中二病が主人公になったら?
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第10話
「おーい、みんな!演習やるぞー!」
イルカ先生の掛け声で校庭に続々と集まる生徒たち。
「先生。今日は何をやるんですか?」
「今日は"忍組手"をやってもらうぞ。
組む人は事前にコチラで決めてあるから、呼ばれた人は前に出て来てやってもらうぞー。」
事前に組まれていることに対して多少不満の声があがるも、イルカ先生は淡々とルールを説明し始めた。
「呼ばれた者はまず、この前にあるサークルの中に入って貰う。」
石灰で描かれた半径5メートルのサークルを指さして言う。
「そして、互いに向かい合ってこのように"対立の印"を相手に見せる。」
そう言って、胸の前で人差し指と中指だけ伸ばした片手印を作って見せる。
「そして、オレが合図を出したら試合を始めるんだ。
勝敗は審判であるオレが見て決める。勝負が決したと思ったら、その時点で試合を止めに入るからな。
ちなみに、サークルから出たらその時点で反則負けだぞ。
それで、勝敗が決したら、このように2人で"和解の印"を組むんだ。」
今度は両手の人差し指と中指を使って互いに握手するように組んで見せた。
「お前ら、わかった?」
「はーい!」
とみんなが返事をしたところで、早速、生徒の名前を呼び始めた。
しばらくの間、生徒の名前を呼んでは前に出て来させ、次々に試合を消化していった。
ここまで順調に進んで来ていたが、チョウジvsシカマルのところでテンポが一気にダウンする。
「あの~・・・先生・・・」
チョウジは困った顔をしてイルカ先生に顔を向ける。
「何だ?」
「あんまり友達を殴ったりはしたくないんですけど・・・」
「いや、そういうんじゃなくてだな。」
イルカ先生は少し苦笑してから言う。
「これは伝統的な"忍組手"だ。かつての火影達もこの忍組み手で鍛錬し、力をつけてだな・・・」
と説明している最中、シカマルは後ろに向いてサークルを出てしまった。
「・・・ん?」
「あの~・・・先生、オレ、場外って事で負けでいいっスから。
次の奴に進めて下さい。」
「お、おい!」
「訓練だろうが何だろうが勝敗をつける以上勝負は勝負・・・ならさっさと白黒つけちまった方がめんどくさくなくいいっしょ?」
「ハァ・・・」
イルカは盛大にため息を吐いてうな垂れる。
一連の流れを見ていたキバとシノの反応は・・・
「やる気ね~な・・・あいつ!
一生、中忍にゃなれねーな・・・」
「イヤ・・・そうとは限らない。」
「ん?」
「何故なら一生は長い。
その間に色々・・・」
「お前、細けーよ!」
一方、いのはというと・・・
「まったくシカマルの奴、アンタが一番めんどくさいっての!
チョウジもいくじ無しだし!」
「いのちゃん、あの子達と知り合いなの?」
と、ピンクの髪に大きな赤いリボンを結んだ女の子、春野サクラがいのに問いかける。
「まあ、親がね・・・」
いのは複雑そうな顔をして答えた。
「もういい・・・シカマル、チョウジ、"和解の印"を・・・」
イルカは呆れうな垂れながらも2人に指示を出す。
「あ、忘れてた。」
シカマルはサークルの中に戻り、左手の人差し指と中指を差し出す。
シカマルがチョウジの顔を見て頷くと、チョウジも頷いて右手の人差し指と中指をシカマルの指に重ね、"和解の印"を作る。
「ごめんよ、シカマル。」
「いいや・・・お前、こういうの苦手だしな。オレもめんどくせーし・・・」
イルカ先生はその様を見て少々満足したように頷く。
「うん、"和解の印"は出来たな。え~次、うずまきナルト!」
「ヨッシャアーイ!」
ついに出番が来たかとナルトはガッツポーズする。
「あの子って・・・。」
「ウチの親が話しちゃダメだって。」
「私、あの子だけは相手したくない。」
"チッ・・・好き勝手言いやがって。"
モブ共の呟きにナルトは少々イライラする。
「そして、うちはサスケだ。2人とも出て来い。」
サスケだけモブ共からの黄色い声援を受けながら前に出る。
ナルトはそれにもまた少々イライラするが、その前に、
「異議アリィィィ!!!」
「どうした、ナルト?」
「サスケとはやりたくねぇ!オレなんかと戦ったらサスケの手が穢れてしまうよー。
なあ、みんなもそう思うだろー?」
モブ共は「そうだそうだ!」とか「サスケ君の手が穢れるのはイヤー!」など口々に言っている。それらの発言に対して一部の人は不満そうな顔をしているが。
「いや、そんなことはない。
ナルトは穢れてなんかいないさ。お前はオレの大事な教え子の1人だ。
そんな訳ないだろう。」
「い、イルカじぇんじぇー!(泣)」
「お、おい、鼻水汚ないぞ!せめて鼻を拭え!」
茶番を繰り広げながらも、ナルトは内心ほくそ笑んでいた。
と言うのも、これは終了の鐘が鳴るまで時間を稼ぐ魂胆であり、こうしている今もその刻は着々と近づいているのであるからである。
「おい、早くしねぇと授業が終わっちまうぞ。早くしろ!」
茶番を見かねたサスケはイライラとした様子で言い放った。
「あー、そうだったな。
じゃあ、"対立の印"をして・・・」
「・・・やっぱやらなきゃダメ?」
「ダメだ。」
「フン、これは決定事項だ。
諦めろ、ウスラトンカチ。」
「チッ・・・」
ナルトは軽く舌打ちし、めんどくさそうな顔をしながら対立の印を結んだ。
サスケはナルトが結んだのを見て、そして結ぶ。
「それでは、うずまきナルト対うちはサスケの試合を始める。
準備はいいか?」
「ああ・・・。」
「いつでもいいってばよ。」
「では・・・始め!」
合図と同時に、2人はサークル中央へ駆ける。
サスケは右手に拳を作りナルトの顔面目掛けて殴りかかるが、それは両手を交差したナルトの腕に阻まれる。
「・・・!?」
サスケは殴った瞬間、何やら違和感を覚えた。
"何だ、この感じ・・・肉の感触じゃねぇ・・・一体何なんだ?"
「考え事してる暇があるのか?
なら、コチラから行かせてもらうぞ!」
「・・・!?」
ナルトの殴打のラッシュが始まった。
人体の様々な箇所に存在する急所を狙って次々と拳を突き出して行く。
ナルトは少々手加減をしているものの、それでも子供にとってはかなり速い速度で突きを連打する。
「オラオラオラオラオラオラ・・・!!」
その速さについて来れず、サスケはガードするので精一杯になっている。
そして、ついにガード仕切れなくなり何発かサスケの腹にナルトの拳が入る。
サスケは痛みで顔を歪ませる。
「貧弱!貧弱ゥ!」
"一発一発が何て重さだ・・・ガードしてる腕が痛ぇ・・・"
次第に腕に力が入らなくなっていく、サスケ。
そして、ついにサスケに大きな隙が出来る。
ナルトはそれを見逃すはずもなく、何十発と一気に拳を叩きつけた。
「君がッ!殴るまで!殴るのをやめないッ! 」
何かセリフが違うぞー。これじゃあ、サスケ君が死んでしまうよ?
「あれっ?そうだっけ?
まあいいや、これで止めだ。
フ○ルコォーン・・・パァーンチ!」
サスケの鳩尾に渾身の一撃が放たれる。
サスケの体は軽く宙に浮き、そのまま地面に落下し倒れ伏す。
モブ共からは悲鳴やナルトへの罵声が上がる。
「Show me your moves!」
スマブラでお馴染み"キ○プテンファルコン"のアピールポーズを決め、ナルトはドヤ顔をする。
「勝者!うずまきナ「まだだ・・・まだ終わって・・・ない!」サスケ!?」
サスケは多量の汗を滴らせ、血反吐を吐きながらも辛うじて立ち上がる。
「ほほぅ、まだやるのか・・・」
「サスケ!もう終わりだ!」
「うるせぇ・・・オレはここで負ける訳にはいかねぇ・・・兄貴を越すまでは・・・負ける訳にはいかねぇんだ!!!」
唸り声を上げながら次々に印を組んでいく。
そして、思いっきり息を吸い、目いっぱい肺に空気を溜め込み、一気に吐き出すようにして術を発動した。
「"火遁・豪火球の術"!」
サスケの口から巨大な炎の塊が放たれ、轟音を立てながらナルトに迫る。
「うわっ、スゲェ・・・」「流石、サスケ君!」等、感嘆の声がモブたちから上がる。
しかし、ナルトはというと、
「ふぅん、その程度の技など、この"ダークフレイムマスター"には造作もないことよ・・・!」
「ま、まさか・・・!?ナルトもあの術が使えると言うのか!?」
キバが如何にも興味津々な顔で言った。
先程、モブ共の反応に不満そうな顔をしていた人達もキラキラとした目をナルトに向ける。
ナルトは忍具ポーチから小ビンを取り出し、中に入っている液体を全て口の中に入れ、火のついたライターを口元へ持っていき、口の中に含んでいたものを思いっきり噴射させた。
すると、どうだろうか。
噴射した液体にライターから引火し、簡易型の火炎放射器に早変わりである。
「城之内ファイヤー!!」
そこは"ヨガフレイム"じゃねぇのかよ!
まあいいや・・・。ナルトから放たれた火炎放射がサスケの豪火球に正面から激突する。
しかし、何ということでしょう・・・普通に拮抗しているではありませんか。
「す、スゲェ!」
「灯油だけでここまで出来るもんなのか・・・?」
夢中になるキバと、驚くシカマル。
「ナルト!そのまま押し切っちゃえ!」
「が・・・がんばって・・・ナルト君・・・」
素直に応援するいのとヒナタ。
"コイツ・・・出来る・・・!"
さっきまで負けそうだったくせに上から目線で物事を考えるサスケ。
ナルトのこの戦いっぷりを見て、大小の差はあれど皆それぞれナルトに関心を抱くようになる。
そして、よりこの2人の戦いに興味の視線が注がれていく。
しかし、10秒経たずして何の前触れもなくその拮抗は崩れ去った。
「えっ?」
「あっ!」
「何っ!?」
「・・・フッ、燃料切れだってばy「ボフンッ!」熱っちぃぃぃ!マ、マジヤバい!!誰か助けてくれ!!!」
ドヤ顔しているナルトに見事命中し、火達磨になって走り回っている。
周りで見ていた者たちは大慌てで消火に当たる。
サスケはナルトの呆気ない幕切れにポカンとしている。
数十秒で消火は終わったが、ナルトはプスプスと煙をあげて倒れ伏している。
「誰かナルトを保健室に運んでいってやってくれ!」
とイルカは指示を出す。
数人の生徒がナルトを持ち上げようとしたが、ビクともしない。
「先生、ナルト君が重過ぎて動かせませーん。」
「そんな訳ないだろう。
どれ・・・ホントだ。どうなっているだ・・・?」
サスケは疑問に思い、怪訝そうな顔をして倒れているナルトを観察する。
そして、ある事に気付き目を見開く。
「そうか、あの違和感はパワーリストだったのか・・・
というか、アイツ・・・パワーリストだけじゃねぇ・・・
パワーアンクルも着けてやがったのか・・・しかも相当な重さのヤツを・・・
あんなモノを着けたまま戦っているヤツにオレは圧されていたというのか・・・クソッ!」
サスケは後ろを向き、イライラとモヤモヤが入り混じった複雑な表情を浮かべ、この場を去って行った。
一方、シノはというと、ナルトが投げ捨てた小ビンにラベルが貼ってあったことに気付き、それを読むため拾い上げていた。
シノの予想では、当然ラベルに"灯油"と書かれていると思っていた。
しかし、彼はラベルを見て唖然とする。
意外ッ!それは"みりん"であった!
どの家庭にもある、ごく普通の調味料である。
あまりにも拍子抜けな物だったため、普段ポーカーフェイスである彼は珍しく苦笑を浮かべた。
それを見た者は誰もいなかったそうだが・・・。
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