚愕で目を見開く。
「互いにな・・・」
エルザも目を見開いた。
何故なら、声の主は『ここにはいないはず』なのだから。
「もう十分じゃ・・・」
土煙が晴れ、そこから声の主が姿を現す。
「終わらせねばならん!」
「マスター・・・」
そう。
そこにいたのは彼ら妖精達にとってギルドマスターであり、親であり、家族である・・・マスター・マカロフだった。
「天変地異を望むというのか」
ジョゼの背後で怨霊の様に不気味な魔力が漂う。
「それが家族の為ならば」
マカロフの背後で雷のように激しい魔力が漂った。
後書き
こんにちは、緋色の空です。
遂にファントム編もそろそろ終了・・・あぁ、惚れながら勝負する可愛いジュビアを書いたのを遠い昔に感じる・・・(そりゃ毎日更新してたらそうだろーよ)。
って事はもうすぐ楽園の塔編・・・あれ、シモンに泣けて泣けて・・・書ける自信が無いです・・・。
感想・批評、お待ちしてます。
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