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SAO-銀ノ月-

作者:蓮夜
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第十八話

 
前書き
携帯じゃ、まだ本文修正が出来ないんだよな…… 

 
 第五十五層のボス、《ザ・ヘルバーナー》を撃破して二週間後。
トップギルドの一角である《聖竜連合》が、新しく開いた第六十六層の街に本部を引っ越しさせるなどのイベントがあった。
……最強ギルドである《血盟騎士団》の本部が第五十五層にあることとは無関係ではあるまい。
まったく、くだらないところに力を入れてるな……

 まあ、いいか。
俺の方は、《ザ・ヘルバーナー》のラストアタック報酬や討伐報酬を全てエギルの店にぶち込み、大金を得てだいたい貯金……貯金というシステムがあるわけではないが、気分の問題だ……したという、個人的な一大イベントがあったものの、二週間経った今では普段通りの日常に戻っていた。


 いつもならば、依頼によりダンジョンの奥深くか、誰かの護衛でもしているところだろうが……少し事情があり、今日はイマイチ迷宮区に行く気が起きない。
夜に用事もあることだし、今日一日は基本的に寝転んで過ごすことを決意したのだが、俺の下へ届いたある一通のメールが、俺の決意を無駄にした。

 ――つまらない依頼ならば断ろう。
と、気だるげにメールをチェックした俺の目に映ったのは。

「キリト……?」

 
第一層でお世話になった、友人にして恩人であるキリトからのメールだった。
内容は至極単純で、

『今から《アルゲート》のNPCショップに来てほしい』

 まあ、略せばこんな感じの内容だ。
フレンド登録をしているため、居場所の追跡は出来るのでどこのNPCショップに行けばいいのかは分かるが……何の用だろうか?

「まあ、良いか……」

 ここにいてもどうせ寝ているだけだ。
だったら、キリトの用件を聞いてから考えても良いだろう。

 そう脳内で結論づけて、室内着である浴衣から、いつもの和服の上に黒コートを羽織り、日本刀《銀ノ月》を腰に差す格好になる。

「ナイスな展開に……なれば良いがな」

 その言葉とは裏腹に、何となく嫌な予感を覚えつつも、キリトへメールの返信をした後に転移門へと向かった。

 時刻は、ちょうど二時を示していた。


 アルゲートに着いた俺は、キリトがいる場所を見て人知れずため息をついた。
行くのが面倒くさい・来るのが遅い・あまり上手くないという、安さ以外はどこぞの牛丼屋の逆を行く店だ。

 微妙にテンションが下がったが、まあここまで来たのだから、と持ち直して、路地裏をメモ帳片手に歩きだした。
この路地裏で一回迷って、気合いで一日走りつづけて脱出したことは、若干思い出したくないことである。

 さて、五分ほど迷路を歩いて着いた待ち合わせの店――《アルゲートそばや》ののれんを開け、相変わらずの陰鬱とした雰囲気にげんなりとしていると。

「こっちだ、ショウキ」

 と、キリトが椅子に座ってこちらをに呼んでいたため、キリトの座っている席に向かったところ、予想外の人物が俺を出迎えた。

「こんにちは、ショウキさん」

 このアインクラッドで知らない者はいないだろう、血盟騎士団副団長の、《閃光》アスナだった。

 事情は飲み込めないが、キリトとアスナの対面の席に座って自らの飲み物をアイテムストレージから出した。

「……で、キリト。何の用だ?」


 俺の質問に若干答えにくそうにしたものの、口を開いた。

「今、俺とアスナはある事件のことを調べているんだ。で、それにちょっと協力を頼みたい」

 この攻略組の中でもレベルが高い主要メンバーである、キリトとアスナが調べていて、更に俺に協力を頼むことがあるような事件。
それ自体には興味はあるが、それよりちょっと興味が出たものがあった。

「……お前、《閃光》といつの間に仲良くなったんだ?」

 しかも、呼び捨てが出来るぐらい。

「べ、別にそんなんじゃありません。ほらキリトくん、早く説明の続き」

 急に早口になってアスナは先を急かし、キリトも「あ、ああ」と良くわからなさそうな顔をしつつ、こっちに顔を向けなおした。

「口外はしないで欲しい。……簡単に言うが《圏内》でボリュームゾーン少し上のプレイヤー、《カインズ》って奴が……PKされた」

 PK。
プレイヤーキルの略であり、意味はもちろん……殺人だ。
殺人自体は、このアインクラッドでは……認めたくはないが、日常茶飯事だ。
 だが、PKされたのが《圏内》と聞くと話は変わる。

 《圏内》。
正式名称は、アンチ……ごめん忘れた。
とにかく、一切のダメージが通らない、安全地帯だと思ってくれれば良い。

「……それで、俺はどんな協力をすれば良いんだ?」

 ことがことなので、いわゆる『仕事モード』になるが、事実上の依頼人であるキリトは苦い顔をしたままだった。

「お前が来るまでに、知恵を拝借しようとヒースクリフを呼んだんだ」

 キリトの答えは大分質問からズレていたが、前置きだろうと黙って聞く。
だが、キリトは二の句をつがず、黙ってしまった。

「そして、私たちが話して出した結論は、『そんなことは有り得ない。未知のスキルを持っていない限り』でした」

 代わりに口を開いたアスナの答えで、俺は、なぜ俺がここに呼ばれたかを理解した
二人が言う未知のスキルを持つ者とは、つまり。

「俺、か……」

 俺の境遇は、別に隠すことでもないが、話すことでもないのでキリトぐらいしか知らない。
それに、ゲーマー諸君の『人のスキルは詮索するのはマナー違反』という謎の不文律に助けられ、俺は《カタナ》と《体術》の上位スキル持ちとなっている。

 ……まあ、傭兵《銀ノ月》の存在自体が、デマのように扱われている為か、プレイヤー達には技の情報は割れていない。

「俺は、お前だなんて思っちゃいない……!」

 事情を知るキリトが憤りを見せてくれるのは正直嬉しいが、こればっかりは仕方あるまい。
話していない俺が悪いのだ。


「こういう事件がある度に俺が疑われちゃたまらない。……今の俺の状態、話してやるよ」

 キリトはほぼ知っているので、アスナにしか話すことにはならない。
今は、人気が全くないこの《アルゲートそばや》に感謝だ。

「ああ、もちろんだけど新聞屋とかには話さないでくれよ」

 もちろんです、とでも言いたげなアスナの頷きを見て、まずはどこから話すものかを考える。

「そうだな……俺はまず、あっちではソードアート・オンラインどころかVRMMOのジャンルにすら関係がなかった」


 このゲームの参加者は、だいたいがゲームマニアかゲーム会社関係者だったりするので、あまりネットを使わない俺には慣れるのが大変だった。
なにしろ、たまに日本語なのに日本語じゃないのだ。

「それである日。茅場昌彦から《ナーヴギア》が届いた」

「茅場から……?」

 事情を知らないアスナが頭に疑問符を浮かべたので、説明を入れる。

「俺の家は、昔からの剣術道場だった。その剣術を、このソードアート・オンラインでやれるか試して欲しい、っていう茅場からのメールを見てな……挑戦状とか勝手に勘違いして、こっちの世界に始めて来て……まあ、後は知っての通りだ」

 5時30分。
このソードアート・オンラインは、デスゲームと化した。

「それから、偶然会ったキリトに連れられて、次の街《ホルンカ》に向かった。……そして、その時の戦闘で気づいたんだが……俺には、《ソードスキル》が使えない」

「ソードスキルが!?」

 この世界の生命線とも言える《ソードスキル》
それが使えないと知ってだろう、アスナの声が驚愕の色に染まる。

「それに、《索敵》やら《隠蔽》みたいな戦闘用スキルも使えない。代わりに、現実世界の俺の剣術が使えるようになってた。……あの茅場が何を考えているのかは知らないが、今の俺はそういう状態だ」

「酷い……!」

 アスナは怒りを露わにし、キリトはこの話は知っているが、聞かされて気持ちよいものでは無いのだろう、その表情はやるせない表情だった。

「俺のステータス画面、とりあえず見といてくれ」

 通常、ステータス画面は自分以外には見えないものの、可視モードには出来る。
メニューを操作して、ステータスを可視モードにして二人に見せる。
……ここから先は、キリトにも話してなかったか。

「……ッ!?」

「な、何、これ……?」

 俺のステータス画面を見た二人は、両者とも似たような反応を返した。
当然だろう、正常な者にとっては理解できない表示だろうから。

「見ての通り、俺のステータス画面には『HPと名前しか無い』……レベルとかステータスは、俺には無いんだ」

「じゃあ、レベルアップとかはどうして……」

「俺にレベルアップは無い。……推測だが、層のボスモンスターが倒されるとHPが上がるから、その層と同じレベルにくらいは成長してるんじゃないか?」


 故に、その層+10レベルが安全マージンであるソードアート・オンラインにおいて、攻略組の中で単純なステータスでは俺が最弱であろう。

 だが、俺には自らの今までの人生を捧げてきた剣術がある。
現実世界で学んだ俺の剣術は、当然モンスターが知るはずがなく、また、一朝一夕で見極められるほどに安っぽくは無い。
モンスターが戸惑っている間に、弱点を切り裂けば良いのだ。
弱点は、そのモンスターの行動を見ていれば俺の眼でなら何となく分かる。

 プレイヤー相手ならば、話はもっと簡単だ。
相手プレイヤーは、俺が《ソードスキル》を使うと考えている。並みの使い手ならば、その油断の隙をついて、抜刀術《十六夜》で充分。

 まあまあの使い手~かなりの使い手ぐらいならば、苦戦はするかも知れないが、『目の前から消える』《縮地》には対応は出来ない。

 目の前のキリトや、ヒースクリフのおっさんのような、かなりの使い手を超越したような奴らは……どうだろうな。
やってみなきゃわからん。


「まあ、そんなわけだ。俺は確かにシステム外のスキルで戦っちゃいるが、《圏内》で殺人なんて出来やしない……まあ、出来てもやらないが」

 ずいぶん本題から外れた気がしたので、とりあえず話題を戻しておいた。

「なあ、ショウキ。……お前は、何でそんな状況で傭兵やボス攻略が出来るんだ? ……死ぬのが、怖くないのか?」

 キリトの発した馬鹿げた質問に、肩をすくめながら返す。

「死ぬのが怖くない人間がどこにいんだよ。……傭兵も、攻略組に参加してるのも、約束を護るためだ。約束は、護るモノだからな」

 二つとも、別々の約束だ。
……言うのはなんだか恥ずかしいから、言わないが。
それに、人間いつかは死ぬし、まあ何とかなるさ。

「すいませんでした、ショウキさん……そんな事情があるとは知らず……」

「さんは止めてくれよ……同い年ぐらいだろ、多分」

 今度はアスナが謝ってきて、このアルゲートそばやの雰囲気もあいまって、陰鬱とした空気が流れていた。

「……それに、謝罪もいらない。悪いのは、俺か茅場だから、謝る必要性がどこにもない……ま、少しでも悪いと思うならフレンド登録してくれ。血盟騎士団から依頼受けるとき、ゴトフリーからじゃわかりにくいんだよ……」

 なんだかイマイチ内容が分からないメールを送って来るのだ、あいつは。
ゴトフリーのメールの被害にあったことがあるのか、アスナも小さく笑ってメニューを操作し、俺にフレンド登録申請が届いた。

 もちろんOKを押し、日本茶を飲みきった後、アイテムストレージに入れて立ち上がった。

「手伝いたいところだけど、悪いけど夜に用事があるんだ。また、何かあったら呼んでくれ」

「ああ、わざわざすまなかった」

「ご協力、ありがとうございました」

 キリトとアスナの声を背中で聞きつつ、俺は《アルゲートそばや》を出て行った。

 
 

 
後書き
ぶっちゃけただの説明回。
わかりにくい点・おかしい点があったら、感想・アドバイスで指摘してくれると嬉しいです。 
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