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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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第七十話 暴虎馮河の勇

コペルニクス――――月にある中立都市の一つであり、太陽中心説を唱えたニコラウス・コペルニクスにちなんでつけられたと思われる都市だ。C.E.12年に完成し、歴史的な変換転の一つでもある前大戦の引き金となったコペルニクスの悲劇と呼ばれる爆破テロがおこった場所でもある。余談ではあるがキラやアスランが幼年学校として通っていたのもこの都市だ。
そして今現在、コペルニクスはコロニーレーザーに照準を捉えられていた。それを仕組んだのは連合のファントムペインに所属していた裏切り者のダナであり、そのことを知っているのは現在、直接対峙したネオと裏切りを持ちかけた人物であろうデュランダル議長といったごく限られた人間しかいない。しかし、コロニーレーザーの照準がコペルニクスに向いていることはその場にいた殆どの兵士に伝えられていた。

「なんとしてでも止めろ!絶対に撃たせるんじゃない!!」

ジュール隊やザフトの部隊も行動に移し出すが、時間が足りない。既にエネルギーが補充されているのがあだとなっていた。情報が伝えられた時点で砲撃まで時間的猶予は殆ど残されていないと言っても過言ではない。

イザークのグフだけでなく、多数のザクやゲルググ、艦隊がコロニーレーザーを止めるために攻撃を加えたりするものの、レクイエムの中継ステーションと違い、コロニーレーザーは分厚く堅牢であるため、並の攻撃では歯が立たない。

『各自、絶対にアレを止めさせるな!俺達の最後の意地を見せるんだ!』

コペルニクスを狙っていることなど露知らないダークダガーやスローターダガーに乗る連合のパイロットたちは必死に止めようとしているザフトの部隊に次々と特攻とすら言える攻撃を仕掛ける。数が少ないとはいえ、自らの命を懸けた者達の攻撃は重い。
確固たる目的があるからこそ崩れない。死すら厭わないという思いは物語などでは酷く軽く扱われる。命を粗末にして勝てるのかなどと。だが、実際は違う。命を糧とするゆえにその意思の激流が敵を挫くのだ。

『青き清浄なる世界の為にィィィッ――――!!』

彼らはプラントへと攻撃を仕掛けた連合の本隊が敗北したことは知らない。当然、コロニーレーザーが攻撃を成功させた所で何一つ状況が好転しないことも知らない。ただ、彼らは信じている。この戦いに勝利すれば、連合に今一度チャンスが訪れると。妄執といってもいい覚悟によって動いているのだ。
そして、いかにジュール隊が精鋭の部隊であろうともコロニーレーザーへの攻撃と突撃してくる敵への対応を同時に行えるはずもない。優先順位を考慮すれば当然コロニーレーザーの破壊が優先される。だが、敵の攻撃を無視すれば撃墜されるのは確実だ。

――――断じて行えば鬼神も之を避く――――決意を固めたファントムペインの部隊が断行するその様子は、たとえザフトのエース部隊であっても妨げきる事などできない。数少ないファントムペインの部隊は一機、また一機と撃ち落とされるが、それに怯むことなく決死の覚悟で敵の動きを止めていた。

「クソッ、邪魔をするなァ!」

そして、当然それらの相手に対応するのはジュール隊の隊長であるイザークのグフだ。四連装ビームガンが狙いを定め、敵であるスローターダガーに向けて放つ。スローターダガーはシールドを正面に構え、そのままビームカービンで反撃するが、イザークはこれをすり抜けるように躱し、通り過ぎる瞬間にビームソードで真っ二つにした。

『死ねよォッ!』

イザークがそのまま別の機体に攻撃を仕掛けようとした瞬間、アウルの動かしているG‐Vのインコムとビームカノンがイザークのグフを狙い撃つ。いきなりの攻撃だが、イザークは咄嗟にそれを回避してお返しとばかりにスレイヤーウィップを放った。

「フン、その程度で!各機、隊列を乱すな!この青いMSの相手は俺に任せろ!砲撃隊、コロニーレーザーへの攻撃は一点に集中させるんだ。周りはその部隊の援護に回れ!間違っても砲の正面に立つな!いつ発射されるかもわからん砲撃に呑まれることになるかもしれんぞ!!」

イザークが指示を手早く繰り出すことで後ろのコロニーレーザーと正面の敵を前にして混乱に陥っていた部隊を立て直させる。

(この様子では少し間に合わんかもしれん……ええい、弱気になるなイザーク・ジュール!己は何のためにザフトの軍服を纏っている!このような事態を解決する為だろうに!)

一瞬コロニーレーザー発射を止めることが出来ないかもしれないと弱気になるが、そうならないようにしてみせると決意を再び固め、今は目の前の敵に対応する。ディアッカの方もエミリオのロッソイージスと相対していることから敵の首級の動きは止めれている。

『お前ら必死すぎなんだよ!そんなんじゃあ格好悪いってねェ!』

「格好で勝敗が決まるわけではない!」

互いの剣がシールドによって防がれ、アウルとイザークは互いの機体をぶつけ合う。推力や運動性を含め、スペック上は近接戦向けのグフよりもG‐Vの方が全体的な性能で上回っている。しかし、イザーク自身のパイロットとしての実力がそれを補っており、若干押されつつも食い込んでいた。

「これでェ!」

『なッ!?』

両者が弾かれ距離をおいた瞬間を狙い、左手からスレイヤーウィップを放つ。一見それは見当違いの方向へと向いているかと思われたが、その攻撃の狙いはインコムのワイヤー部だった。そのままG‐Vを引っ張るようにスレイヤーウィップを回収させ、G‐Vの体勢を崩させながら自機へと引き込む。
無論、綱引き勝負になれば全体的な性能で優っているG‐Vの方が勝つのだが、それを見越してイザークはワイヤー部を狙ったのだ。ワイヤー部分から不意を突く様に引き込まれた時点で、アウルはスラスターを使って体勢を立て直しながら勢いを殺す事しか出来ない。

「貰ったァ!」

体勢は崩れている。ビームサーベルやシールドで迎撃しようにも押し込まれるのは目に見えていた。そして振り抜かれる一閃。機体の首が斬り裂かれる。イザーク自身は胴体を斬り裂くつもりだったのだが、アウルは寸での所でシールドブースターや高い推進力を誇るスラスターによって回避したのだろう。
しかし、この攻撃によってメインカメラが機能を果たさなくなっている。アウルは着々と追い詰められていた。







ジュール隊を含むコロニーレーザー周辺のザフト部隊にコロニーレーザー照射準備が整っていることを知らされる少し前、ネオはライゴウに乗り込み、一刻も早くコロニーレーザーを止めようと移動していた。ダナの怠慢か、それとも侵入口は別だったのか、幸いなことにライゴウは破壊されておらず、すぐにでも出撃が可能だ。

「自分でやったことだ。俺自身が止めなきゃならねえだろ!」

ライゴウのエンジンに火を入れ、出撃させる。手持ちの装備はビームライフルが一丁、摩耗したシールドが一つ、ビームサーベルとアーマーシュナイダーが一本ずつ。スペキュラムに取り付けていたミサイルは既に全弾撃ち尽くしているし、機関砲の残弾も零。

「だからなんだってんだ!」

コペルニクスに住んでいる人に罪があるわけではない。そして、コロニーレーザーを撃ったところでダナやデュランダルの思惑通りにしかならないのだ。ならば止める―――――誰かの為にというわけではない。自分自身の為にこれは止めなくてはならない。

「馬鹿みてえに、俺は何でここまでやってんだろうな……」

既に死んでいるアウルの母を救う為に出ていったステラを止めれなかった。デストロイに乗っていたスティングのすぐそばにいながら助けることが出来なかった。そして今も自分だけがたどり着き、生存が絶望的なこの戦場にアウルを連れてきた。後悔の連続――――どこかで歯車が狂ったのか、或いはこうなる事が必然だったのだろうか。だとしても、

「俺は不可能を可能にする男だ――――そうでなくちゃならねえ」

晒された素顔、その表情は決意を固めている。ライゴウがコロニーレーザーの一角から出撃し、破壊するための方法を模索する。
外壁からの破壊――――火力不足の現状では不可能に近い。
砲撃を指示する機器類への直接攻撃――――そのような場所は知らないし、仮に知っていたとしても破壊できない可能性が高い。
司令部の破壊――――ウイルスによって発射される事から何の意味も持たないと予測される。
そもそもライゴウ一機で出来ること自体限られているのだ。ファントムペインの部隊と通信するのはNジャマーによって不可、かと言ってザフトの部隊と協力などもっと無理な話だ。こちらが手を貸すなどという事に向こうが信用するわけがない。

(となれば、やっぱりこれしか手はないか……?)

コロニーレーザー内部にてエネルギーを発振させる為のミラーの破壊、或いは発射させるために内部でむき出しになっている砲塔の破壊の二択だ。どちらにしてもコロニーレーザー内部へと侵入せねばならず、そしていつ発射されるか分からないコロニーレーザーに侵入するにはリスクが大きすぎる。
さらに言えば破壊に成功しても内部でエネルギーが暴走する可能性は高い。そうなれば、VPS装甲とはいえ一機のMSに過ぎないライゴウに耐えれることなどほぼありえない。

「成功しても、失敗しても俺の死ぬ可能性は高いかね――――まあ、分の悪いかけだからって逃げるわけにはいかねえ」

コロニーレーザー周辺にいたザフトのMS隊がネオのライゴウを発見して攻撃を開始する。コロニーレーザーの外壁の傍を滑る様にライゴウは移動しながら敵の攻撃を躱していく。ほとんど意味がないと理解しつつも少しでもコロニーレーザーを傷つけるために、そして周囲の障害物を利用するために外壁に沿って移動しているのだ。

「見逃す理由が無いっていうのはわかるが、それでも理解してくれって言いたくなるぜ!」

ビームライフルを三発ほど撃ちこんで敵を牽制する。加速を止めないままに移動を続けたライゴウはついにコロニーレーザーの内部に侵入するに至った。

「よし、まだ間に合う!」

内部に侵入したネオはビームライフルの射撃をコロニーレーザーのミラー部分に撃ちこむ。だが、想定外の事態は続いていく。ミラーにビームで攻撃したにもかからわず、破壊されることが無かったのだ。

「PS装甲か!?」

通常ならばPS装甲系統でビームを防ぐことは出来ないが、エネルギー自体が膨大であるためビームですら拡散、無効化される結果となっていた。しかし、この程度で諦めるネオではない。想定外といえば想定外だが、予定がミラーの破壊から砲塔の破壊に切り替わっただけである。流石にザフトの部隊も内部まで追ってくることはなく、ネオはそのまま砲塔部まで突撃していった。







レクイエムが発射した後、その場のザフトの部隊はすぐさま基地の防衛を放棄し、撤退を始めていた。議長は元々レクイエムを使い捨てる気だったのだろう。連続して放つにもインターバルが割と大きく、小回りの利かない中継ステーションを必要とするレクイエムはザフトにとってそれほど価値のある兵器ではない。
確かにどこであろうとも容易く狙えるレクイエムは強力ではあるが、その為に中継ステーションも護衛せねばならず、戦力を分散してしまうのはゴンドワナを失ったザフトにとっては維持が難しいのだ。元々連合がこの兵器を使用するのも大部隊という数を生かしてこその兵器である。従って、プラントも破壊したこの兵器に対して執着する理由など何一つなく、ザフトの部隊は一撃を成功させた時点で放棄が決定していた。

「結局、僕たちのやったことは無意味だったってことなの?また憎しみが広がっていくのを止められなかった。これじゃあ……」

レクイエムを止めることが出来なかったキラ達アークエンジェルの面々の空気は重い。機体の損傷も大きくはないが、フリーダムやドムといった兵器関連の物資の補給が難しい以上、決して無視できるものではない。

「そう塞ぎ込むな、キラ君。終わってしまったことをなんと言っても今は如何することも出来ないんだ。それよりもこれからの事を考えるべきだ。どうする?少なくともレクイエムは沈黙した。修復されても困るから一応破壊できる所は破壊したが――――」

「それに関して何だけど、さっきクサナギから連絡が入ったわ。ここで待ち惚けているわけにもいかないし、一度合流すべきじゃないかしら?」

バルトフェルドがこれからの方針を尋ね、マリューが数少ない朗報であろうクサナギの件を報告する。

「それはありがたい、今は一隻でも戦力が多い方が良いからな。それで合流地点はどこだ?」

「そこまではまだ――――多分、コペルニクスか中立コロニーになるでしょうね」

「何でだい!ファクトリーに行けば補給や修理も簡単だろうに!ラクス様の情報だってあそこの方が手に入りやすいだろう!」

マリューが提示した合流先の候補にファクトリーが無いことを不満に思ったヒルダが文句を言う。

「ファクトリーという手も無いというわけじゃないけど、発見される危険性やファクトリーの今の状況を考えると避けた方が良いわ」

「チッ、そうかい!」

「あ、おいヒルダ!まだ話し合いの途中だぞ!」

ラクスの生存を信じているヒルダはその情報が少しでも多く集まるだろうファクトリーに向かわないことに怒りが沸き、そのまま艦橋から退席する。マーズも流石にそれは不味いと思い、後を追う許可を得てそのまま追いかけていった。

「……キラ君はどうしたいの?」

マリューは心配そうにキラに対しても尋ねる。ラクスの件で一番気にかけているのは他ならぬキラ・ヤマト自身だ。彼にとって彼女の存在は最も大きく心の内を占めていたはずなのだから。

「……ファクトリーに行く必要はありません。合流場所はマリューさんやバルトフェルドさんが最善だと思った場所にしてください」

「本当に、それでいいの?」

「はい、ラクスならきっと、足踏みして手掛かりもなしに探すよりも、少しでも戦争を終わらせて平和な世界へと導くことを望むと思うんで」

探したい気持ちが無いわけではない。寧ろ、探せないこの辛さは誰よりも大きいという事を自覚しているのだろう。しかし、それでも彼は少しでも早く平和を訪れるようにする為に戦う事を選ぶ。それが信じているからなのか、諦めているからなのか、彼女の死と向き合うのが怖いからなのか――――それとも、愛しているからこそなのか。
それは他ならぬキラ自身にも分からない。胸の内にある大きな感情は未だに渦巻くままだった。
 
 

 
後書き
おかしいな?ネオとアウルは死亡フラグにしか見えない。生き残ってくれると信じてるんだが……何も考えてずに書いてる作者にも全くの未知となってる(;´∀`)

とうとうタグに 主人公空気(笑) 最早群像劇?がつきました。名実ともにこれでクラウは主人公から降板することになるでしょう。彼はシンの代わりに犠牲となったのだ……多分スタッフロールがあったら十番目位に来てると思う(震え声) 
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